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第2章 謎の転校生
第17話 秘密
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胡桃の今までに聞いたこともないドスのきいた声に俺は言い訳するタイミングを逸していた。萌は怖くないのか?
「嫌よ。あなたが宮本君のこと諦めてよ」
「離れなさいって言ってるの! 聞こえないの?」
そう言うと胡桃はゆっくりと俺たちの方に近付いてくる。はっきり言って胡桃の背後にオーラが見える。薄い青色のオーラが。
頼むから暴力事件なんて起こさないでくれ。俺は必死で萌を押し続けた。このハラハラドキドキな状況下で美紀だけが嬉しそうな顔で見つめている。
「胡桃、落ち着けって」
胡桃が俺と萌の腕を力強く握りしめたとき異変が起こった。
突然、俺の財布から警報音が鳴りだしたのである。俺が慌ててズボンのポケットから財布を取り出すと例の定期券から音がしている。
「何もこんなところで鳴らなくても」
音はデパート中に響き渡るほど大きくなはかったが一応デパートの中である。この場所で警報はやばすぎるだろう。もしデパートの客が避難を始めたらどうするというのだ。
俺たちは慌ててこの場を離れることにした。
一番人気のない場所を探すと、俺は慌てて定期券を財布から取り出した。すると定期券は、
「%$#*※%&、帰宅の時間が近付いています」
と三回繰り返し警報は鳴すに止んだ。
やっぱり未来人はいたんだ。これは未来人が現代に旅行するためのパスポートなんだ。絶対間違いない!
「ねえ、何なのこれ?」
美紀はきょとんとした顔で定期券を見つめている。
「私も分からないの」
胡桃がやや怯えた声で答える。
「分からないって、定期券がしゃべってるんだよ」
「何でこうなるのか、分からないのよ」
胡桃じゃなくても、この状況を美紀に説明するのは難しそうだ。
「今日のところはいったん帰ろうか」
突然萌が提案してきた。
「なぜだ。これからって言うときに」
俺は今の素直な気持ちを言ってみた。
「このことがどんどん広まっていってもいいの?」
萌は美紀を横目で見ながら俺の耳元でそっと呟く。
「そ、そうだな」
俺は萌の言わんとすることを理解すると、美紀の存在を気にしながら答えた。美紀は噂を広める天才だ。こんな美味しい情報を広めないわけがない。
あれ? 俺はふと重大な事実に気付く。もしかしてこの定期券のおかげで胡桃の怒りが収まったのか? 胡桃は今まで怒りに我を忘れていたのが嘘のように普段の表情になっている。もしかすると俺は強運の持ち主かも知れない。下手をすれば今日が命日になってもおかしくない状況だったのだ。それが助かったばかりか未来人の存在も確認できたようなものだ。これは凄すぎる!
