30 / 45
第3章 未来への旅立ち
第30話 胡桃の真実
しおりを挟む
ユリナと萌が買い物に出かけてしまったので、俺と胡桃が留守番をすることになった。何のことはないいつもの光景だ。
「そんなことより、これからどうするの?」
胡桃が俺を見て言った。いつもながら愛想のない話し方である。
「これからって?」
「いつまでもここにいるわけにもいかないじゃない」
「分かってる」
叱られているわけではないが、俺はなぜか下を向いてしまう。こういう状況下における条件反射かも知れない。
「私も真歴を失うのが怖くて付いてきちゃったけど・・・・」
胡桃は小さな小さな声で言った。
「何か言ったか?」
「何でもないわよ」
「確かに帰る手段も考えないと行けないよな。胡桃や萌の両親も心配してるだろうし」
「そうよね」
暫くの間、会話が途切れる。何とも言えない間だ。
この間を破るように胡桃が脈略のない質問をした。
「ねえ、真歴ってさあ。本当のところ萌のことどう思ってるの?」
ん? 突然何を言い出すんだ?
「別にどうも思ってない」
「だって、男の人っていくら好きでもない相手でも、あんなにべたつかれたら気が変わっちゃうんじゃないの?」
「変わらねえよ」
「でも、萌って可愛いし、あんな子に抱きつかれて喜ばない男子っていないと思うんだけど」
今日の胡桃は何か変だぞ? どうしたんだ?
「俺は別に何とも思わねえって」
「本当?」
胡桃は思わず俺の手を握る。暫く手を握った後、慌ててその手を放した。
「ごめん。思わず似合わないことしちゃった」
照れ笑いをする胡桃。おかしいぞ。胡桃が可愛く見えるのはなぜだ?
「俺、たぶん萌より・・・・」
「ただいま~」
突然玄関のドアが開いた。
「何でこんなに早いのよ・・・・」
胡桃が小さな声で呟く。
「ちょっと、何向かい合って座ってるのよ!?」
萌は帰って来るなり俺たちを見て叫んだ。
「胡桃! 宮本君にちょっかいで出してたんじゃないでしょうね?」
「知らないわよ」
「知らないわけないでしょう。てか否定しなかったよね? ああ、うかつだったわ」
萌は頭を抱えて首を横に振った。
「それにしても早かったな」
「近くに小さなデパートがあるんだ。買う物も決まってたし」
「そうか」
「それとももう少し遅かった方が良かったのかな?」
「そんなことないけど」
何とも言えぬ恥ずかしさが込み上げてきる。何なんだこの感情は?
「それより真歴君の新しい服を買ってきたぞ。女性サイズだが大きいのにしたから大丈夫だろう」
渡された黒いワンピースの襟には可愛らしいフリルが付いている。
「メイド服だろうが!」
「萌が選んでたぞ」
「萌!!!」
「可愛いでしょ?」
萌は笑顔で顔を傾ける。本気で選んでいるのか冗談で選んでいるのか全く分からない。一つ言えることは絶対外出できなくなったということだ。
夕食は女性三人がわいわい言いながら何かを作っていた。俺は一人食事ができるのを待っている。俺も手伝った方がいいよな。でも、あの中に入る勇気はねえ。
「はい、お待たせ~」
三人が手作りのおかずを持ってやって来た。どれも美味しそうだ。
「本当は手料理なんてあまりしないんだけどね。この時代のレトルト食品はレストランで食べるより美味しいんだ。でも、みんなで作って楽しかったよ」
「萌も楽しかったよ。胡桃に料理の作り方教えて貰ったの。これでいつでもお嫁さんに行けるね。宮本君」
萌が俺の方を見ながら言った。
あれ? 萌より胡桃の方が料理がうまいのか? 俺の感覚からすると絶対逆だ。女子力抜群の萌とほぼ男子の胡桃だぞ。世の中どうなってるんだ?
おかずを机に並べ終わると食事タイムだ。どれも美味しそうだ。うん? やや未来風な食事の中に見慣れた野菜炒め的な料理がある。
「これは?」
「萌が作ったんだよ。食べて食べて~」
萌が喜んで言う。さすが萌! かなり美味しそうだぞ。
俺は真っ先に萌が作った野菜炒めに箸を出す。パクリ。うん? これって甘いのか? いや辛い気もする。と言うより苦いのかも? まとめて評価するならまずい! こいつ料理音痴だったのか!
