どうして、ただの女子高生が魔王と戦うことになるわけ!?

小松広和

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第一章 私は絶滅危惧種

第十七話 ポチの本性

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 私がお風呂からあがって部屋の前に来るとドアが少し開いていて中から明かりが漏れていた。
「もう、ポチったら、また私の部屋に無断で入ってるのね」
私はポチを怒鳴る準備をして部屋のドアを開けると、そこにポチの姿はなかった。
「あれ? おかしいわね。いないのかしら?」

 部屋に入ると私はとんでもないものを発見してしまった。机の上にポチがいつも見ている本が浮かんでいるのだ。
「これって私のデータが載っている本だよね」
私は誰に言うともなく呟いた。そして何気にその本を眺めると、思った以上に様々なことが書かれているみたいだ。

 この本ってなぜだかポチは私に見せてくれないのよね。ちょっとくらい見たっていいか。私のデータなんだし。私はそっと本に触れると恐る恐るページをめくってみた。
『雨宮麗華16歳。女子高生。モンスターの知識なし』
私のデータってこれか。
『力が弱く臆病者。基本何もできない」
何よこれ? これってどういうこと?

『取得魔法。悪臭、ヘヤーブラッシュ、クロッシングフラッシュ』
改めて見るとろくな魔法を覚えてないよね。
『職業履歴。小市民レベル10⇒バニーガールレベル2』
ふー。これもため息が出るよね。どうして私ってこんなに運がないのかな? 不運を嘆いても仕方ないんだけどね。

『取得希望職種。セクシー女優、チアガール、メイド』
ちょっと待って! 私こんな希望を言った覚えはないわよ!

 私が本をポンと叩くと偶然終わりのページが開いた。
『今日、通算93人目の少女をスカウトとした。麗華というそうだ」
これってもしかしてポチの日記?
『基本何もできそうにない子だ。まあ可愛いからこいつでいいか」
何を書いてるのよ。

『中々レベルが上がらない。ていうかスライムに負ける人物を始めて見た。前途多難だが次を見つけに行くのも面倒なので、もう少し様子を見ることにしよう』
信じらんない! ポチったらこんなことを思ってたの?

『麗華に魔法を覚えさせることに成功した。予定通りクロッシングフラッシュを覚えてくれた。わざわざ祠に連れて行った甲斐があったと言うものだ。まさか麗華も祠の巻物がみんな同じ内容だったとは気付かなかったみたいだし、後は麗華がこの魔法を使えばムフフフ』
ええ! この魔法って計画的に覚えさせられてたの? もうポチったら許さないんだから!

『麗華が職業を替えたいと言い出した。これはチャンスだ。何とかセクシー路線にしたいものだ。よし、教会のお坊さんに頼んでバニーガールになるよう仕組んでもらおう』
ポ~チ~!!! 今までの私の不運て全部ポチの悪だくみだったってこと?

 ガチャ。何も知らないポチが部屋に入ってきた。
「麗華。もうお風呂あがったのかい?」
「ちょっと、お話があるわ」
「どうしたんだい? いつになく低い声で」
ポチは私の目の前にある開いたままの本に気付いた。

「もしかして‥‥その本を‥‥読んだの‥‥かい?」
「読んだわ。最後の方のページもね」
「あ! 忘れ物をしたから取ってくるよ」
「逃がさないうわよ!!!」
私はポチの首をガシッ掴んで持ち上げた。
「そ、それは違うんだ。だからちょっと待ってくれ。麗華! それはモンスターと戦うときに使う短剣だよね! どうしてそれを持つんだい? 猫殺しは重罪だよ。この世界ではそうなんだ。本当だって! ひぇーごめんなさい!!!」
そしてこの後、ポチの毛が元通りに生えそろうまで半年を要するのであった。
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