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第三章 魔王退治

第三十九話 ポチの弱点

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「キャー!」
「誰だ悲鳴を上げたには? 大丈夫か!?」
勇者様はそう言うと悲鳴が聞こえた隣の部屋に飛び込んでいった。かっこいい!

 隣の部屋にはアイラとサラそしてポチがいた。
「さっきの悲鳴ってアイラさん? サラさんじゃないよね?」
「麗華、どういう意味だ?」
「あ! いえ何となく」
「詳しく理由を聞こうじゃないか?」
「ごめんなさーい。じゃあ、サラさんなんですか?」
「いや違う」
「そうですよね? やっぱりアイラさんですよね?」
「麗華、やっぱり話がある」

 アイラはにっこり笑って衝撃的なことを口にした。
「さっきの悲鳴はポチよ」
「嘘でしょ!? メチャ可愛い悲鳴だったけど・・・・」
ポチはそっぽを向いて口笛を吹いている。猫って口笛が吹けたんだ。

「ポチって男の子だよね?」
私は恐る恐る聞いてみた。
「ああ、僕は確かに男だ。それがどうかしたかい?」
「さっきの悲鳴って女性の悲鳴だよね?」
「それは聞き違いだ。人間予期せぬことに遭遇した場合、一時的に周波数が700ヘルツにまで上がる時があるんだ。それを君たちが聞いて高い周波数の声だったと勘違いした可能性が考えられる。でも実際には高い声の部分は最初の一瞬だけだったと思うよ」
「え? え? え?」

 頭がこんがらがった私に勇者様が助け船を出す。
「どうして悲鳴を上げたんだ?」
「それは遭遇したくないものに遭遇してしまったからさ」
ん? もしかしてポチの苦手なものってこと?

「何に遭遇したの?」
「それは言えないね」
ポチの弱点を聞き出せるチャンスだったのに残念。

「あのタンスの隅に何かがいたんだ」
「サラ! 言っちゃ駄目だ!」
タンスの隅? まさか猫なのに鼠が怖いなんて落ちじゃないわよね。

「もしかしてポチって鼠が怖いの?」
「そんなはずがないよ。僕の格好を見て欲しいな」
それはそうだよね。

「でもさっき居たのって鼠だったような?」
アイラが疑いの目でポチを見る。
「違うね。もし疑うんなら魔法で鼠を出してごらんよ」
「わかったわ」
アイラが杖を振ると一匹の鼠が姿を現した。
「キャー!」
これは私の声。

「ね。大丈夫だろ?」
ポチが余裕の表情で鼠を見ている。やっぱり鼠じゃなかったんだ。
「おかしいわね?」
アイラは次々と鼠を出すがポチは一向に動じない。
「アイラさん、お願いだから出した鼠を消してから次の鼠を出して!」
足元にうじゃうじゃいる鼠を見て私が言った。私はどちらかというと鼠が苦手だ。可愛い気もするけど。

「麗華は鼠が怖いんだね?」
「別に怖くはないわよ」
「そうだね。鼠は国民的アイドルになったり世界的アイドルになったりしているからね。みんなの人気者だし」
「それってピカチュ〇やミッキー〇ウスのこと?」
「もちろんだ」

 その時事態を一変する出来事が起こった。
「あ、さっきの鼠よ!」
「キャー!!!」
「え? ポチどうして?」
「僕は白いハツカネズミのオスだけは苦手なんだ!」
何て限定的なの? 見ただけでオスかメスかがわかるなんて特殊能力よね。

 これ以降ハツカネズミのオスの写真を持ち歩くようになった私であった。今度私に変な服を着せようとしたらこれを見せてやるんだから。
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