「ねえ、どう?」
「ああ、斬新な味だな」
「ええ! 本当? 結婚したら毎日作ってあげるね」
それは勘弁してくれ。
「ところで、胡桃は料理得意なのか?」
「胡桃は料理上手だぞ。いっぱい作り方を教えて貰った」
ユリナが笑いながら言う。
「結婚したら食事が楽しみになるぞ」
ユリナは俺の横腹を突きながらからかってくる。
「ちょっとユリナ! 何言い出すの?」
萌はユリナの方を向くと大きな声で言った。大きな声は胡桃の専売特許なのだが。
楽しい食事の後は後片づけ。これは俺もできると申し出たのだが、流し台が狭いからと断られてしまった。また、三人が楽しそうに話しながら作業をしている。こうしていると胡桃と萌は仲良さそうに見えるんだけどな。ユリナがうまく二人をまとめているのかも知れない。萌と胡桃だけだったらこうはいくまい。それにしても今日は胡桃の意外な面をたくさん見た感じだ。萌はわかりやすいのだが、胡桃は実にわかり辛い。俺は台所にいる三人の女性を眺めながら、ふと思うのだった。
「そんなことより、これからどうするの?」
胡桃が俺を見て言った。いつもながら愛想のない話し方である。
「これからって?」
「いつまでもここにいるわけにもいかないじゃない」
「分かってる」
叱られているわけではないが、俺はなぜか下を向いてしまう。こういう状況下における条件反射かも知れない。
「私も真歴を失うのが怖くて付いてきちゃったけど・・・・」
胡桃は小さな小さな声で言った。
「何か言ったか?」
「何でもないわよ」
「確かに帰る手段も考えないと行けないよな。胡桃や萌の両親も心配してるだろうし」
「そうよね」
暫くの間、会話が途切れる。何とも言えない間だ。
この間を破るように胡桃が脈略のない質問をした。
「ねえ、真歴ってさあ。本当のところ萌のことどう思ってるの?」
ん? 突然何を言い出すんだ?
「別にどうも思ってない」
「だって、男の人っていくら好きでもない相手でも、あんなにべたつかれたら気が変わっちゃうんじゃないの?」
「変わらねえよ」
「でも、萌って可愛いし、あんな子に抱きつかれて喜ばない男子っていないと思うんだけど」
今日の胡桃は何か変だぞ? どうしたんだ?
「俺は別に何とも思わねえって」
「本当?」
胡桃は思わず俺の手を握る。暫く手を握った後、慌ててその手を放した。
「ごめん。思わず似合わないことしちゃった」
照れ笑いをする胡桃。おかしいぞ。胡桃が可愛く見えるのはなぜだ?
「俺、たぶん萌より・・・・」
「ただいま~」
突然玄関のドアが開いた。
「何でこんなに早いのよ・・・・」
胡桃が小さな声で呟く。
「ちょっと、何向かい合って座ってるのよ!?」
萌は帰って来るなり俺たちを見て叫んだ。
「胡桃! 宮本君にちょっかいで出してたんじゃないでしょうね?」
「知らないわよ」
「知らないわけないでしょう。てか否定しなかったよね? ああ、うかつだったわ」
萌は頭を抱えて首を横に振った。
「それにしても早かったな」
「近くに小さなデパートがあるんだ。買う物も決まってたし」
「そうか」
「それとももう少し遅かった方が良かったのかな?」
「そんなことないけど」
何とも言えぬ恥ずかしさが込み上げてきる。何なんだこの感情は?
「それより真歴君の新しい服を買ってきたぞ。女性サイズだが大きいのにしたから大丈夫だろう」
渡された黒いワンピースの襟には可愛らしいフリルが付いている。
「メイド服だろうが!」
「萌が選んでたぞ」
「萌!!!」
「可愛いでしょ?」
萌は笑顔で顔を傾ける。本気で選んでいるのか冗談で選んでいるのか全く分からない。一つ言えることは絶対外出できなくなったということだ。
夕食は女性三人がわいわい言いながら何かを作っていた。俺は一人食事ができるのを待っている。俺も手伝った方がいいよな。でも、あの中に入る勇気はねえ。
「はい、お待たせ~」
三人が手作りのおかずを持ってやって来た。どれも美味しそうだ。
「本当は手料理なんてあまりしないんだけどね。この時代のレトルト食品はレストランで食べるより美味しいんだ。でも、みんなで作って楽しかったよ」
「萌も楽しかったよ。胡桃に料理の作り方教えて貰ったの。これでいつでもお嫁さんに行けるね。宮本君」
萌が俺の方を見ながら言った。
あれ? 萌より胡桃の方が料理がうまいのか? 俺の感覚からすると絶対逆だ。女子力抜群の萌とほぼ男子の胡桃だぞ。世の中どうなってるんだ?
