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第二章
第90話:意地っ張りなアーニャ4
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夕暮れ時になり、魔草ラフレシアと魔封狼の討伐を終えた冒険者たちがヘロヘロになって帰ってくると、西門の前で仁王立ちするアーニャに遭遇してしまった。
「遅すぎるわよ! こんな時間になるまで、どこをほっつき歩いてたの!」
門限に厳しい母親のように怒るアーニャは、破壊神と呼ばれるに相応しい憤怒の形相をしている。めちゃくちゃ怖かったじゃない! と、八つ当たりをしたいだけであり、冒険者たちは魔封狼の大群に出くわしたときよりも怯えていた。
誰もが触れたくない破壊神アーニャの逆鱗に委縮するなか、一人のオジさんが近づいていく。
頭をヘコヘコさせる低姿勢で、両手でスリスリとゴマすりをしながら様子を窺っているが、これでも冒険者ギルドのギルドマスターである。
「我々は大急ぎで戻って参りました。予想以上にラフレシアの根が地中深くにありまして、処理に時間がかかってしまったのです。火魔法を使える魔導師が懸命に……」
「言い訳なんていらないわ! こんなにも門の前で立たされるとは聞いてないもの! 途中から魔物も来ないから、暇すぎてお腹がペコペコよ! 私はもう帰るから、後はそっちで処理しなさい」
言うだけ言ってプンスコと帰り始めるアーニャは、足を地面に叩きつけるように歩き、見るからに怒りが治まっていなかった。これほどアーニャが怒りを露わにしたのは、この街では初めてのこと。疲労が蓄積していたとはいえ、全員で走って戻ってくるべきだったと、誰もが考えるのだった。
そして、アーニャの姿が見えなくなると、冒険者たちは安堵のため息を吐いた。
「アーニャさん、めちゃくちゃキレてんじゃん。でも、今回は仕方ねえよな。いくら広範囲だったとはいえ、十分すぎるほどの豊富なアイテムを用意してもらっていたんだ」
「確かに、あの火炎爆弾はすごかったからな。ラフレシアの根っこを火が追いかけるように燃やし尽くしてたぜ。あれ、アーニャさんが作ってくれたんだろ?」
「その情報は本当ですか? 破壊神らしいアイテムでしたが、あそこまで高度な錬金術を作れるか疑問です。他の方が作ったアイテムでは?」
西門前でザワザワと話し合う冒険者たちに、ギルドマスターは両手をパンッパンッと叩いて、会話を中断させる。
「冒険者たちよ、いったん落ち着いてくれ。とにかく、今日はご苦労だった。報酬は後日、ギルドの受付で申請してほしい。あとはまあ、破壊神の話はけっこうだが、くれぐれも本人の耳に入れて、機嫌を損ねるなよ。そこの魔封狼みたいになりたくなければな」
ギルドマスターの言葉を聞いて確認すると、冒険者たちの血の気が引いてしまう。
冒険者たちが見逃した魔封狼は、合計で三体。そのすべてが不可思議な現象で討伐されていた。魔法が効かないはずの魔封狼が、物理攻撃ではなく、魔法攻撃で討伐された形跡しかないのである。
ちなみに、大急ぎでジルが作ったクリスタルをすべて消費して、アーニャが三体の魔封狼を討伐している。綱渡りの防衛戦にハラハラドキドキしていたため、怒りのゲージが限界点を突破したのだ。
背筋がゾッする光景を見た冒険者の一人が、恐る恐るギルドマスターに尋ねる。
「ぎ、ギルドマスターは、魔封狼を魔法で討伐することができますか?」
「バカ野郎、こんな真似ができたら破壊神にヘコヘコしてねえよ。この中で一番ビビってるのは、会話しなければならない俺だからな。一応、俺は魔導師としてAランク冒険者に上り詰め、世界屈指の火魔法の使い手と呼ばれていたんだぞ。よく見てみろ、魔封狼が溶けてるぜ。俺のメンタルはとっくの昔に溶けてるけどな」
破壊神の絶対的な力を表しているような光景に、ギルドマスターは愚痴をこぼした。
誰よりも火魔法に自信のあった彼ができないことを、アーニャはやってのけるのだ。強者だからこそ、その恐ろしさが手に取るようにわかってしまう。
一国の軍事力を凌駕すると言われるアーニャの力を、絶対に軽視してはならない。幸いにも、アーニャは無闇に力を誇示するタイプではなく、敵対するものに無慈悲なタイプ。刺激して敵対しない限りは、心強い味方になってくれる。
頭を下げるくらいで味方にできるなら、いくらでも頭を下げようと思うギルドマスターだった。
「ちょっくら走って兵士を呼んでくる。それまでお前らは、ここで待機しててくれ。はぁ~、ルーナちゃんがいてくれたら、もっと楽にできるんだけどなー」
