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第四章 取り敢えず四天王を倒せ!

第六十六話 怒ったら負け

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 勇者様がアイラとビューティーを見て言った。
「最後の対戦は我慢比べだ」
「我慢比べ?」
「強いモンスターとの戦いにおいては、常に冷静な判断力が求められる。相手の挑発に乗らず自分を保ち続けられる人物が勝者となるのだ」
「わかったわ。それで何をすればいいの?」
ビューティーは余裕で答える。アイラは何も言わず下を向いている。

『もしかしてアイラさん自信ないのかなぁ?』
私は小さな声でクレアに聞いた。
『アイラさんはすぐにカッとなる時がありますからね』
なるほど、それで下を向いているのか。大丈夫かなぁ。少し不安になってきた。

「今から二人にいろいろな暴言を浴びせる。最後まで冷静さを保った方が勝ちだ」
「それだけでいいの? 簡単じゃない」
ビューティーは長い髪を手で風になびかせながら言った。
「あああああが暴言を言うの。イメージが湧かないけど」
「いや、暴言はこの猫に言ってもらう」
勇者様が足下を指さすとそこにはポチがいた。めっちゃ適任だ!

「僕は猫じゃないよ。ガイダーさ」
「じゃあ、ポチ。この二人に暴言を浴びせてくれ。制限時間は一人3分。より腹を立てずにいられた方が勝ちだ。では二人で先攻後攻を決めてもらおう」
「じゃあ、私が先にするわ」
アイラが言った。
「別にいいわよ。私は余裕だもの」
これって後攻の方が有利じゃない? あと少しで勝ちだと思えば我慢できそうだけど。

「じゃあ、アイラからだね」
「そうよ。何言われても大丈夫だから」
「君は割とドジなところがあるね」
「どうして?」
「よくコップを割るだろう?」
「ふん、ドジっ子の方が可愛さをアピールできるのよ」
「それに頭のも良くないと思うんだ」
「そうかな?」
「二桁の足し算でも筆算で計算しているだろう?」
「頭が悪い方が可愛さをアピールできるのよ」
アイラさん余裕だね。

「君は背が低すぎるね」
「な! そ、それがどうしたのよ・・・・」
確かにこのメンバーでは一番背が低いとは思ってたけど。アイラさんて背が低いの気にしてたのかな?

「なんたってあの麗華より低いからね」
「な、な、な! おほん。それがどうしたっての?」
私より背が低いってことに過剰反応したよね? 確かに私は150cmしかないけど・・・・。私より下なのがそんなに嫌だったとは。

「時間だ。次はビューティーだな」
「いつでもいいわよ」
アイラさん、結局怒ることはなかったけど動揺はしたよね。もしビューティーさんが全く怒らなかったら負けちゃうよ。

「ビューティー、君の火属性の魔法は全く使えないね」
シーン。
「得意の水属性の魔法もそれほど強力じゃないみたいだね」
シーン。
「君は自分の魔法に自信を持ってるようだけど、君が思っているほど強くないと思うよ」
シーン。

 そうか! ビューティーさんは何も答えない戦法なんだ。無視し続ければ腹も立たないよね。これってアイラさんピンチなんじゃ。

「君の話し方って妙な訛りを感じるけど、もしかして田舎の出身なのかい?」
シーン。

 ああ、もうダメかも?

「君は顔に自信があるようだけど鼻筋が歪んでるよね?」
「何ですってー!」
「君が意識してるほど世間の人々は君のことを美人だとは思ってないんじゃないかな?」
「もう一度言って見なさいよ!」

「そこまでだ」
「あ!」
「勝負あったな。アイラの勝ちだ」
「こんなのインチキよ。もう一度勝負させてよ」
「ダメだ」

「アイラさん。良かったですね」
「ありがとう麗華ちゃん」
「でも、どうして先攻にしたんですか? 絶対不利な気がするけど」
「ポチの性格だから後半になればなるほど調子に乗って言いたい放題になると思ったからよ」
「確かに! 凄いですアイラさん。頭いいじゃないですか」
「まさか本当に頭が悪いと思ってたんじゃないよね?」
「まさか~」
と言いながらこの4人の中では一番知能指数は低いと予想する私であった。
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