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第1章 運命の出会い

第6話 天才的な方向音痴

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 今日は嵐のように慌ただしい一日でした。あの大きな男の人は無事でしょうか? 『体が燃えるようだ』と言ってましたが、まさか死んでないですよね? もうこの町には戻れないような気がします。少し慣れてきただけに残念ですが仕方ないです。次の町に行くことにしましょう。

 確かこの道をまっすぐに進むと隣町に行けるはずです。一本道なので迷うことはありません。もう午後三時を回った頃だと思います。ここ異世界では腕時計など存在しませんので、こういう時は太陽の傾きで判断します。不便ですね。

 もうそろそそろ着いてもいい頃なのですが一向に町など見えてきません。おかしいです。山道を歩いていたはずなのですが、なぜか波の音が聞こえてきます。そして突然目の前に自殺の名所になりそうな断崖絶壁が見えてきました。どうやら一本道を歩いていただけなのに迷ってしまったようです。そう、私は極度の方向音痴なのです。『よし、こっちだ!』と確信を持てば持つほど逆方向に行ってしまうという貴重な存在なのです。でも一本道で迷うなんてあり得るのでしょうか? 自分の才能には驚きです。

 もう日が暮れ始めてきました。こんな危険な場所で一夜を過ごしたら、私のことですから夜中に寝ぼけて海に落ちてしまうことは必至です。命あっての物種ですから来た道を戻ることにします。

 さっき歩いて来た道を戻っているだけのはずですが、今まで見たこともない景色になってきました。ここまで来ると私の方向音痴は天才の域に達しているかも知れません。完全に日が落ちてしまいました。もう真っ暗です。フクロウの鳴き声が聞こえています。異世界にもフクロウはいるんですね。

 よく見ると私の周りには木がいっぱい。もしかしてここは森の中かも知れません。これはまずいです。森にはモンスターがたくさんいます。更に夜の方が強いモンスターが出るそうです。そう言えば先ほどから『キー』やら『ウオー』やら非常に怖い鳴き声が聞こえています。一刻も早く歩いてきた道に戻ることにしましょう。

 ・・・・・・・・。そうでした。私は方向音痴なのです。道理でさっきの道に辿り着けないはずです。こんな不気味な森で一夜を過ごすのはごめんです。絶対幽霊が出るに決まってます。

 ガサガサ!
「ん?」
バーン!
 突然、ミツメコゾーンが現れました。
「キャー!」
いつもはわざと大きな悲鳴を上げるのですが、今回は自然と大きな悲鳴を上げることができました。私はお化けが大の苦手なのです。でもこの悲鳴のおかげで逃げることができたようです。

 ガサガサ!
「うらめしや~」
今度はヒトダマユーレーンです。
「キャー!」
あれ? 体がしびれて動きません。
「キュピー!」
またしてもクロシッポに助けられました。

 ガサガサ! 次はロクロックビンです。どうして今日は幽霊系のモンスターばかり出てくるのでしょうか? これではまるでお化け屋敷にいるようです。
「キュピー!」
本当にクロシッポ様々です。

 ガサガサ!
「ニャン♡」
今度はニャンコムスメです。もういい加減にしてください。
 シーン。あれ? クロシッポさん? どうしましたか?

 ニャンコムスメはクロシッポをじっと見ています。一方クロシッポは震えながら私の後ろに隠れました。そして突然ニャンコムスメはクロシッポに飛びつきじゃれ始めました。なるほど、しっぽアクセサリー系のモンスターは猫系のモンスターに弱いのですね。

 そんな呑気なことを言っている場合ではありませんでした。こうなったら私が戦うしかないようです。
「ウォーターシャワー」
私が呪文を唱えるとニャンコムスメに雨が降り注ぎました。するとニャンコムスメは大慌てで退散していきます。やはり猫は水が嫌いなのですね。

 ガサガサ! もう次はどんなモンスターですか?
「ガォー!」
え? この大きなモンスターって、もしかして伝説のフォレストドラゴンですか?

 フォレストドラゴンは森の守り神とも言われる強い強い伝説のモンスターです。全身が緑色の鱗に覆われ全長は優に20mを超えています。信じられません。私はまだレベル15の魔法使いですよ。どうしてそんな凄いモンスターが急に現れるのですか?

 では、いつもの作戦で行きます。
「キャー!」
ダメです。怖くて体が動きません。
「キュピー!」
クロシッポありがとう。あれ? ビクともしませんね。全く効果が無いようです。これは真剣にやばい状況です。
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