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第3章 未来への旅立ち
第24話 不思議な光景
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「ここまで来たらいいかしら?」
俺達はかなり走った。実際の距離はわからないが気分的にはフルマラソンを走った気分だ。
今からさっきの場所に戻れと言われても恐らく無理だろう。
「それにしてもここはどこなの?」
萌が不安げな声で言った。さっきの胡桃に対する態度を考えると実に違和感を感じる。
「ねえ、宮本君。萌達これからここで暮らすことになるのかなぁ。少し怖いけど萌は宮本君と一緒だったら幸せだよ。ここで結婚しよう」
「私を無視して何言ってるのよ! どさくさに紛れてプロポーズまでしてるじゃない!」
「じゃあ、さっきの続きをする?」
「もういいって!」
俺は慌てて二人の間に割り込んだ。
「どうして止めるの?」
胡桃が俺を睨み付けて言った。条件反射で俺は身構える。
「今は争っている時じゃないだろう? この後どうするかを三人で考えようぜ。三人寄れば文殊の知恵と言うじゃないか」
「珍しいわね。真歴が諺を言うなんて。よくそんな言葉を知ってたわね」
胡桃は完全に俺をバカにしてやがる。今までの積み重ねを考えると仕方ないのだが。これはさすがにバカにしすぎだ。
「でも、その通りね。今は揉めてる時じゃないわ」
「じゃあ、いずれ決着を付けるってことでいいかしら?」
これは? 何とかピンチを乗り切ったのか? やはり俺の使った諺がよかったのだろう。知性があると言うことは何かと役に立つ。
「ところで真歴『三人寄れば文殊の知恵』ってどういう意味?」
「何だ胡桃はそんなことも知らないのか」
俺はどや顔で胡桃を見た。
「いいか『三人寄れば文殊の知恵』てのは三人でお願いすれば文殊様も助けてくれるってことだ」
胡桃と萌が顔を見合わせて深いため息をついた。俺、なんか変なことを言ったか?
二人の顔が穏やかになっていくのを確認すると俺は冗談めいた口調で尋ねてみた。
「ところで、お前達の戦いって勝ったらどうなるんだ?」
「宮本君を恋人にできるのよ」
「真歴を家来にできるのよ」
二人は同時に答えた。二人の間に認識の違いがあるようだ。
「もう一つ聞きたいのだが、俺の気持ちはどうなるのだ?」
「そんなの無視に決まってるじゃない」
これまた二人同時に答えた。
冗談じゃない。恋人はともかく家来になどされてたまるものか。こういう場合、俺が好きな方を選べるのが民主主義というものではないだろうか?
俺はふと上空を見上げた。そこには見たこともない光景が広がっている。
「二人とも見てみろよ。すごい光景だぜ。いかにも未来って感じじゃないか」
あまりの感動に俺は思わず胡桃と萌に話しかけた。
二人も空を見上げ『わぁ』という声を上げる。見たこともない景色を目の当たりにした二人は純粋に感動したようだ。
辺りにはみたらし団子のような建物が所狭しと並んでいる。細長い棒状の塔が空へと向かって伸びており、その途中に楕円形の丸が三つほどくっついているのだ。もちろん三つとは限らない。一つのもあれば五つのもある。そして高いのもあれば低いのもある。また、団子同士はパイプのようなもので複雑に繋がっていた。
「要するにスカイツリーに居住区を取り付けたものね」
なるほど言われればそう見えてくる。いかにも胡桃らしい発想だ。
「未来の建物って素敵ね」
萌の方は素直な感想である。ひねくれた胡桃とは違う。
「そうさ、俺たちは未来の世界に来てるんだ。こんな感動的なことってあるか?」
「そうね。凄いことよね」
胡桃は串団子の群れを見ながら言った。
そう言えば先ほどから妙な音がしている。まるでサイレンのような・・・・
サイレン? まさか! 建物のあちらこちらから赤い光が見える。
「あの赤い光ってもしかして」
「萌も気になっていたの。きっとパトカーだよね」
萌が上を向いて言う。
チューブの中を赤い光が通り過ぎるのが見える。
「私たちが指名手配されたってこと?」
「そうかもな」
「とにかく安全そうな場所に隠れましょう」
俺たちは安全そうな場所を探して歩き始めた。しかし、安全そうな場所ってどんな場所だ?
