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第一章
第11話:ポーション作成に励む
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一通り妄想に浸ったことで、ポーション作りを大いに楽しんだジルは、キッチンのような備え付けのコンロを見つけた。子供の遊びモードから料理マニアモードに代わり、小鍋に真水を入れて、薬草を煮始めている。
コトコトと煮込まれた薬草はクタクタになり、緑色のエキスが真水に染み出していた。
一時間ほど煮込んでも変化はないので、鍋のクタクタの薬草を箸でつまみ、ポイッとゴミ箱に捨てる。まだ薬草の繊維が残るものの、しっかりと薬草のエキスが染み出した液体が誕生。それを耐熱皿へ移し替えると、モワモワと湯気が立ち昇る。
――やった! ポーションができ……あれ? これはポーションじゃなくて、ただの薬草スープ? どうなんだろう。う~ん、とりあえず、冷ましてから飲んでみようっと。
湯気がなくなるまでジッと待ち続けたジルは、もういいかなと思うところで、耐熱皿をチョンチョンッと指で触って、熱さを確認。十分に持てる温度まで下がっていることがわかると、耐熱皿を持ち上げた。
初めて作ったポーション(?)に、フーフーと息を吹きかけ、ズズズッと喉の奥へ流し込む。が、すぐに顔を歪めてしまう。
「うぇ……、ポーションじゃない」
薬草を煮詰めたスープは、苦い。野草の不味いところだけを濃縮したような味で、もう二度と飲みたくないと思うほどには不味かった。
「僕が飲んでたポーションは、もっと飲みやすかったなー。飲みやすくした青汁みたいな感じで……」
ポーション自体はおいしいものではないが……、飲めるような味ではある。品質やランクによっても飲みやすさは異なるけれど、ジルは生きるために毎日飲んでいたこともあって、品質が悪くても普通に飲めるくらいの舌になっている。
そのため、飲めない=ポーションではない、という図式が成り立っているのだ。まさかのポーションソムリエ的な立ち位置であり、なおかつ正しい判断をしていた。
失敗した薬草スープの処分に迷っていると、コンコンッと扉がノックされ、昼ごはんを持ってきたエリスが入ってきた。今朝買ったロールパンにハムとレタスを挟み、マヨネーズを塗っただけのお手軽ランチになる。
「あっ、それ不味いから飲まない方がいいよ」
経験者は語る! 耐熱皿に入った薬草の煮汁を見て、パッと理解してしまうほどに!
「……もう飲んじゃった」
ベー、と出したジルの舌は、抹茶でも飲んだように緑色になっていた。それを見たエリスは、ポーション作りに失敗した草っぽい味が口に蘇るようで、嫌悪感を抱く。
「見せなくてもいいから。それと、緑色の液体はだいたいポーションじゃないよ。私が作ったのは緑色から変わらなかったけど、一応自分が作ったやつは全部飲んだもん。もしかしたらって、淡い期待を抱いてたんだけどね」
遠い過去を思い出しながら、エリスはジルの隣に腰を下ろした。ジルに昼ごはんを手渡し、二人で食べ始める。
「ねえ、エリスお姉ちゃん。ポーションって、何色になるの?」
「これで作れるのは、薄い青色だね。種類によっても変わるけど、傷を治すようなものは青色が多くて、状態異常を治すものは黄色のことが多いかな。ジルはどっちも飲んでたけど、覚えてないの?」
「うん。寝込んでた時はあまり目が見えてなくて、ぼやーっとした光景しか覚えてないの。だんだん頭が混乱してきちゃって、目を閉じることが多かったかな。エリスお姉ちゃんの声はわかってたけどね」
「それで目が開いてる時間が少なかったのね。調子がいいと目が開けられるのかなって、勝手に思ってたよ」
「自分でも最後らへんは覚えてないよ。頭がボーッとすることが多かったから」
そうだろうなーと思いつつも、エリスは口にしなかった。
呪いが強まる周期でもあるように、ジルの呪いは急激に侵蝕が進む場合が多かったのだ。最近は侵蝕スピードが速まり、何度も呼吸が止まることすらあって、話しかけても意識が戻らないこともあった。ポーションが飲めない日も出てきて、ろくに治療もできずに両手を重ねて神様に祈るぐらいしかできなかったのだ。
弟の命だけは助けてほしい、と。
アーニャがエリクサーを譲ってくれなかったら、今頃どうなっていたかわからない。たった一日遅れただけでも、命が助からない可能性もあっただろう。
ただ、今頃大変だったことを本人に話す必要はない。ジルが元気に生きてくれたらそれでいいと、エリスは心から思っていた。
「寝込んでいたときのことを話すのは、やめよっか。それで、午前中は頑張ってたみたいだけど、どんな感じ? ポーションは作れそう?」
「全然わかんなーい」
でしょうね、と言わんばかりにエリスは頷く。途中まで見ていたとは、さすがに言わないが。
「私が見てきた限りだと、早くても五日くらいはかかるかな。たまにアーニャさんみたいな天才肌の人が、すぐに作っちゃうんだけどね」
「……アーニャお姉ちゃん、教えてくれないかな」
「コラッ、試験の意味がなくなるでしょ。あと、アーニャさんの邪魔をしちゃダメ。私たちはお礼をする側なんだからね」
「でも、僕はお金持ってないし……」
「お金だけがすべてってわけじゃないの。それより、今は試験に集中して。同じ錬金術師になれたら、手伝えることもあるかもしれないから」
「そっか。うん、僕、がんばる!」
他愛のない会話をしながら、二人で昼ごはんを食べ終わると、すぐにエリスは退出した。錬金術のセンスがないとは思いつつも、弟の挑戦を邪魔するわけにはいかない。
もしかしたら、奇跡が起こるかもしれない。急に才能に目覚めるかもしれない。たまたまうまくいって、ポーションができるかもしれない。
ジルの錬金術の腕前は自分以下だと思って信じていないが、奇跡は信じる姉である!
「ポーションは見慣れてるだろうから必要ないと思ってたけど、見本品は持っていってあげようかな」
そう思ったエリスは、薄い青色のHP回復ポーション(小)を取りに、受付カウンターへ向かうのだった。
コトコトと煮込まれた薬草はクタクタになり、緑色のエキスが真水に染み出していた。
一時間ほど煮込んでも変化はないので、鍋のクタクタの薬草を箸でつまみ、ポイッとゴミ箱に捨てる。まだ薬草の繊維が残るものの、しっかりと薬草のエキスが染み出した液体が誕生。それを耐熱皿へ移し替えると、モワモワと湯気が立ち昇る。
――やった! ポーションができ……あれ? これはポーションじゃなくて、ただの薬草スープ? どうなんだろう。う~ん、とりあえず、冷ましてから飲んでみようっと。
湯気がなくなるまでジッと待ち続けたジルは、もういいかなと思うところで、耐熱皿をチョンチョンッと指で触って、熱さを確認。十分に持てる温度まで下がっていることがわかると、耐熱皿を持ち上げた。
初めて作ったポーション(?)に、フーフーと息を吹きかけ、ズズズッと喉の奥へ流し込む。が、すぐに顔を歪めてしまう。
「うぇ……、ポーションじゃない」
薬草を煮詰めたスープは、苦い。野草の不味いところだけを濃縮したような味で、もう二度と飲みたくないと思うほどには不味かった。
「僕が飲んでたポーションは、もっと飲みやすかったなー。飲みやすくした青汁みたいな感じで……」
ポーション自体はおいしいものではないが……、飲めるような味ではある。品質やランクによっても飲みやすさは異なるけれど、ジルは生きるために毎日飲んでいたこともあって、品質が悪くても普通に飲めるくらいの舌になっている。
そのため、飲めない=ポーションではない、という図式が成り立っているのだ。まさかのポーションソムリエ的な立ち位置であり、なおかつ正しい判断をしていた。
失敗した薬草スープの処分に迷っていると、コンコンッと扉がノックされ、昼ごはんを持ってきたエリスが入ってきた。今朝買ったロールパンにハムとレタスを挟み、マヨネーズを塗っただけのお手軽ランチになる。
「あっ、それ不味いから飲まない方がいいよ」
経験者は語る! 耐熱皿に入った薬草の煮汁を見て、パッと理解してしまうほどに!