その日の夜、俺の部屋に美紀がいる。
「だから何でお前がここにいるんだ!」
「ちょっと聞きたいことがあったから」
もしかして定期券のことか? それはまずいぞ。俺の語彙力ではうまく誤魔化せないだろう。
「いくら聞きたいことがあっても夜に男の家に来るか普通」
「どうして?」
「いいか、今日は俺の両親がいないんだぞ。つまり俺たち二人だけだ。何とも思わんのか?」
「だって、両親がいないなんて知らないわよ」
美紀は平然としたか顔で言ってのけた。
「だからこういう状況も想定して行動しろって言ってるんだ」
「でも、宮本君硬派なんでしょう」
「それはそうだが、この時間に聞きたいことがあったら普通は電話するだろう。俺以外の男に同じことをするなよ」
「心配してくれてるんだ。優しいんだね」
「そ、そんなことはねえ」
俺は照れながらようやくグラスにジュースを入れて美紀に出した。
「胡桃が好きになるわけだ」
「何言ってるんだ?」
胡桃が俺のこと好きなわけないだろう。そういや部室で『好きよ』とか言ってたっけ。あれは萌に言わされたようなものだし、関係ねえだろう。
「ところで聞きたいことって何だ?」
「胡桃のこと、どう思ってるの?」
さすが美紀、いきなりストレートな疑問を投げかけてくるんじゃねえ。まあ、定期券のことを聞かれるよりはいいのだが。
「どうって言われても返答に困るのだが」
「好きなの? それとも何とも思ってないの?」
これまた直球ど真ん中の質問だ。
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「最近胡桃の様子が変なのよ」
「様子が変?」
「あの転校生が来た辺りからかな?」
「そうか。それは気付かなかったな。それでどう変なんだ?」
「一緒にいてもどことなく暗いし、考え事してて私の声も聞こえてないって感じ」
それは確かに変だ。あれだけ好き放題にズバズバ言う胡桃に悩みなどあるはずがない。
「ねえ、もし胡桃のことが好きなら、あの転校生といちゃつくのは止めなさいよ」
「いちゃついてなんかいねえって」
「でも、いつも一緒にいるじゃない」
「あれはあっちからやって来るんだ!」
「本当?」
「ああ、本当だ」
少しは納得したのか美紀の質問攻撃は終わった。
暫く考え込んだ美紀は突然顔を上げると俺に向かって笑顔で言った。
「良かった。安心したし私帰るね」
「おお、そうか」
俺は美紀が帰ると聞いてホッとした。美紀とは言え悩んでいる女性を見るのは忍びない。俺は美紀の表情を見てやや安心感に包まれた。やはり悩みなどない平和な日々が一番だ。
俺は美紀を玄関まで送ろうと立ち上がった。もう夜の11時を越えている。さすがに高校生としては遅い時間と言えるだろう。そんな時間に俺の部屋に女がいるのだ。考えただけでも硬派に傷がつくというものだ。時々胡桃が突然来る時もあるがあれは例外だ。第一美紀と胡桃を比較すると、どう見ても美紀の方が可愛い。こんなことは死んでも口外できないのだが。
次の瞬間、俺の脳裏に聞いては鳴らぬ音が飛び込んできた。そう、この世の終わりを告げる世にも恐ろしい声が。
「嫌よ。あなたが宮本君のこと諦めてよ」
「離れなさいって言ってるの! 聞こえないの?」
そう言うと胡桃はゆっくりと俺たちの方に近付いてくる。はっきり言って胡桃の背後にオーラが見える。薄い青色のオーラが。
頼むから暴力事件なんて起こさないでくれ。俺は必死で萌を押し続けた。このハラハラドキドキな状況下で美紀だけが嬉しそうな顔で見つめている。
「胡桃、落ち着けって」
胡桃が俺と萌の腕を力強く握りしめたとき異変が起こった。
突然、俺の財布から警報音が鳴りだしたのである。俺が慌ててズボンのポケットから財布を取り出すと例の定期券から音がしている。
「何もこんなところで鳴らなくても」
音はデパート中に響き渡るほど大きくなはかったが一応デパートの中である。この場所で警報はやばすぎるだろう。もしデパートの客が避難を始めたらどうするというのだ。
俺たちは慌ててこの場を離れることにした。
一番人気のない場所を探すと、俺は慌てて定期券を財布から取り出した。すると定期券は、
「%$#*※%&、帰宅の時間が近付いています」
と三回繰り返し警報は鳴すに止んだ。
やっぱり未来人はいたんだ。これは未来人が現代に旅行するためのパスポートなんだ。絶対間違いない!
