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第四話 闇の魔王
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とても活気あふれた町にやってきた。人々は笑顔に溢れ、町のあちらこちらで笑い声が聞こえる。
「この町は世直しの必要はなさそうね」
小百合が伸びをしながら言う。
「こういう町ほど裏で何かあるものよ」
「とてもそうには見えないけどな」
「四郎、甘いわ。本音を見せることすら許されない状況に晒されてるのがわからないの? この町はとてつもない強い力によって支配されているのよ。さあ、聞き込みを開始するわよ」
とにかく人の集まるところに行くのがいいわね。多くの人が集まると本音を漏らす者も出てくるはずよ。
私たちは町の中心にある広場に来てみた。通りには露店が並び威勢のいい声が飛び交っている。
「この状況のどこに闇があるのかしら?」
「うるさいわね。本音を隠してるのよ。それを見つけるのが私たちの役目じゃない」
とりあえず誰かに話しかけなきゃ始まらないわね。私は丁度目の前にいた若い女性に目をつけた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「何か悩んでることはない?」
「何もありませんけど」
「隠さなくてもいいのよ。本当のことを言いなさい」
「いえ、本当に何もありません」
「この私が悩みを聞いてあげると言ってるのよ。いつまでしらを切るつもり!」
小百合と芽依が慌ててマリーを女性から遠ざける。
「何よいきなり」
「あの人完全に怯えてるから」
小百合が私の肩をポンポンと叩く。
ちょっと大きな声で話しただけで怯えることないでしょう。完全にぶりっこだわ。そうだ。男に聞けばいいのよ。私は果物を売っている筋肉マッチョな男のところに向かった。
「何か悩みはない? 何でも聞いてあげるわ」
「何だい? お嬢さん急に」
「私達は悪政に苦しむ庶民を救うために旅をしてるの。どんな悩みでもいいから話しなさい」
「そうさなあ? 悩みは俺の売っている果物が美味しすぎるくらいかな? どうだい一つ買わねえか?」
「聞き方が悪かったようね。この地を支配する領主は誰?」
「ここは自治都市だ。領主なんていないぜ」
「だったら闇の魔王に支配されているのね。あなたの身は私が守るわ。本当のことを言いなさい」
「闇の魔王とかいねえんだけどなぁ」
「私を信じなさい。今は身分を明かせないけど聞いたらきっと驚く存在よ。安心して」
「うーむ、そうさなあ。強いて挙げれば」
「強いて挙げれば?」
「ピピプル様に持ってかれる税金が高すぎることかな? 俺が頑張って稼いだ利益の九十パーセントを持ってれるんだぜ。酷いと思わないか?」
「・・・・」
「身分を明かしたら別の意味で驚かれそうね」
「こ、この町は、と、特に問題はなさそうね。芽依、日誌に『特に問題なし』と書いといて」
『町は平和そのものだった。人々は笑顔に満ち溢れ、誰一人として暗い者はいない。しかし、それは表の姿。一歩路地裏へ入れば状況は一変する。この町は闇の魔王により支配されていたのだ。逆らえばその場で即刻首を切り落とされる。もちろんその者の家族も全員だ。人々は過酷な重労働を課せられるだけでなく、毎日の食事も貧素なものしか与えられなかった。贅沢は決して許されないのだ。もし助けを求めようものなら闇に魔王によって町の衆は皆殺しにされてしまう。この町の人々は無理やり笑顔を作り魔王の存在を隠し続けなければならないのであった』
「何なのよ! これ?」
「これくらい書かないと発行部数が伸びないよ」
「これは公文書なの。公的な記録なの! フィクションを書いてどうするのよ!」
こうして私達の平和に満ちた旅は続くのであった。
「この町は世直しの必要はなさそうね」
小百合が伸びをしながら言う。
「こういう町ほど裏で何かあるものよ」
「とてもそうには見えないけどな」
「四郎、甘いわ。本音を見せることすら許されない状況に晒されてるのがわからないの? この町はとてつもない強い力によって支配されているのよ。さあ、聞き込みを開始するわよ」
とにかく人の集まるところに行くのがいいわね。多くの人が集まると本音を漏らす者も出てくるはずよ。
私たちは町の中心にある広場に来てみた。通りには露店が並び威勢のいい声が飛び交っている。
「この状況のどこに闇があるのかしら?」
「うるさいわね。本音を隠してるのよ。それを見つけるのが私たちの役目じゃない」
とりあえず誰かに話しかけなきゃ始まらないわね。私は丁度目の前にいた若い女性に目をつけた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかしら?」
「はい、何でしょう?」
「何か悩んでることはない?」
「何もありませんけど」
「隠さなくてもいいのよ。本当のことを言いなさい」
「いえ、本当に何もありません」
「この私が悩みを聞いてあげると言ってるのよ。いつまでしらを切るつもり!」
小百合と芽依が慌ててマリーを女性から遠ざける。
「何よいきなり」
「あの人完全に怯えてるから」
小百合が私の肩をポンポンと叩く。
ちょっと大きな声で話しただけで怯えることないでしょう。完全にぶりっこだわ。そうだ。男に聞けばいいのよ。私は果物を売っている筋肉マッチョな男のところに向かった。
「何か悩みはない? 何でも聞いてあげるわ」
「何だい? お嬢さん急に」
「私達は悪政に苦しむ庶民を救うために旅をしてるの。どんな悩みでもいいから話しなさい」
「そうさなあ? 悩みは俺の売っている果物が美味しすぎるくらいかな? どうだい一つ買わねえか?」
「聞き方が悪かったようね。この地を支配する領主は誰?」
「ここは自治都市だ。領主なんていないぜ」
「だったら闇の魔王に支配されているのね。あなたの身は私が守るわ。本当のことを言いなさい」
「闇の魔王とかいねえんだけどなぁ」
「私を信じなさい。今は身分を明かせないけど聞いたらきっと驚く存在よ。安心して」
「うーむ、そうさなあ。強いて挙げれば」
「強いて挙げれば?」
「ピピプル様に持ってかれる税金が高すぎることかな? 俺が頑張って稼いだ利益の九十パーセントを持ってれるんだぜ。酷いと思わないか?」
「・・・・」
「身分を明かしたら別の意味で驚かれそうね」
「こ、この町は、と、特に問題はなさそうね。芽依、日誌に『特に問題なし』と書いといて」
『町は平和そのものだった。人々は笑顔に満ち溢れ、誰一人として暗い者はいない。しかし、それは表の姿。一歩路地裏へ入れば状況は一変する。この町は闇の魔王により支配されていたのだ。逆らえばその場で即刻首を切り落とされる。もちろんその者の家族も全員だ。人々は過酷な重労働を課せられるだけでなく、毎日の食事も貧素なものしか与えられなかった。贅沢は決して許されないのだ。もし助けを求めようものなら闇に魔王によって町の衆は皆殺しにされてしまう。この町の人々は無理やり笑顔を作り魔王の存在を隠し続けなければならないのであった』
「何なのよ! これ?」
「これくらい書かないと発行部数が伸びないよ」
「これは公文書なの。公的な記録なの! フィクションを書いてどうするのよ!」
こうして私達の平和に満ちた旅は続くのであった。
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