肩を落としたギルドマスターが駆けていく。ルーナちゃんが恋しい、そう思いながら。
「遅すぎるわよ! こんな時間になるまで、どこをほっつき歩いてたの!」
門限に厳しい母親のように怒るアーニャは、破壊神と呼ばれるに相応しい憤怒の形相をしている。めちゃくちゃ怖かったじゃない! と、八つ当たりをしたいだけであり、冒険者たちは魔封狼の大群に出くわしたときよりも怯えていた。
誰もが触れたくない破壊神アーニャの逆鱗に委縮するなか、一人のオジさんが近づいていく。
頭をヘコヘコさせる低姿勢で、両手でスリスリとゴマすりをしながら様子を窺っているが、これでも冒険者ギルドのギルドマスターである。
「我々は大急ぎで戻って参りました。予想以上にラフレシアの根が地中深くにありまして、処理に時間がかかってしまったのです。火魔法を使える魔導師が懸命に……」
「言い訳なんていらないわ! こんなにも門の前で立たされるとは聞いてないもの! 途中から魔物も来ないから、暇すぎてお腹がペコペコよ! 私はもう帰るから、後はそっちで処理しなさい」
言うだけ言ってプンスコと帰り始めるアーニャは、足を地面に叩きつけるように歩き、見るからに怒りが治まっていなかった。これほどアーニャが怒りを露わにしたのは、この街では初めてのこと。疲労が蓄積していたとはいえ、全員で走って戻ってくるべきだったと、誰もが考えるのだった。
そして、アーニャの姿が見えなくなると、冒険者たちは安堵のため息を吐いた。
「アーニャさん、めちゃくちゃキレてんじゃん。でも、今回は仕方ねえよな。いくら広範囲だったとはいえ、十分すぎるほどの豊富なアイテムを用意してもらっていたんだ」
「確かに、あの火炎爆弾はすごかったからな。ラフレシアの根っこを火が追いかけるように燃やし尽くしてたぜ。あれ、アーニャさんが作ってくれたんだろ?」
「その情報は本当ですか? 破壊神らしいアイテムでしたが、あそこまで高度な錬金術を作れるか疑問です。他の方が作ったアイテムでは?」
西門前でザワザワと話し合う冒険者たちに、ギルドマスターは両手をパンッパンッと叩いて、会話を中断させる。
「冒険者たちよ、いったん落ち着いてくれ。とにかく、今日はご苦労だった。報酬は後日、ギルドの受付で申請してほしい。あとはまあ、破壊神の話はけっこうだが、くれぐれも本人の耳に入れて、機嫌を損ねるなよ。そこの魔封狼みたいになりたくなければな」
ギルドマスターの言葉を聞いて確認すると、冒険者たちの血の気が引いてしまう。
冒険者たちが見逃した魔封狼は、合計で三体。そのすべてが不可思議な現象で討伐されていた。魔法が効かないはずの魔封狼が、物理攻撃ではなく、魔法攻撃で討伐された形跡しかないのである。
ちなみに、大急ぎでジルが作ったクリスタルをすべて消費して、アーニャが三体の魔封狼を討伐している。綱渡りの防衛戦にハラハラドキドキしていたため、怒りのゲージが限界点を突破したのだ。
背筋がゾッする光景を見た冒険者の一人が、恐る恐るギルドマスターに尋ねる。
「ぎ、ギルドマスターは、魔封狼を魔法で討伐することができますか?」
「バカ野郎、こんな真似ができたら破壊神にヘコヘコしてねえよ。この中で一番ビビってるのは、会話しなければならない俺だからな。一応、俺は魔導師としてAランク冒険者に上り詰め、世界屈指の火魔法の使い手と呼ばれていたんだぞ。よく見てみろ、魔封狼が溶けてるぜ。俺のメンタルはとっくの昔に溶けてるけどな」
破壊神の絶対的な力を表しているような光景に、ギルドマスターは愚痴をこぼした。
誰よりも火魔法に自信のあった彼ができないことを、アーニャはやってのけるのだ。強者だからこそ、その恐ろしさが手に取るようにわかってしまう。
一国の軍事力を凌駕すると言われるアーニャの力を、絶対に軽視してはならない。幸いにも、アーニャは無闇に力を誇示するタイプではなく、敵対するものに無慈悲なタイプ。刺激して敵対しない限りは、心強い味方になってくれる。
頭を下げるくらいで味方にできるなら、いくらでも頭を下げようと思うギルドマスターだった。
「ちょっくら走って兵士を呼んでくる。それまでお前らは、ここで待機しててくれ。はぁ~、ルーナちゃんがいてくれたら、もっと楽にできるんだけどなー」
肩を落としたギルドマスターが駆けていく。ルーナちゃんが恋しい、そう思いながら。
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