その時、俺たちの前を一つの球体が近付いてきて止まった。球体は地面から浮いた状態で、側面が開くと中から男の人が出てきた。
「★#※$&$○?(ちょっとお尋ねします?)」
出てきた人が着ている服は何となく警察っぽい。
「$%&%#$$?(SA12棟に行くにはどう行けばいいですか?)」
「この人きっと警察よ!」
胡桃の発言に俺はとっさに萌の手を握って引っ張った。
「宮本君から手を繋いでくれるなんてうれしい」
「真歴!」
「今はそれどころじゃねえだろ! 逃げるぞ!」
折角建物からの脱出に成功したというのにここで捕まってたまるか。俺たちはまたまた全速力で走った。もういい加減にして欲しいのだが。俺達の時代に戻ることができたら長距離選手になる自信が出てきた。
俺達はかなり走った。実際の距離はわからないが気分的にはフルマラソンを走った気分だ。
今からさっきの場所に戻れと言われても恐らく無理だろう。
「それにしてもここはどこなの?」
萌が不安げな声で言った。さっきの胡桃に対する態度を考えると実に違和感を感じる。
「ねえ、宮本君。萌達これからここで暮らすことになるのかなぁ。少し怖いけど萌は宮本君と一緒だったら幸せだよ。ここで結婚しよう」
「私を無視して何言ってるのよ! どさくさに紛れてプロポーズまでしてるじゃない!」
「じゃあ、さっきの続きをする?」
「もういいって!」
俺は慌てて二人の間に割り込んだ。
「どうして止めるの?」
胡桃が俺を睨み付けて言った。条件反射で俺は身構える。
「今は争っている時じゃないだろう? この後どうするかを三人で考えようぜ。三人寄れば文殊の知恵と言うじゃないか」
「珍しいわね。真歴が諺を言うなんて。よくそんな言葉を知ってたわね」
胡桃は完全に俺をバカにしてやがる。今までの積み重ねを考えると仕方ないのだが。これはさすがにバカにしすぎだ。
「でも、その通りね。今は揉めてる時じゃないわ」
「じゃあ、いずれ決着を付けるってことでいいかしら?」
これは? 何とかピンチを乗り切ったのか? やはり俺の使った諺がよかったのだろう。知性があると言うことは何かと役に立つ。
「ところで真歴『三人寄れば文殊の知恵』ってどういう意味?」
「何だ胡桃はそんなことも知らないのか」
俺はどや顔で胡桃を見た。
「いいか『三人寄れば文殊の知恵』てのは三人でお願いすれば文殊様も助けてくれるってことだ」
胡桃と萌が顔を見合わせて深いため息をついた。俺、なんか変なことを言ったか?
二人の顔が穏やかになっていくのを確認すると俺は冗談めいた口調で尋ねてみた。
「ところで、お前達の戦いって勝ったらどうなるんだ?」
「宮本君を恋人にできるのよ」
「真歴を家来にできるのよ」
二人は同時に答えた。二人の間に認識の違いがあるようだ。
「もう一つ聞きたいのだが、俺の気持ちはどうなるのだ?」
「そんなの無視に決まってるじゃない」
これまた二人同時に答えた。
冗談じゃない。恋人はともかく家来になどされてたまるものか。こういう場合、俺が好きな方を選べるのが民主主義というものではないだろうか?
俺はふと上空を見上げた。そこには見たこともない光景が広がっている。
「二人とも見てみろよ。すごい光景だぜ。いかにも未来って感じじゃないか」
あまりの感動に俺は思わず胡桃と萌に話しかけた。
二人も空を見上げ『わぁ』という声を上げる。見たこともない景色を目の当たりにした二人は純粋に感動したようだ。
辺りにはみたらし団子のような建物が所狭しと並んでいる。細長い棒状の塔が空へと向かって伸びており、その途中に楕円形の丸が三つほどくっついているのだ。もちろん三つとは限らない。一つのもあれば五つのもある。そして高いのもあれば低いのもある。また、団子同士はパイプのようなもので複雑に繋がっていた。
「要するにスカイツリーに居住区を取り付けたものね」
なるほど言われればそう見えてくる。いかにも胡桃らしい発想だ。
「未来の建物って素敵ね」
萌の方は素直な感想である。ひねくれた胡桃とは違う。
「そうさ、俺たちは未来の世界に来てるんだ。こんな感動的なことってあるか?」
「そうね。凄いことよね」
胡桃は串団子の群れを見ながら言った。
そう言えば先ほどから妙な音がしている。まるでサイレンのような・・・・
サイレン? まさか! 建物のあちらこちらから赤い光が見える。
「あの赤い光ってもしかして」
「萌も気になっていたの。きっとパトカーだよね」
萌が上を向いて言う。
チューブの中を赤い光が通り過ぎるのが見える。
「私たちが指名手配されたってこと?」
「そうかもな」
「とにかく安全そうな場所に隠れましょう」
俺たちは安全そうな場所を探して歩き始めた。しかし、安全そうな場所ってどんな場所だ?
その時、俺たちの前を一つの球体が近付いてきて止まった。球体は地面から浮いた状態で、側面が開くと中から男の人が出てきた。
「★#※$&$○?(ちょっとお尋ねします?)」
出てきた人が着ている服は何となく警察っぽい。
「$%&%#$$?(SA12棟に行くにはどう行けばいいですか?)」
「この人きっと警察よ!」
胡桃の発言に俺はとっさに萌の手を握って引っ張った。
「宮本君から手を繋いでくれるなんてうれしい」
「真歴!」
「今はそれどころじゃねえだろ! 逃げるぞ!」
折角建物からの脱出に成功したというのにここで捕まってたまるか。俺たちはまたまた全速力で走った。もういい加減にして欲しいのだが。俺達の時代に戻ることができたら長距離選手になる自信が出てきた。
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