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第2章 新たな敵を倒せ

第25話 作戦始動開始

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 かれこれ10時間は会議をしているように思う。さすがに疲れてきたな。
「悪い芽は一刻も早く摘んでおくべきではないか?」
「いや、相手の戦力も知らずに行動を起こして失敗したらどうするんだ? もしかして想像以上の戦力を集めていたらどうするんだ」
こいつらまだやってるぞ。さすがに10時間も会議をやっていると口調まで変わってくるみたいだ。いつの間にか敬語で話さなくなった。ここらで結論を出してあげたいのだが、聞けば聞くほどどちらも正しく思えてくるから不思議だ。

 うつらうつら。
 緊張で固まっていたリーサも遂に居眠りを始めたか。何の意見も言えずちんぷんかんぷんな状態で行儀良く座っていたんだ当然の結果かも知れんな。可愛そうに。

「ラスボス様。一つお伺いしますが、なぜ戦いのたの字も知らぬレベル10の魔法使いをこの会議に参加させているのですか?」
レッドキングが小さな声で聞いてきた。
「この前1人にして置いたらモンスターに食われそうになっていたからな。保護のためだ」
「それなら部屋の隅に座らせて置いてもよろしいかと」
「参加意識を持たせないと会議の内容を漏らす可能性があるだろう?」
「なるほど」

「キャー! 助けてください。私は美味しくないです」
モンスターに襲われている悪夢を見ているのか? 可哀想だから起こしてやろう。
「え? 私、今何か言いましたか?」
「悪夢を見たようだな?」
「あれは悪夢というのでしょうか?」
「明らかに悪夢だと思うが、どんな夢を見ていたのだ?」
「はい、この部屋にギリ入るくらいの物凄く大きなプリンを食べる夢です」
「それがどうして『キャー! 助けてください』になるのだ?」
「とても美味しく食べていたら、途中でプリンがブチ切れまして逆に食べられそうになったのです」
「何と複雑な夢だ。幸せの絶頂から急降下したではないか」
「幸せって長くは続かないものなのですね」
この究極な状況は人を哲学者にするようだ。

「ラスボス様! 御結論をお願いします!」
争っていた2人が同時に言ってきた。これは困ったぞ。
「ふむ。そうだな」
「どうなさいますか?」
「ここは多数決をとってだな」
私の言葉を聞くとジーニアスドラゴンがそっと話しかけてきた。
「それでは先ほどと同じ結果になるのでは?」
「それもそうだ。またリーサが固まるだけだな。ではじゃんけんで決めろ」
「は?」
「不服でもあるのか?」
「それはかなり・・・・」
「ラスボス様、じゃんけんは無理です」
「なぜだ?」
「私の手の形ではグーは出せません」
反対理由はそっちかい! まあドラゴンだから仕方ないか。

「おいジーニアスドラゴン。何か名案はないか?」
「はい、誰か偵察を送ってはどうでしょうか?」
「なるほど、それは名案だ。敵の内情を知れば確実に勝てるだろう」
「問題は誰を送るかですね」
「そうだな。目立ってはダメだし、面が割れているのもダメだ。となると派遣できる者は限られてくるな。少なくともここにいるメンバーは無理だろう」

 ジーニアスドラゴンが部屋を見渡して言った。
「該当者が1人います」
「誰だ?」
ジーニアスドラゴンがリーサを見ると他のドラゴンも同じようにリーサを見た。
「え? 何でしょうか?」
「なるほど、リーサなら敵は誰も知らないだろう」
「え? え? え?」
「行ってくれるなリーサ」
「ええー! 嘘ですよね?」

 部屋中のみんながリーサに注目している。
「お前しかおらぬ」
「む、む、無理ですよ」
「リーサなら大丈夫だ」
「何を根拠に言っているのですか!?」

「敵のアジトに潜入しできるだけ詳しいデータを取ってきてくれ」
「敵の人数や戦力を探ってくれ」
「革命軍のボスも知りたいところだ。ボスが誰かを知れば対策も練りやすいからな」
「勝手に話を進めないでください!」

「これで一安心だ。敵を知れば勝ったも同然」
「だが安心ばかりもしておられんぞ。敵のアジトに潜入してすぐ食べられるかもしれん」
「ええーーー!!!」
「それもそうだな。気を付けていくのだぞ」
「私は絶対に生きませんから! ああ! 間違えました! 私絶対に行きませんから!!」
「痛恨の変換ミスだな。何て不吉な。リーサ大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょう!!」

 物凄く殺風景な場所に敵のアジトというのはありました。
「ここからはリーサ一人で行くことになる。生きて帰ってくれ。親友を失うのは心苦しいからな」
「だったら他の人を侵入させてください!」
「作戦通りに行動するのだぞ。革命軍に入りたいと願い出るのだ。あいつらは1人でも仲間が欲しいはずだ。うまく潜入できたらテレパシーで状況を私に伝えるんだ。強く念じるだけでいい」
「作戦を無理矢理決行しようという強い意志はわかりましたが、どうして私の服装が桃太郎なんですか?」
「鬼退治みたいなものだからな。ちゃんとお供も用意したぞ。チワワに文鳥にリスザルだ。可愛いだろう?」
「この状況で可愛さを求めないでください!」

「ピンチになったらこのボタンを押すのだ。一度だけなら魔王城にワープできるようになっている。貴重なアイテムだ。無駄に使うなよ」
「わかりました」
プチ!
「こら! いきなり使う奴があるか! 皆の者、魔王城でリーサを捕獲するのだ!」
こうしてほんの少しだけピンチを逃れたリーサなのであった。
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