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第1章 タイムトラベル同好会というクラブ
第7話 初めてのお買い物
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そしていよいよ日曜日。昨夜はろくに眠れなかった。たかが胡桃と買い物に行くだけである。別に特別なわけではないのだが、早く寝なくてはと羊を23578匹も数えてしまった。これはいったいどういうことだ。
俺は待ち合わせ場所の駅前にいる。胡桃はまだ来ていない。時間と場所を指定しておいて遅れてくるなんて信じられない。よく考えたら家が隣なのだから一緒に来れば良かった。まさかこんなに待たされることになろうとは。とは言っても待ち合わせ時間を十分ほど過ぎただけなんだが。
「お待たせ~」
ようやくやって来たか。
「ごめん。着てく服が決まらなくて」
何が着ていく服が決まらないだ。どんな服でもいいではないか。一体何を考えているの・・・・。え!? き、綺麗だ。はっきり言って綺麗だ。本当に胡桃なのか? 着ているのは普通の白いワンピースだが、とてもよく似合っている。俺は女の服装に興味はないが今回は別だ。初めて女性を美しいと思ったかもしれない。それが胡桃だなんて・・・・ついてない。
「何か言った?」
「な、何にも言っとらん」
まさか思わず声に出してしまったのか。もしそうだとすればこんな失態はない。一生の不覚と言ってもいいだろう。
「どうしたの? さっきからこちらを見つめて」
胡桃は冗談っぽく言う。
「誰がお前を見つめるか! ただ白い服が似合ってるなって・・・・思って」
俺は何を言っているんだ?
「このワンピース?」
「ああ」
「真歴も着てみる?」
「何でそうなるんだ!」
胡桃はくすくす笑っている。完璧にからかっている目だ。美紀といい胡桃といい俺は女にからかわれやすいのか?
「で、どこ行くの?」
「女の服が売ってるところ」
「だから、どこの店に買いに行くのか聞いてるのよ」
「お前に任せた。できれば知り合いに会わないところがいい」
「この前は学校に一緒に行こうって家まで来たくせに、やっぱり噂になると困るんだ?」
「お前は平気なのかよ」
「別に」
胡桃は俺に背を向けて言った。
「じゃあ、一番高級なデパートへ行きましょう」
「それはそれでちょっと待て」
俺は慌てて胡桃を追いかけた。冗談じゃない。俺は高校生だぞ。特に貧しいというわけではないが大金を持っているわけでもない。俺の限界を少しは考えてくれ。
ここは婦人服売り場。周りを見ると女性ばかりである。俺一人が浮いている。当たり前なのだか。
「おい、早く決めろよ」
こんなところを知り合いに見られたら大変なことになる。一刻も早くこの場から立ち去りたいという衝動に駆られる。こんなところをクラスメイトにでも見られたらおしまいだ。
「おお、真歴じゃねえか。女装でも始めるのか?」
いきなり何ということだ!!! 俺の頭はいいわけを必死で探している。母親へのプレゼント? それとも妹へのプレゼント? ああ、俺には妹はいなかった。とにかく俺一人しか見られていないのは不幸中の幸いだ。明日こいつらをうまく誤魔化すしかない。
「あら、宮本君に胡桃じゃない。二人でお買い物? いいわねぇ、仲良くって」
滅茶苦茶見られてるんですけど!!!!! これはあれだ完全に詰んだな。ああ、明日学校へ行くのが怖い。
「ねえ、これなんかどうかな?」
「お前、今の会話聞こえてなかったのか」
「え? 何が」
聞こえてない。服を選ぶのに夢中になりすぎて聞こえてない。
「お前のクラスメイトにも見られたぞ!」
「そうなの? ははは、仕方ないわね」
何でそんなに落ち着いていられるんだ? 明日からもの凄い噂が流れるぞ!
「おい、真剣に考えろよ。二人で買い物をしてるところを目撃されたんだぞ」
「別にいいじゃない」
なんでそうなるんだ!? 俺にとっては死活問題だぞ!
「じゃあ、これは候補にしておいて、次の店に行くわよ」
「まだ、行くのかよ。もう三時間も買い物してるぞ」
俺の悲痛の叫びは胡桃には届かなかった。
そして五時過ぎ、俺はようやく解放された。確か待ち合わせの時間は朝の十時だったよな。そして、出会った知り合いは少なくとも五組は超えている。もう噂は学校中に広まること必至だ。俺のイメージが変わっていく。どうすればいいんだ。
しかし、悪いことばかりではない。俺はこの買い物で貴重な教訓を得ることができた。『もう二度と女とは買い物に行かねえ』ということだ。
帰りは胡桃と家まで一緒に歩いた。胡桃の家に着くと俺は改めて買い物袋を手渡した。
「今日はありがとう」
「それで頼みが一つあるんだが」
「わかってるわ。これでしょ?」
胡桃は例の定期券を取り出して言った。
「何で分かったんだ?」
「こんな理由でもない限り、真歴が私に優しくしてくれるわけないものね」
胡桃はそう言うと俺に定期を差し出した。俺はそっとそれに手を伸ばすと、
「やっぱり駄目!」
胡桃が手を引っ込めようとしたので、俺は慌てて定期券を持って引っ張った。
「何でそうなるんだ? 流れ的におかしいだろ!」
「だって、これ渡したら真歴が一人でどっか行っちゃうような気がして」
二人は定期券を引っ張り合う形になったが、やはり男と女では腕力が違う。簡単に俺が定期券を引き寄せる・・・・はずだったが、意外と胡桃は強かった。暫く平衡状態が続いた後、手からすっぽ抜けるように定期券は地面に落ち、俺たち二人は飛ばされてこけてしまった。
それにしても今日は碌なことがない。恐らく今おみくじを引いたら大凶が出るに決まっている。俺は胡桃より早く起き上がり定期券に手を伸ばした時とんでもないものが俺達の目の前に現れた。
俺は待ち合わせ場所の駅前にいる。胡桃はまだ来ていない。時間と場所を指定しておいて遅れてくるなんて信じられない。よく考えたら家が隣なのだから一緒に来れば良かった。まさかこんなに待たされることになろうとは。とは言っても待ち合わせ時間を十分ほど過ぎただけなんだが。
「お待たせ~」
ようやくやって来たか。
「ごめん。着てく服が決まらなくて」
何が着ていく服が決まらないだ。どんな服でもいいではないか。一体何を考えているの・・・・。え!? き、綺麗だ。はっきり言って綺麗だ。本当に胡桃なのか? 着ているのは普通の白いワンピースだが、とてもよく似合っている。俺は女の服装に興味はないが今回は別だ。初めて女性を美しいと思ったかもしれない。それが胡桃だなんて・・・・ついてない。
「何か言った?」
「な、何にも言っとらん」
まさか思わず声に出してしまったのか。もしそうだとすればこんな失態はない。一生の不覚と言ってもいいだろう。
「どうしたの? さっきからこちらを見つめて」
胡桃は冗談っぽく言う。
「誰がお前を見つめるか! ただ白い服が似合ってるなって・・・・思って」
俺は何を言っているんだ?
