控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

文字の大きさ
上 下
3 / 109

第三話 ドラゴンから逃げ切る方法

しおりを挟む
 私たち一行は村外れまで来ていた。
「こんな人気のないところに来ても世直しなんかできないじゃない」
「マリーが何も考えずスタスタ歩くからこうなるのよ」
本当に小百合って口が減らないわね。

「おい、この森ってドラゴンの森じゃないのか?」
ドラゴンの森とはドラゴンが住むという森で人は滅多に立ち寄らない場所よ。もちろん危険だわ。

「村に戻った方がいいよ」
「芽依の言う通りね。人がいなけりゃ商売上がったりだし」
「いつから商人になったんだ?」
四郎の緩いツッコミにすかさず小百合が反応する。
「マリーにしては精一杯のボケなんだから大目に見てあげなきゃダメよ四郎君」
小百合いつか殺す!

 私たちが村に引き返そうとした時、森の中から男の悲鳴が聞こえてきた。
「これは事件ね。向かうわよ!」

 森の中へ入った私たちは悲鳴を上げた男を発見するや否や回れ右をして全速力で駆け出した。冗談じゃないわよ。どうしてファイアードラゴンに追いかけられてるのよ!

「助けてくださいよー」
「どうしろって言うのよ! このドラゴン優にニ十メートルはあるじゃない!」
「そもそもなんで追いかけられてるの?」
小百合が聞く。
「ドラゴンの卵を盗もうとして失敗しました」
「バカね。どうしてそんな無茶するわけ?」
マリーが思いっきりけなす。
「はい、お城からドラゴンの卵を持って参れとのご命令がありまして」
「・・・・・・・・」
お供の三人が絶句する中、私は何も考えずこの男に尋ねた。
「だ、誰がそんなわがままな命令をしたのよ。私が文句を言ってあげるわ。名前を言いなさい」
「ピピプル・クレタ・ビチャ・ウ○チ様です」
「マリー!」
お供の三人が思いっきりツッコむ。

 それにしてもこのドラゴン足が速いわね。このままでは追いつかれてしまうわ。
「そうだ! 小百合、あんたが犠牲になってドラゴンに襲われなさいよ。その隙に私たちが逃げるから」
「何でそうなるのよ!?」
「この小説で一番どうでもいいキャラだからに決まってるでしょう」
「看板キャラの私がいなくなってもいいの? あなたに私の美貌がカバーできて?」
「できるに決まってるじゃない! ねえ四郎」
「はあ、はあ、今それどころじゃない」
誤魔化したわね。

「芽依でもいいわ。みんなのために犠牲になりなさい」
「この手の小説にはロリキャラは必須事項だよ。この小説の根強いファンが消えちゃってもいいの?」
「この小説ってまだ始まったばかりでしょ!」

 そしてついに私たちはドラゴンに追いつかれてしまった。もうダメだわ。ドラゴンは大きく反り返ると大きな雄叫びを上げ・・・・ようとして木に頭を思いっきりぶつけて倒れた。
「え? 嘘? 死んだのこれ?」
「よほど打ち所が悪かったようね」
ピロロローン。何? この音。
「経験値が二十三上がったようね」
「経験値って何よそれ? ゲームじゃあるまいし! それにこんな大物倒して二十三だけってどういうこと?」

「経験値が上がるとどうなるんだ?」
「レベルの高い武器が使えるようになるのよ。例えば檜の棒しか使えなかったのが斧も使えるようになるとか」
「それって戦っている内に腕力がついたってことじゃない!」

こうして私たち一行は今日も大した世直しをすることなく旅を続けるのであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

白い結婚をめぐる二年の攻防

藍田ひびき
恋愛
「白い結婚で離縁されたなど、貴族夫人にとってはこの上ない恥だろう。だから俺のいう事を聞け」 「分かりました。二年間閨事がなければ離縁ということですね」 「え、いやその」  父が遺した伯爵位を継いだシルヴィア。叔父の勧めで結婚した夫エグモントは彼女を貶めるばかりか、爵位を寄越さなければ閨事を拒否すると言う。  だがそれはシルヴィアにとってむしろ願っても無いことだった。    妻を思い通りにしようとする夫と、それを拒否する妻の攻防戦が幕を開ける。 ※ なろうにも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...