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第1章 運命の出会い

第16話 日記を見せろ!

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 うむ。この本にも書かれてないか。『友達と仲良くなる方法』『親友の作り方』『言うことを聞かない子どものしつけ方』いろいろな本を読んでみたが、どれも参考になるようなことは書いてないな。どうしたものか?

「ん? 何をしておるのだ?」
「え? ごめんなさい。日記を書いていました」
「日記?」
なるほど。これを読めばリーサの気持ちがわかるかも知れないな。

「見せてくれ」
「何を・・・・ですか?」
「お前の日記に決まっているだろう」
「ええー! ダメです!」
「なぜだ?」
「恥ずかしいじゃないですか!?」
「いいではないか?」
「絶対にダメです!」
「ラスボスの私が頼んでもか?」
「究極の脅しをしないでください!」

 なかなか手強いな。よし、それなら。
「クレイジードラゴン。今すぐ私の元に来い!」
「はい、わかりました!」

 暫くすると巨大なドラゴンが宿を壊しかねない勢いですっ飛んできた。
「キャー!」
「こいつはモンスターの中で最も知能が低いと言われているドラゴンだ」
「お褒めいただいて光栄に存じます」
「褒めてない!」
「このドラゴンがお前の日記を見たいそうだ。見せてやってくれ」
「ダ、ダメです」

「知能が低いからな。見せないとお前に何をするかわからんぞ」
「ひぇー!」
「見せてやるか?」
「これだけはダメです!」
しぶとい! よほど凄いことが書かれていると言うことか? そうなると益々見てみたいものだ。

 リーサは日記を抱えて震え上がっている。うむ、あまり怖がらせるのもかわいそうだな。まあいい。そのうち読む機会が見つかるだろう。気長に待つとするか?
「クレイジードラゴン。もう帰っていいぞ」
「あのう、私は何のために呼ばれたので?」
「細かいことは気にするな」
「気にするなと言われましても」
「お前の姿を見たかっただけだ」
「本当ですか! 光栄に存じます。それでは失礼いたします」
単純な奴だ。しかし脅しがダメとなるとどうすればいいのだ? ここは一番頭が切れそうな奴を呼ぶか。

「ジーニアスドラゴン、私だ。今すぐ参れ」
「かしこまりました」

「何でございましょう?」
「早いな!」
「はい、そろそろ呼ばれる頃だと思い近くで待機しておりました」
「さすがだな。ジーニアスドラゴン」
「有り難きお言葉痛み入ります」

「実はリーサの日記を見たいのだが絶対に見せてくれぬのだ。いい方法はないものか」
「お風呂に入っている時とか、寝ている時に読むのではいけませんか?」
「おお、そうか。その手があったか」
「それで解決したのですか?」
「ああ。うん? お前今私をバカだと思ったな?」
「とんでもございません!」
「そうか?」
「勿論でございます」
「まあいい。日記が読めるまでお前は私の元にいろ。いちいち呼び出すのは面倒だ」
「は、了解いたしました」

 そして夜。
「リーサ。先にお風呂に入ってもいいぞ」
「ありがとうございます。それではお言葉に甘えて先に入らせていただきます」
これでよしと。

 さて日記はどこになるのだ? ないな。もしや日記を持って風呂に入っているのか?
「予想通りだ。日記を持ったまま風呂に入っている。風船魔法で日記を包んで水に濡れないようにしているのか。こんな魔法を会得しているとはな」
「本当ですね」
「おい! お前は覗くな! 雄だろう」
「失礼しました。人間は男であろうと女であろうと食料にしか見えませんので」

「こうなったらリーサが寝るのを待つしかないか」
「はい、そのようで」
その夜、何か嫌な予感を感じたリーサはなかなか寝ないのであった。

 し、しぶとい!
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