「このワンピース?」
「ああ」
「真歴も着てみる?」
「何でそうなるんだ!」
胡桃はくすくす笑っている。完璧にからかっている目だ。美紀といい胡桃といい俺は女にからかわれやすいのか?
「で、どこ行くの?」
「女の服が売ってるところ」
「だから、どこの店に買いに行くのか聞いてるのよ」
「お前に任せた。できれば知り合いに会わないところがいい」
「この前は学校に一緒に行こうって家まで来たくせに、やっぱり噂になると困るんだ?」
「お前は平気なのかよ」
「別に」
胡桃は俺に背を向けて言った。
「じゃあ、一番高級なデパートへ行きましょう」
「それはそれでちょっと待て」
俺は慌てて胡桃を追いかけた。冗談じゃない。俺は高校生だぞ。特に貧しいというわけではないが大金を持っているわけでもない。俺の限界を少しは考えてくれ。
ここは婦人服売り場。周りを見ると女性ばかりである。俺一人が浮いている。当たり前なのだか。
「おい、早く決めろよ」
こんなところを知り合いに見られたら大変なことになる。一刻も早くこの場から立ち去りたいという衝動に駆られる。こんなところをクラスメイトにでも見られたらおしまいだ。
「おお、真歴じゃねえか。女装でも始めるのか?」
いきなり何ということだ!!! 俺の頭はいいわけを必死で探している。母親へのプレゼント? それとも妹へのプレゼント? ああ、俺には妹はいなかった。とにかく俺一人しか見られていないのは不幸中の幸いだ。明日こいつらをうまく誤魔化すしかない。
「あら、宮本君に胡桃じゃない。二人でお買い物? いいわねぇ、仲良くって」
滅茶苦茶見られてるんですけど!!!!! これはあれだ完全に詰んだな。ああ、明日学校へ行くのが怖い。
「ねえ、これなんかどうかな?」
「お前、今の会話聞こえてなかったのか」
「え? 何が」
聞こえてない。服を選ぶのに夢中になりすぎて聞こえてない。
「お前のクラスメイトにも見られたぞ!」
「そうなの? ははは、仕方ないわね」
何でそんなに落ち着いていられるんだ? 明日からもの凄い噂が流れるぞ!
「おい、真剣に考えろよ。二人で買い物をしてるところを目撃されたんだぞ」
「別にいいじゃない」
なんでそうなるんだ!? 俺にとっては死活問題だぞ!
「じゃあ、これは候補にしておいて、次の店に行くわよ」
「まだ、行くのかよ。もう三時間も買い物してるぞ」
俺の悲痛の叫びは胡桃には届かなかった。
そして五時過ぎ、俺はようやく解放された。確か待ち合わせの時間は朝の十時だったよな。そして、出会った知り合いは少なくとも五組は超えている。もう噂は学校中に広まること必至だ。俺のイメージが変わっていく。どうすればいいんだ。
しかし、悪いことばかりではない。俺はこの買い物で貴重な教訓を得ることができた。『もう二度と女とは買い物に行かねえ』ということだ。
帰りは胡桃と家まで一緒に歩いた。胡桃の家に着くと俺は改めて買い物袋を手渡した。
「今日はありがとう」
「それで頼みが一つあるんだが」
「わかってるわ。これでしょ?」
胡桃は例の定期券を取り出して言った。
「何で分かったんだ?」
「こんな理由でもない限り、真歴が私に優しくしてくれるわけないものね」
胡桃はそう言うと俺に定期を差し出した。俺はそっとそれに手を伸ばすと、
「やっぱり駄目!」
胡桃が手を引っ込めようとしたので、俺は慌てて定期券を持って引っ張った。
「何でそうなるんだ? 流れ的におかしいだろ!」
「だって、これ渡したら真歴が一人でどっか行っちゃうような気がして」
二人は定期券を引っ張り合う形になったが、やはり男と女では腕力が違う。簡単に俺が定期券を引き寄せる・・・・はずだったが、意外と胡桃は強かった。暫く平衡状態が続いた後、手からすっぽ抜けるように定期券は地面に落ち、俺たち二人は飛ばされてこけてしまった。
それにしても今日は碌なことがない。恐らく今おみくじを引いたら大凶が出るに決まっている。俺は胡桃より早く起き上がり定期券に手を伸ばした時とんでもないものが俺達の目の前に現れた。
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