落ちこぼれ魔女のリーサとラスボスのミーニャ

小松広和

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第2章 新たな敵を倒せ

第35話 突撃準備

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 とんでもない進展というものは突然に起こるものである。
「ラスボス様。敵の正確な位置がわかりました」
「何だと! でかした。これで乗り込むことができるのだな」
よし、私自ら乗り込んでリーサを驚かせることにしよう。

 喜んだ私はふと我に返る。
「ところで正確とはどの程度正確なんだ?」
「かなり正確ですぞ」
爺が自慢げに言う。
「本当か! 爺が言うのなら大丈夫だ!」

 私は敵陣に乗り込む心の準備をして、もう一度我に返る。
「今『かなり』と言ったか?」
「はい、世の中100%というのはなかなかないものですからな」
まあ、それはそうだが。

「因みにどれくらい正確なんだ?」
「83%ですぞ」
83%? 数字的には高い気もするが。そうでない気もする。
「おい、ジーニアスドラゴン。83%って具体的にはどんな感じだ? わかりやすく言って見ろ」
「はい、サイコロで1以外が出る確率とほぼ一緒ですね」

 そうか・・・・。わかるようなわからないような。
「誰かサイコロを持ってこい」
「はっ」

 コロコロ。
「・・・・」
「1が出ましたね」
「もう一度だ」
コロコロ。
「・・・・・・・・・・」
「また1ですね」
「おいジーニアスドラゴン。心なしか喜んでないか?」
「滅相もない」
本当に陰で何を考えているかわからぬ奴だ。これだから頭のいい奴は嫌いだ。

「よし、敵陣に乗り込むぞ。最初にジーニアスドラゴン行け!」
「どうしていつも私を選ぶんですか!」
「嫌いだからだ」
「そんなはっきりと・・・・。私のようなブレーンがいなくなってもいいのですか?」
「最近のことだが野生のモンスターにグレートジーニアスドラゴンと言うのがいることがわかった。交渉したところ幹部に加わってくれるそうだ。名前的にもお前より頭が良さそうだ」
「・・・・・・」
詰んだなジーニアスドラゴン。

「よし! 敵陣に乗り込む。ジーニアスドラゴンに続け!」
「オー!」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「嫌なのか?」
「嫌に決まってるじゃないですか!」
ふふふ、焦っているな。いい気味だ。

「皆の者。ジーニアスドラゴンが安全を確認してくれる。ジーニアスドラゴンの様子を見て突撃だ!」
「オー!」
「だが、万が一と言うこともある。ジーニアスドラゴンにお別れの言葉を告げるが良い」
「なっ何てことを言い出すのですか!?」
この言葉に私の周りにいたモンスターがジーニアスドラゴンに声を掛けた。
「ジーニアスドラゴン。今までありがとう」
「君との思い出はいつまでも忘れないよ」
「私が死ぬことに決まってません?」
「17%の確率で死ぬからな」

「絶対に嫌ですからね!」
「我が儘を言うな」
「これは我が儘という問題では・・・・ん?」
「さあ行け! ジーニアスドラゴン」
「わかりました。行きましょう。私が無事に着いたらテレパシーでご報告しますので、ラスボス様が続いてください」
どうしたのだ? 急に素直になったではないか。まあいいだろう。

「では行きます」
パチンというはじける小さな音を残してジーニアスドラゴンが消えた。そして1分後。
『ラスボス様。無事に到着です。どうぞお越しください』
『おお! そうか。わかったすぐ行く』

「よし! 私が行ったらお前たちも続け! いいな」
シーン。
「ん? どうした? いつもの『オー!』はないのか?」
ヒソヒソヒソ。何なんだこいつら。急にひそひそ話を始めよって。

「お前たちなんかおかしいぞ?」
私の言葉にレッドキングが近付いてきてそっと耳打ちをした。
「怪しくないですか?」
「何がだ?」
「ジーニアスドラゴンはあれだけ嫌がっていたのに、急に行くと言ったのですよ」
「なるほど。そう言われてみるとおかしいような・・・・」

 その時、リーサの声が聞こえてきた。
『キャー!』
『リーサどうした!?』
『あ? 何でもありません』
あんな悲鳴を上げているのに何でもないわけがなかろう。
『何かに攻撃されているのか? 今助けに行くから安心しろ』
『ダメです! 来ないでください』
何故だ? そうか。私を危険な目に遭わせまいとしているのだな? リーサ、何ていい娘なんだ。これは何としても助けなくては。

「私は行くことにした。爺や、この231.568.352.266と言うのが正確な位置だな?」
「はい、左様でございます」
「ラスボス様、危険です」
「リーサを見殺しにするわけには行かぬ。止めてくれるなレッドキング」
「しかし」
私はみんなの言葉を無視して瞬間移動を強行した。

 気がつくと見慣れぬ光景が目に飛び込んできた。ん? ここは少しくらいが廊下か? だとしたら瞬間移動成功ということになるな。少なくとも宇宙空間ではないだろう。お花畑もないから天国でもないはずだ。
「おい、ジーニアスドラゴン。どこにいる?」
シーン。

 いないのか? 同じ位置に瞬間移動したはずなのだが? あれ? そう言えばジーニアスドラゴンはあの長い数字を知らずに移動していたな。これはどういうことだ?
『おい、無事に着いたぞ。お前たちも来るがいい』
シーン。何なんだこいつら。さっぱり意味がわからん。
『誰か返事をしろ』
シーン。何故誰も来ないのだ? ジーニアスドラゴンもどこに行ったかわからぬし。取り敢えずこの廊下を歩いて行ったらリーサに会えるかもしれんな。奴らに合流するのはそれからでも良かろう。

 こうして部下たちに裏切られたことも知らずミーニャは1人廊下を歩いて行くのであった。
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