おかずを机に並べ終わると食事タイムだ。どれも美味しそうだ。うん? やや未来風な食事の中に見慣れた野菜炒め的な料理がある。
「これは?」
「萌が作ったんだよ。食べて食べて~」
萌が喜んで言う。さすが萌! かなり美味しそうだぞ。
俺は真っ先に萌が作った野菜炒めに箸を出す。パクリ。うん? これって甘いのか? いや辛い気もする。と言うより苦いのかも? まとめて評価するならまずい! こいつ料理音痴だったのか!
「ねえ、どう?」
「ああ、斬新な味だな」
「ええ! 本当? 結婚したら毎日作ってあげるね」
それは勘弁してくれ。
「ところで、胡桃は料理得意なのか?」
「胡桃は料理上手だぞ。いっぱい作り方を教えて貰った」
ユリナが笑いながら言う。
「結婚したら食事が楽しみになるぞ」
ユリナは俺の横腹を突きながらからかってくる。
「ちょっとユリナ! 何言い出すの?」
萌はユリナの方を向くと大きな声で言った。大きな声は胡桃の専売特許なのだが。
楽しい食事の後は後片づけ。これは俺もできると申し出たのだが、流し台が狭いからと断られてしまった。また、三人が楽しそうに話しながら作業をしている。こうしていると胡桃と萌は仲良さそうに見えるんだけどな。ユリナがうまく二人をまとめているのかも知れない。萌と胡桃だけだったらこうはいくまい。それにしても今日は胡桃の意外な面をたくさん見た感じだ。萌はわかりやすいのだが、胡桃は実にわかり辛い。俺は台所にいる三人の女性を眺めながら、ふと思うのだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
Hand in Hand - 二人で進むフィギュアスケート青春小説
宮 都
青春
幼なじみへの気持ちの変化を自覚できずにいた中2の夏。ライバルとの出会いが、少年を未知のスポーツへと向わせた。
美少女と手に手をとって進むその競技の名は、アイスダンス!!
【2022/6/11完結】
その日僕たちの教室は、朝から転校生が来るという噂に落ち着きをなくしていた。帰国子女らしいという情報も入り、誰もがますます転校生への期待を募らせていた。
そんな中でただ一人、果歩(かほ)だけは違っていた。
「制覇、今日は五時からだから。来てね」
隣の席に座る彼女は大きな瞳を輝かせて、にっこりこちらを覗きこんだ。
担任が一人の生徒とともに教室に入ってきた。みんなの目が一斉にそちらに向かった。それでも果歩だけはずっと僕の方を見ていた。
◇
こんな二人の居場所に現れたアメリカ帰りの転校生。少年はアイスダンスをするという彼に強い焦りを感じ、彼と同じ道に飛び込んでいく……
――小説家になろう、カクヨム(別タイトル)にも掲載――
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ナツキス -ずっとこうしていたかった-
帆希和華
ライト文芸
紫陽花が咲き始める頃、笹井絽薫のクラスにひとりの転校生がやってきた。名前は葵百彩、一目惚れをした。
嫉妬したり、キュンキュンしたり、切なくなったり、目一杯な片思いをしていた。
ある日、百彩が同じ部活に入りたいといい、思わぬところでふたりの恋が加速していく。
大会の合宿だったり、夏祭りに、誕生日会、一緒に過ごす時間が、二人の距離を縮めていく。
そんな中、絽薫は思い出せないというか、なんだかおかしな感覚があった。フラッシュバックとでも言えばいいのか、毎回、同じような光景が突然目の前に広がる。
なんだろうと、考えれば考えるほど答えが遠くなっていく。
夏の終わりも近づいてきたある日の夕方、絽薫と百彩が二人でコンビニで買い物をした帰り道、公園へ寄ろうと入り口を通った瞬間、またフラッシュバックが起きた。
ただいつもと違うのは、その中に百彩がいた。
高校二年の夏、たしかにあった恋模様、それは現実だったのか、夢だったのか……。
17才の心に何を描いていくのだろう?
あの夏のキスのようにのリメイクです。
細かなところ修正しています。ぜひ読んでください。
選択しなくちゃいけなかったので男性向けにしてありますが、女性の方にも読んでもらいたいです。
よろしくお願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる