【完結】ちびっこ錬金術師は愛される

あろえ

文字の大きさ
77 / 99
第二章

第77話:ポーチ作り2

しおりを挟む
 魔封狼の革を持ったジルがアーニャの作業部屋にやってくると、椅子に座ってペンを走らせるアーニャがいた。

「アーニャお姉ちゃん。お願いを聞いてもらってもいい?」

「どうしたの。随分と珍しいものを持ってるじゃない」

「うーんとね、ルーナお姉ちゃんと一緒に、これでエリスお姉ちゃんのポーチを作りたいの。でも、なめす方法がわからないから、アーニャお姉ちゃんに教えてもらおうと思って」

「随分と手の込んだことをするのね。店で買ってきた方が早いのに」

 ドライな性格のアーニャである。自分では絶対にやろうと思わない面倒くさそうな作業に、嫌そうな顔をしていた。

「悪いけど、革をなめした経験がないから知らないわよ。私が錬金術に関わってる範囲は、ルーナの治療薬に必要なことだけなの」

 錬金術とまとめられるものの、色々と幅が広い。魔石を使った便利製品を開発する者もいれば、ポーション作りや攻撃アイテムを中心に作る者もいる。革をなめす錬金術師は、素材や魔石を組み合わせてポーチやアクセサリーを作る者だけで、細かい作業が苦手なアーニャは関わろうとも思わなかった。

「えーっ! どうしよう、せっかく買ってきたのに」

 しかし、アーニャならなんでも知っていると思っていたジルは、ガッカリして肩を落とす。ルーナにお願いされたことができないと思い、絶望に満ちた表情をしていた。

「そんなに落ち込まなくてもいいじゃないの。別にできないとは言ってないわ。ジルが持ってるのは、魔封狼の革でしょ。それなら、私のマジックポーチも同じものが使われているから、参考にしてなめせばいいのよ。難しいって話は聞かないし、単純な作業に決まってるわ」

 ジェム作りも簡単にこなしたジルなら、それくらいはやれるだろうと、アーニャは思っている。実際に簡単なアイテムなら、アーニャは作り方を知らなくても再現できるから。錬金術をやり続けることで魔力やマナに敏感になり、だいたいのことはわかるようになるのだ。

 自分よりも優れた錬金術のセンスを持つジルにとっては、簡単な作業になるだろう。もしかしたら、マジックポーチを再現することだって……。

「アーニャお姉ちゃんが言うなら、きっと大丈夫だね」

 何も知らないジルは、非常に単純だった。アーニャに期待をされていることに、まったく気づいていない。

「この前ブーツ作りを見学した時に、魔力を使って色々やってたでしょ。あれを参考にすればいいんじゃないかしら。何か必要な材料があるなら、この部屋にあるものを勝手に使ってもいいわよ」

 参考になりそうな作業ってあったっけ? とジルが考えるのも、無理はない。ブーツのサイズを調整してもらっただけで、一から作るところは見ていないのだから。

 ――最後に属性付与をしていたけど、あのことを言ってるのかな。アーニャお姉ちゃんが言うんだから、あの作業にきっとヒントがあるんだと思う。

 互いに過剰なほど信頼と期待を寄せている二人だった。

 椅子から立ち上がったアーニャは、自分のマジックポーチをジルに手渡す。

「見られて恥ずかしいものは入れてないけど、ポーチの中は触らないでちょうだい。グチャグチャにされると、どこに何があるのかわからなくなるから。マジックポーチは整理が大変なのよ」

 小さなポーチの中で空間が歪んでいるため、何がどこにあるのか目で確認することはできない。手の感覚だけで取り出す必要があり、弱体化したアーニャは戦闘でも使うので、中がグチャグチャになると命に関わってしまう可能性がある。

「ポーチの中に手を入れないでおくね」

「そうね、それなら大丈夫だと思うわ。後、錬金術の作業台なら使ってもいいわよ。夜まで使う予定はないの」

「じゃあ、アーニャお姉ちゃんの作業台を借りようかな。一応、ルーナお姉ちゃんに報告だけしてくる」

「私はどっちでもいいわ。それより、エリスに内緒にするなら、ちゃんと気を付けなさいよ」

「はーい。ルーナお姉ちゃんとも約束したから、絶対大丈夫ー」

 そう言って作業部屋を後にするジルを見送ったアーニャは、心の中がモヤモヤとするのだった。

「本当に大丈夫かしら。エリスは周りをよく見てるし、すぐにバレそうな気がするけど。うまく隠せるのか、めちゃくちゃ気になるわ……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...