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第1章 運命の出会い

第3話 クロシッポの実力

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 翌朝目覚めるとすでにお日様が顔を出していました。どうやら無事に夜を過ごせたようです。一応、端っことは言え村の敷地内に寝ておりましたのでモンスターに襲われる可能性は低かったのですが、これほどの美人が無防備な状態で寝ているのに誰一人として声をかけてくる男性がいないというのはどういうことでしょうか?

 あっ! 今『これほどの美人』と言いましたが、これはあくまで私の基準です。もしかして美人の基準が高い方からすると『どこが美人だ?』と評価されるかもしれません。

 私はふと思い出し、慌てて自分の周りをキョロキョロと探します。クロシッポがいました。私が寝ている間に逃げていかなかったようです。懐いてくれたのでしょうか? 私は思わずクロシッポを持ち上げ頬ずりをします。ペチペチペチ。またシッポの先で往復ビンタを食らいました。まだ懐いていないようですね。

 さて、朝食にしましょう。15ブロンズだとパン一切れしか買えません。こうなると私に与えられた選択肢は二つです。まず一つは森に生えている自然いっぱいの植物を採集して食べること、そしてもう一つは適当なモンスターを倒して朝食代を稼ぐことです。当然私は後者を選びます。ここは異世界。何が食べられて何が毒なのかさっぱり見当が付きません。私の知り合いの女性は空腹のあまりそこらに生えている木の実を食べて毛むくじゃらになりました。これはちょっと怖いです。

 森に入って数歩。早速出てきました。ブルースライムにオオモグランにクレイジーバッファローです。ん? クレイジーバッファロー!? これはまずいです。とても私の勝てる相手ではありません。最も私の実力ではオオモグランの時点で怪しいのですが・・・・

 早速大声を出して逃げることにします。
「キャー!」
どうしたことでしょう? モンスター達は全く動じません。こうなったら実力で逃げることにします。

 ・・・・回り込まれてしまいました。クレイジーバッファローが太い腕を大きく振り上げます。私のHPはわずか250です。クレイジーバッファローのパンチ力は300を超えます。もうダメですね。どうすることもできません。私は覚悟を決めてゆっくりと目を閉じました。

「キュピピー!」
突然クロシッポが大きな鳴き声を上げたかと思いましたら、空が真っ黒な雲に覆われ強烈な雷がモンスター目掛けて落ちました。どういうことでしょう。三匹のモンスターが目の前で倒れているではありませんか。

「ええっと-」
「キュピ」
どうやらクロシッポが最弱モンスターという噂は間違っていたようです。腰を抜かして座り込んでいる私にクロシッポが甘えてきました。もう二度とクロシッポを倒して宿代を稼ごうなどとは考えないことにします。本当にごめんなさい。

 今日の朝食は豪華になりそうです。何しろクレイジーバッファローを倒したのですから。ただこの子を連れてお店に入ることはできません。仕方ないので最後の手段に出ることにしました。
「ねえ、クロシッポちゃん。私の首に巻き付いてくれる?」
「キュピ」

「いらっしゃいませ」
私はすました顔で店に入っていきます。
「何になさいますか?」
「モーニングを一つ」
本当はコース料理が食べられるくらいのお金を手に入れたのですが、貧乏生活が身についた私にそのような豪華な料理を頼む勇気はありません。

「ところでその首に巻いている黒い毛の塊は何ですか?」
「勿論マフラーですわ。それがどうかいたしまして?」
「今は夏ですけど」
「私は極度の寒がりなんです」
そう言ったもののとても暑いです。クロシッポも暑いのか首から離れようとしています。マフラーがクロシッポであることがばれたら朝食が食べられなくなります。私は必死で暑さに耐えながら朝食を急いで食べ終えると慌てて店から出ました。何か食い逃げをしている気分です。

 鞄屋さんの前を通り過ぎようとしたとき、クロシッポが激しく鳴き出しました。
 そうか! よく考えたらお店や宿屋に入る時は大きめの鞄にクロシッポを入れておけばいいのですね。どこか抜けている私でした。
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