どうして、ただの女子高生が魔王と戦うことになるわけ!?

小松広和

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第二章 旅立ち

第三十四話 大人になるためのレベル上げ

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 今の私は舞踏家レベル40。結構上がったよね。だってこのパーティーにいると、私が後方で『キャー』って言ってる間に強いモンスターを倒してくれるから自然とレベルが上がるんだよね。

 ちょっと私のステータスを把握しておく必要があるかも?
「ポチ。ステータスを確認したいから例の本を出して」
「わかった」
ポチがしっぽを振ると空中に一冊の本が現れた。

「ええっと、私のレベルと獲得スキルはっと。あれ? ねえポチ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだい麗華」
「舞踏家のスキルなんだけど、癒やしの舞と魔力向上な舞はわかるとして、このセクシーの舞って何?」
「セクシーな舞を舞うと雄のモンスターがメロメロになって攻撃してこなくなるんだ」
「ああ、例の雌が怒って強くなるパターンよね」
「いや、セクシーな舞は麗華の色気に嫉妬した雌だけが強くなるんだ。麗華なら絶対大丈夫さ」
「どういう意味よ!」

 私がページを捲るとまたまた怪しげな記述が出てきた。
「ポチ、この裸の舞って何よ?」
「裸の舞を舞うと着ている服が徐々に消えていくんだ。雄雌共に唖然として攻撃してこなくなる。まさにパーフェクトな舞だ。試しに使ってみるかい?」
「絶対に使いません!」

 碌なスキルがないよね。でもレベル40なんだからジョブチェンジできるよね。
「この辺りでジョブチェンジできる所はないの?」
「残念だがここら一帯は教会がないんだ」
「ええー!」
私って何か運がないよね。

「教会がなくてもジョブチェンジする方法があるわよ」
さっきから私とポチの会話を笑いながら聞いていたアイラが声を掛けてきた。
「本当ですか?」
「本当よ。宿屋でジョブチェンジができる出張サービスよ」

 異世界も便利な時代になってるのね。これで私もジョブチェンジができる。次の職業は何がいいかな? 
「どんな職業があるの」
「それならこの本にジョブチェンジ可能な職業一覧が出てるよ」
ポチがにっこりと笑って教えてくれた。猫って笑うんだ。

 私が言われたところを見ると十種類の職業が書かれている。
「えっと、盗賊・マフィア、蚊、荷物持ち、ホラ吹き、見習い悪魔、魔法使い、キャバ嬢、政治家、死刑囚、変なのばかりだわ。ていうか蚊て何よ!?」
「人間サイズの蚊さ。モンスターの血を吸って痒がらせることができるんだ。最も血を吸ってるときに叩かれたら終わりだけどね」
絶対に選びたくない職業だわ。やっぱり魔法使いかな?

「アイラさん。ジョブチェンジできる出張サービスってどうすればいいんですか?」
「簡単よ。朝の4時44分に北北東に向かって十秒以内になりたい職業を三回言うの。そうすればショッキングピンクの竜が現れるわ。その竜が願いを叶えてくれるってわけ。流れ星に願い事を言うより簡単よ」
「凄いです。でもショッキングピンクの竜って異世界っぽくないですよね」
「そんなことないわ。ピンクは異世界カラーなのよ」
「そうだったんですか?」

 次の朝、私は早速試してみることにした。目覚ましを十分前にセットして。でも5時前は朝早すぎだよ。
 いよいよ4時44分。
「魔法使いになりたい。魔法使いになりたい。魔法使いになりたい」
結果、何の音沙汰もなし。はっきりと発音できなかったのかな? ちょっと早口になっちゃったし。

 そして一週間が過ぎた。
「どうしてダメなのかな? もしかして時間がずれてるとか。今日こそは絶対に成功させてみせるんだから」
「ふぁ~。あれ? 麗華ちゃん、朝早いね」
「アイラさん、起こしちゃいました?」
「どうしたの? こんなに早起きして」
「今日こそはジョブチェンジできるように頑張りますね」
「え? まさか本当にやってたの?」

「アイラさん。本当にってどういう意味ですか?」
アイラはそっと部屋から出ようと扉に向かう。
「私、朝の散歩に行ってくるね」
「ちょっと話があります。こちらに来てください」
「麗華ちゃん、何か声が怖いんだけど~」
こうして純粋無垢な私は大人になるための経験値を少し上げることができたのであった。
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