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第四章 取り敢えず四天王を倒せ!

第六十一話 指輪の呪いを解く方法

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 お化け屋敷教会を造った張本人のおじいさんは楽しそうに大笑いをしている。こんな所早く退散したいな。どうせ呪いの指輪を外す魔力なんてなさそうだし。
「ところで連れの者が呪いの指輪を装備してしまって困っている。あなたの力で取ることはできないものか」
「どれどれ見せて貰おう」

 おじいさんは私の指にはまっている指輪を丁寧に見た。
「うーむ。これは手強そうな指輪じゃのう。呪いのレベルが非常に強い」
やっぱりダメなんだ。そうはうまくいかないよね。

「まあ、取れぬこともなかろう」
「え?」
意外な言葉が聞こえたような? このインチキおじいさんでも外せるの?

「少し手間はかかるが方法はいくつかある」
「本当ですか? お願いします」
私は嬉しくなって思わずお礼を言ってしまった。
「任せておけ、こう見えてわしは大僧正だからな。はははは」
人は見かけによらないってこのことだ!

「様々な方法があるが、まずは一番簡単な方法からいこう」
そう言うとおじいさんはタンスから大きなナイフを出してやって来た。
「魔法で呪いを解くんですよね」
「大丈夫じゃ。魔法もちゃんと使う」
「魔法も? 『も』ってどういう意味ですか?」
私はとっさに手を引っ込めた。

「このナイフで指を切り落として指輪を取ってすぐ指を付ける。ちゃんと血が出ないように魔法はかけるから安心じゃ」
やっぱりインチキおじいさんだったー!
「魔法だけで呪いを解いてください!」
「この方法が一番楽で確実なんじゃがのう」

 おじいさんは名残惜しそうにナイフをタンスに戻した。
「では、次の方法に移るか」
今度は台所から石けんを持ってくるのが見えた。
「呪いですからその方法は無理ですよ!」
「なんじゃ、もう試したのか?」

「仕方がない。正当な方法で呪いを解くことにしよう」
「初めからそうしてください!」
私は両腕を下に突き出して思いっきり叫んだ。

 おじいさんが長めの呪文を唱えると部屋の真ん中に奇々怪々な椅子が現れた。
「その椅子に座るんじゃ」
「この椅子にですか?」
「そうじゃ」
とても座れるタイプの椅子ではない。もちろん椅子の形はしているが、椅子のあちらこちらに骸骨がある。見たところ作り物には見えない。

「この骸骨本物じゃないですよね?」
「もちろん本物じゃ」
「ええー!」
「本物でなかったら効果はないのじゃ」
座りたくないよー!

「でも、サイズが小さめだから人間の骸骨じゃないですよね?」
「安心せい。魔法で小さくしてあるだけじゃ。まごうことなき人骨じゃ」
絶対に聞きたくなかった情報だよ!

「どうした? 早く座らぬか」
「でも・・・・」
「仕方のない奴じゃ。ほれ」
おじいさんが私を指さすと、私の体はよろけながら椅子に座った。

 ガシャ!
「ええー!」
突然、鉄の輪が私の手首を固定する。
「何で呪いを解くだけなのに私を固定しなければいけないんですか!?」
殆ど泣き声になっている。
「恐怖のあまり逃げ出す奴もおるからな」
「ええーーー!!!」

 おじいさんがお経に近い長い呪文を唱えると私の頭上に真っ黒な雲が現れ稲光的な物が光り出した。
「これ私に落ちたりはしないですよね?」
「もちろん落ちる」
「死んだらどうするんですか!」
「大丈夫、時たま死ぬこともあるが50%の確率で助かる」
「死ぬ確率って半分じゃないですか!?」
「気にするな」
「気にします!」

「それじゃ行くぞ」
「ちょっと待ってください。私やっぱり指輪が外れなくてもいいです。一生デブキャラとして生きます。だから・・・・」
ドンガラガッシャン!
「キャー!」

「あれ? 私生きてる?」
「成功じゃ。もう指輪は取れるはずじゃ」
「本当ですか? ありがとうございます」
私は喜びのあまりおじいさんに飛びついた。
コロコロ。
「え? キャー! お、おじいさんの首が・・・・取れて転がったー!」

 私がその場に座り込むとおじいさんの首が空中に浮いて元の位置に戻っていった。
「どうじゃ。わしの新作の魔法は」
「え? 魔法?」
「驚いたじゃろ?」
「もう! 止めてください!」
「悪かった。悪かった。さあ、早く立って指輪を外してみるんじゃ」
と言われたが、腰が抜けて立つことができない私なのだった。
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