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第四章 取り敢えず四天王を倒せ!

第五十七話 泉の女神様

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 私達は急いで黄色く輝く方へと走った。そして黄金色に輝く池のような物が目の前に現れた。
「これが黄金の泉ですか?」
「ああ、たぶん」
勇者様が自信なさげに言った。

 確かに黄色い水ではあるが、毒々しい泡が浮かんでははじけている。
「私、泉の水って綺麗なものだと思ってました」
「普通は綺麗ですよ」
クレアが当たり前そうなことを教えてくれる。

「もしかしてこの水って熱いのかな?」
「熱気は感じられないわね」
アイラが水に手をかざす。
「でも沸騰しているように見えるよな」
サラが泉を覗き込む。

「もしかしたら有毒ガスが出ているかもしれん。泉に顔を近づけるな!」
勇者様はいつも冷静だ。
「毒だったら何かを投げ入れたらたちまち溶けてしまうとか?」
「まさかそこまで猛毒ではないと思いますけど」
「やってみましょうよ!」
アイラは興味津々に目を輝かせている。

「さて何を投げ入れるかだな?」
「足下に落ちているこの小さな石でいいわよね?」
アイラが石を拾って泉に投げた。
「別に何の変化もなかったわね?」

「ゴホゴホ」
その時、泉から苦しそうに咳き込んだ綺麗な女性が現れた。
「あなたのゴホ落とした石はこの金の石ですか? ゴホゴホそれともこの銀の石ですか? ゴホゴホゴホ」
「あ、あなたは誰ですか?」
「私はゴホこの泉を守る女神ですゴホゴホ」
「随分と苦しそうですけど?」
「この泉はゴホ猛毒の泉。私は運悪くゴホこの泉の担当になってしまったのゴホです」
やっぱり猛毒だったんだ。

「かわいそうに」
「正直者が百人現れたらゴホゴホ私はこの役目を終了することがゴホできるのです。あなたがゴホ落としたのはこの金の石ですか? それともゴホこの銀の石ですか?」
「いいえ、私が落としたのはただの石ですわ」
「何とゴホ正直者でしょう。あなたには金の石と銀の石をゴホ両方とも差し上げましょうゴホ」
金の石と銀の石をアイラに手渡した女神は猛毒の泉にスーッと沈んでいった。

「本物でしょうか?」
「多分本物だと思う」
「凄いじゃねえか! 金の石と銀の石だぞ! でも小さすぎだな」
「まさか女神が出てくるなんて思ってもいないもの、小さくても仕方ないわよ」
「だったら私に任せなって」
そう言うとサラは一抱えもある岩を泉に投げ入れた。

 暫くすると頭にたんこぶを作った女神が泉の中から現れた。
「このようなゴホ大きな物を投げ入れるのはゴホ大変危険ですのでゴホゴホ止めてください」
女神はそれだけ告げると再び泉に潜っていった。
「ちょっと待ったー!」
「何でしょうか?」
「自分の役目をはたさんかい!」
「仕方ゴホありませんね」
女神は自分の頭をさすりながら続けた。
「あなたが落としたのはゴホこの鉄の岩ですか? それともゴホアルミニームの岩ですか?」
「何で金と銀がないんじゃい!」
「個人的恨みゴホからラインナップをゴホゴホ変更しました」
「なんじゃいそれは!」
「あなたが落としたのはゴホこの鉄の岩ですか? それともアルミニームの岩ですか? ゴホ」
「私が落としたのは金の岩です」
「嘘つきなあなたにはゴホこのウランの岩をゴホ差し上げます」
「思いっきり危ねえだろうが!」
            
「欲張るからですよ」                          
「ある意味物凄く金になる気もしますが・・・・」
こうして一財産を築き損ねたサラは反省することもなく明るく生きていくのであった。
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