「ねえ、何なのこれ?」
美紀はきょとんとした顔で定期券を見つめている。
「私も分からないの」
胡桃がやや怯えた声で答える。
「分からないって、定期券がしゃべってるんだよ」
「何でこうなるのか、分からないのよ」
胡桃じゃなくても、この状況を美紀に説明するのは難しそうだ。
「今日のところはいったん帰ろうか」
突然萌が提案してきた。
「なぜだ。これからって言うときに」
俺は今の素直な気持ちを言ってみた。
「このことがどんどん広まっていってもいいの?」
萌は美紀を横目で見ながら俺の耳元でそっと呟く。
「そ、そうだな」
俺は萌の言わんとすることを理解すると、美紀の存在を気にしながら答えた。美紀は噂を広める天才だ。こんな美味しい情報を広めないわけがない。
あれ? 俺はふと重大な事実に気付く。もしかしてこの定期券のおかげで胡桃の怒りが収まったのか? 胡桃は今まで怒りに我を忘れていたのが嘘のように普段の表情になっている。もしかすると俺は強運の持ち主かも知れない。下手をすれば今日が命日になってもおかしくない状況だったのだ。それが助かったばかりか未来人の存在も確認できたようなものだ。これは凄すぎる!
その日の夜、俺の部屋に美紀がいる。
「だから何でお前がここにいるんだ!」
「ちょっと聞きたいことがあったから」
もしかして定期券のことか? それはまずいぞ。俺の語彙力ではうまく誤魔化せないだろう。
「いくら聞きたいことがあっても夜に男の家に来るか普通」
「どうして?」
「いいか、今日は俺の両親がいないんだぞ。つまり俺たち二人だけだ。何とも思わんのか?」
「だって、両親がいないなんて知らないわよ」
美紀は平然としたか顔で言ってのけた。
「だからこういう状況も想定して行動しろって言ってるんだ」
「でも、宮本君硬派なんでしょう」
「それはそうだが、この時間に聞きたいことがあったら普通は電話するだろう。俺以外の男に同じことをするなよ」
「心配してくれてるんだ。優しいんだね」
「そ、そんなことはねえ」
俺は照れながらようやくグラスにジュースを入れて美紀に出した。
「胡桃が好きになるわけだ」
「何言ってるんだ?」
胡桃が俺のこと好きなわけないだろう。そういや部室で『好きよ』とか言ってたっけ。あれは萌に言わされたようなものだし、関係ねえだろう。
「ところで聞きたいことって何だ?」
「胡桃のこと、どう思ってるの?」
さすが美紀、いきなりストレートな疑問を投げかけてくるんじゃねえ。まあ、定期券のことを聞かれるよりはいいのだが。
「どうって言われても返答に困るのだが」
「好きなの? それとも何とも思ってないの?」
これまた直球ど真ん中の質問だ。
「どうしてそんなことを聞くんだ?」
「最近胡桃の様子が変なのよ」
「様子が変?」
「あの転校生が来た辺りからかな?」
「そうか。それは気付かなかったな。それでどう変なんだ?」
「一緒にいてもどことなく暗いし、考え事してて私の声も聞こえてないって感じ」
それは確かに変だ。あれだけ好き放題にズバズバ言う胡桃に悩みなどあるはずがない。
「ねえ、もし胡桃のことが好きなら、あの転校生といちゃつくのは止めなさいよ」
「いちゃついてなんかいねえって」
「でも、いつも一緒にいるじゃない」
「あれはあっちからやって来るんだ!」
「本当?」
「ああ、本当だ」
少しは納得したのか美紀の質問攻撃は終わった。
暫く考え込んだ美紀は突然顔を上げると俺に向かって笑顔で言った。
「良かった。安心したし私帰るね」
「おお、そうか」
俺は美紀が帰ると聞いてホッとした。美紀とは言え悩んでいる女性を見るのは忍びない。俺は美紀の表情を見てやや安心感に包まれた。やはり悩みなどない平和な日々が一番だ。
俺は美紀を玄関まで送ろうと立ち上がった。もう夜の11時を越えている。さすがに高校生としては遅い時間と言えるだろう。そんな時間に俺の部屋に女がいるのだ。考えただけでも硬派に傷がつくというものだ。時々胡桃が突然来る時もあるがあれは例外だ。第一美紀と胡桃を比較すると、どう見ても美紀の方が可愛い。こんなことは死んでも口外できないのだが。
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