「……もう飲んじゃった」
ベー、と出したジルの舌は、抹茶でも飲んだように緑色になっていた。それを見たエリスは、ポーション作りに失敗した草っぽい味が口に蘇るようで、嫌悪感を抱く。
「見せなくてもいいから。それと、緑色の液体はだいたいポーションじゃないよ。私が作ったのは緑色から変わらなかったけど、一応自分が作ったやつは全部飲んだもん。もしかしたらって、淡い期待を抱いてたんだけどね」
遠い過去を思い出しながら、エリスはジルの隣に腰を下ろした。ジルに昼ごはんを手渡し、二人で食べ始める。
「ねえ、エリスお姉ちゃん。ポーションって、何色になるの?」
「これで作れるのは、薄い青色だね。種類によっても変わるけど、傷を治すようなものは青色が多くて、状態異常を治すものは黄色のことが多いかな。ジルはどっちも飲んでたけど、覚えてないの?」
「うん。寝込んでた時はあまり目が見えてなくて、ぼやーっとした光景しか覚えてないの。だんだん頭が混乱してきちゃって、目を閉じることが多かったかな。エリスお姉ちゃんの声はわかってたけどね」
「それで目が開いてる時間が少なかったのね。調子がいいと目が開けられるのかなって、勝手に思ってたよ」
「自分でも最後らへんは覚えてないよ。頭がボーッとすることが多かったから」
そうだろうなーと思いつつも、エリスは口にしなかった。
呪いが強まる周期でもあるように、ジルの呪いは急激に侵蝕が進む場合が多かったのだ。最近は侵蝕スピードが速まり、何度も呼吸が止まることすらあって、話しかけても意識が戻らないこともあった。ポーションが飲めない日も出てきて、ろくに治療もできずに両手を重ねて神様に祈るぐらいしかできなかったのだ。
弟の命だけは助けてほしい、と。
アーニャがエリクサーを譲ってくれなかったら、今頃どうなっていたかわからない。たった一日遅れただけでも、命が助からない可能性もあっただろう。
ただ、今頃大変だったことを本人に話す必要はない。ジルが元気に生きてくれたらそれでいいと、エリスは心から思っていた。
「寝込んでいたときのことを話すのは、やめよっか。それで、午前中は頑張ってたみたいだけど、どんな感じ? ポーションは作れそう?」
「全然わかんなーい」
でしょうね、と言わんばかりにエリスは頷く。途中まで見ていたとは、さすがに言わないが。
「私が見てきた限りだと、早くても五日くらいはかかるかな。たまにアーニャさんみたいな天才肌の人が、すぐに作っちゃうんだけどね」
「……アーニャお姉ちゃん、教えてくれないかな」
「コラッ、試験の意味がなくなるでしょ。あと、アーニャさんの邪魔をしちゃダメ。私たちはお礼をする側なんだからね」
「でも、僕はお金持ってないし……」
「お金だけがすべてってわけじゃないの。それより、今は試験に集中して。同じ錬金術師になれたら、手伝えることもあるかもしれないから」
「そっか。うん、僕、がんばる!」
他愛のない会話をしながら、二人で昼ごはんを食べ終わると、すぐにエリスは退出した。錬金術のセンスがないとは思いつつも、弟の挑戦を邪魔するわけにはいかない。
もしかしたら、奇跡が起こるかもしれない。急に才能に目覚めるかもしれない。たまたまうまくいって、ポーションができるかもしれない。
ジルの錬金術の腕前は自分以下だと思って信じていないが、奇跡は信じる姉である!
「ポーションは見慣れてるだろうから必要ないと思ってたけど、見本品は持っていってあげようかな」
そう思ったエリスは、薄い青色のHP回復ポーション(小)を取りに、受付カウンターへ向かうのだった。
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