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第2章 新たな敵を倒せ

第22話 新たな生活

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 とても広い部屋です。この部屋だけで私が住んでいた家がすっぽり入ると思います。
「どうだ気に入ったか?」
「はい、とても」
「ここはお前の部屋だ。好きに使っていいぞ」
私はこの部屋で生活することになるようです。こんな贅沢をしてもいいのでしょうか?
「ありがとうございます」

「おい」
「はいラスボス様」
ミーニャさんの一声で例の筋肉マッチョメイドが走ってきました。
「今日からこいつがリーサの専属メイドになる。何でも聞いてくれるぞ」
「専属メイドだなんて! そんな・・・・」
貧乏人の私には不似合いですし、それ以前にこんな怖そうなメイドに頼み事なんてできません。

「私はメリーと言います。何でも言ってくださいね」
とても優しい声で言われました。もしかすると女性なのでしょうか? とても高くて綺麗な声でした。ただこの声を聞いても男性にしか見えないというのは失礼ですよね? 人間社会だったら絶対にボディビルコンテストに出ていると思います。

 とても豪勢な部屋なのですが不満もあります。まず第一に部屋全体が暗いです。蛍光灯がないのですから当然かも知れませんがとにかく薄暗いです。そして壁には松明の炎。なぜかこの炎って青いんです。夜中にこれを見たらきっと人魂に見えると思います。そして家具類にはあちらこちらにトゲが装飾されています。究極に怖さを煽るのは髑髏です。この部屋にある髑髏は人間の物だと思われます。果たしてこんな部屋で寝られるのでしょうか?

「いい部屋だろう。私がアレンジしたんだ。気に入ったか?」
「はい、少し怖いですが」
「そうかそうか気に入ったか。はははは」
怖いという表現はここでは褒め言葉のようです。

「少し質問してもよろしいでしょうか?」
「ああ、何でも聞いてくれ」
「先ほどから壁の髑髏が動いているように思うのですが気のせいですよね?」
「動いてるぞ」
「ええー!」
「ここにある髑髏は怨念を持った人間のものを集めたからな。きっと成仏していないんだろう」
これって絶対眠れないパターンじゃないですか!

「やはり髑髏は成仏していないのが一番! そう思わぬか?」
「思いません!」
これではリアルお化け屋敷じゃないですか? 絶対に呪われます。

「ラスボス様。お食事の用意ができました。こちらにお持ちしますか?」
「いや、食堂に行こう」
「は、かしこまりました」
もしかしてこの老モンスターは執事でしょうか? はち切れそうな執事の服を着ています。どうしてここに務める従事者はみんな筋肉マッチョなのでしょう。ミーニャさんの趣味なのかも知れません。

「この部屋だ」
「こ、これは・・・・」
この無意味に長い机は映画で見たことがあります。実在していたんですね。
「今日のメニューは何だ」
「はい、トリカブトのソテーにトラフグの胆揚げ、メインディッショはゾンビの生肉ジャガイモの芽添えにございます」
ガタン!
「私、帰らせていただきます」
「どこへ帰るのだ?」
コト。私は再び椅子に座りました。

 これはあれですね。死なないといけないパターンですね。もう一度転生できるのでしょうか?
「遠慮するな。たくさん食べるといい」
「死んでしまいそうですけど・・・・」
「大丈夫だ。死なないように作ってある」
「本当・・・・ですか・・・・?」
「魔王城の料理人を信じろ」
「そう・・・・ですよね」
「3回に1回は失敗して誰かは死んでいるが確率としては死なない方が2倍も多い」
「死ぬ確率高すぎです!」

「はははは、冗談だ」
「もう、その手の冗談は止めてください!」
スタスタスタスタ。
「ラスボス様に何て口を利くのだ?」
魔王城内では『ドドドドド』ではなく『スタスタスタスタ』なのですね。怖いモンスターが勢いよくやってくるのも怖いですが、大鎌を持ったモンスターがゆっくり近付いてくるのもかなり怖いです。

 今、私の喉元にどんな物でも切れそうな大鎌の刃が突きつけられています。
「本当にごめんなさい」
こんな真剣に誤る機会はそうはないですね。
「今度このような無礼を働いたらわかっておるな」
「はい、以後気を付けます」
これはダメです。今殺されなくてもすぐにその日が来そうな気がします。もし運良く殺されなかったとしても、ここ数日で寿命が極端に縮んだのは間違いありません。

「美味しいぞ。早く食べろ」
私はじーっとミーニャさんを観察します。あれだけ毒っぽい料理を食べても平気そうですね。
「では、いただきます」
パク。あまり美味しくありません。

「どうぞ」
飲み物が出てきました。例の紫の煙が出る物です。私は指で小さく×を作りました。
「失礼しました」
代わりに出てきたのは緑の煙が立ち上る飲み物です。これも絶対に飲んではいけない物であることだけはわかります。

 やっとの事で夕食の時間が終わりました。何とか生きて部屋に戻ることができたのは殆ど奇跡です。そう言えば先ほどからミーニャさんが私の方をじっと見ています。
「どうかしましたか?」
「体に異変は起こらぬか?」
「ええーーーー!!!! ど、どういう意味ですか!?」
「リーサの魔力が上がるよう、今日の料理は薬膳料理にしてみたのだ」
道理で不味いわけです。
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