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第五話 闇取引

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 やばい人と出会ってしまった。

 その男は人がいないのを確認すると、そっと私に近付き、
「この路地の突き当たりに『ダークネス』という喫茶店がある。そこのマスターにこの合言葉を言うんだ」
と言い、一枚の紙切れを渡して去って行った。

「何なのよ、いきなり」
「きっと闇取引だよ」
「闇取引?」
「この合言葉を言ったら白い粉が出てくるんだよ」
「白い粉? 芽依、何言ってるの?」
「芽依ちゃんダメよ。純粋な異世界人に変なこと教えちゃ」

「何なの? はっきり言いなさいよ!」
訳がわからないわ。何でたかが粉を闇取引しなきゃならないのよ。

「でも、どうして私のところへ言いに来るわけ?」
「裏の人に見えたんじゃない?」
「どうして私が裏の存在なのよ!」
「きっと腹黒いのが滲み出てたのね」
この旅が終わったら小百合は死刑決定ね。誰に止められても絶対に執行してやるんだから。

「まあ、闇取引は社会を汚す存在には違いなさそうね」
「そ、そうよね!! 早速乗り込むわよ」
私は颯爽と歩き始めたが、後ろを見ると誰も付いてこない。

「何で付いてこないのよ!」
「どう考えても危険じゃない」
小百合はあっさりと答えた。
「危険と分かっていてお姫様一人で行かせるわけ!?」
「あなたなら大丈夫よ」
「え?」
小百合にしては珍しいわね。私の強さを認めるなんて。
「もしものことがあったら、お姉さんが王位を継承すればいいだけなんだから」
「そういう意味かーい!」

私は小百合の腕を掴むと、
「死なば諸共よ」
と言って、喫茶店へと引きずっていった。

「いらっしゃい」
マスターらしき人がこちらを見て笑顔で挨拶する。とても爽やかな人だ。
「あなたがマスター?」
「そうですが。何になさいますか?」
私はメモを見て、そこに書かれている文字を読む。
「『私の肌はサメより硬い』って何なのよこれ!」
私は思わずメモを叩きつけた。

「こちらへ」
表情が一変したマスターは私たちを奥の部屋へと案内した。
「どれがいいんだ?」
マスターは箱を私の前に置いて言った。箱には生写真がびっしりと詰まっている。
「何よこれ?」
「城の人々の生写真だ。裏に値段が書いてある。好きなのを選びな」

 女王様750000、ベチャシッコ様598000、ホワイティー98000、ソフィーナ85000、アンジェリカ56800、ベチャ〇ンチ172。
「何で私だけ桁が違うのよ! あなた達、こんな写真売ってただですむと思ってるの!?」
「しまった! 罠か!」
マスターが合図するとマッチョな男達が数名出てきた。

「私を誰だと思ってるの?」
私が身分を明かそうとすると四郎がそれを止める。
「政治に全く関係ないならず者に身分を明かしても効果ないんじゃないか?」
「どうしてよ?」
「それに次期国王が無防備な状態でいるのよ。かえって危なくない?」
小百合まで何言ってるの? 私の権力は絶対なんだから。

「無礼者。私を誰だと思っているの? 次期国王ピピプル・クレタ・ビチャ・ウン○よ。頭が高い! 控えおろう」
「ははー。ご無礼をお許しください」
「効果あるんかい!」

 悪の巣窟を絶滅させた私は世の中の常識を改善すべく新たな世直しの旅へと出かけるのであった。

 何で私が一番安いのよ・・・・
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