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第六章:BBQ

第52話:BBQ4

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 切り分けた肉をニンニク醤油と焼き肉のたれに漬け込んでいると、エマとシルフくんがホウオウさんを連れてきてくれた。

 祀られている妖精として、負の影響を受けないように貢ぎ物には細心の注意を払っているホウオウさんだが、今回のBBQをアッサリ受け入れてくれたそうだ。

 BBQを楽しみにしすぎた私と、妖精を崇拝する意識の高いノエルさんが肉を焼くため、問題は生まれないらしい。

 そこまでウキウキしていたことを知られるのは、さすがに恥ずかしい気もするが、すでにそういう人間だと思われているだろう。

 害のある人間だと思われていないのであれば、深く気にしないことにした。

 どちらかといえば、お父さんとホウオウさんとノエルさんの大人の話し合い方が気になっているが。

「娘がお世話になっております。私自身、ファンダール王国の勇者召喚で、火の妖精様にはお世話になりました」
「胡桃には、こちらが世話になっただけのような気もするが……。そうか、胡桃の父親が勇者だったのか。あの魔法に優れたエルフの母親まで一緒だったとはな」
「お、お会いできて光栄です。まさか火の妖精様にお会いできるとは思っていませんでした」

 私とエマの親が、担任の先生と三者面談をするような雰囲気だ。

 このまま大人の話し合いが終わるのを待つと長くなりそうなので、先にBBQを始めるとしよう。

 子供組がウズウズとしているし、今回は私も我慢できそうにないから。

 早速、BBQを始めるために、焼き肉のたれに漬け込んでおいた肉を、次々に網の上に載せていく。

 ジューッ ジューッ ジューッ

 まずは火の通りにくい野菜から……と、BBQの熟練者は言うかもしれない。

 しかし、私は自分で捕ってきた肉の方が早く食べたい!

「おいしそう」
「いい香りだね~」

 ましてや、エマとシルフくんという子供組が存在する限り、肉は争奪戦になる恐れがあるのだ。

 いっぱい焼かないと食べられない。BBQの肉とは、熾烈な争いを繰り広げられるものなのである。

 まあ、食べきれないほどの肉を確保しているから、ゆっくりやればいいんだけど……空腹を我慢できそうにはなかった。

 ぐぅ~

 今日は朝から魔物の狩りに出かけているし、肉に漬け込んでおいた焼き肉のたれが網から炭の上に滴り落ちて、おいしそうな香りが周囲に広がっている。

 その香りを堪能しつつ、肉をひっくり返して、しっかりと焼けてきたところを確認した後、私は焼けた牛肉を箸でつまんだ。

「こっちの牛肉は大丈夫だよ。豚肉と鶏肉は、各自でもう少し焼いてから食べるように」
「うん」
「わかったよ」

 BBQのために結束した私たちは、みんなで牛肉を箸でつまみ、口に入れる。

「「「うーん……おいしい……」」」

 程よい弾力のある赤身肉に、焼き肉のたれがよく合う。炭で焼かれていることもあって、とても芳ばしい味わいになっていた。

 自分で狩った魔物を炭で焼き、開放的な外の空間でみんなと一緒に食べる。

「これがBBQか……」

 なんて最高な時間なんだろう。異世界に来るようになってから、私の人生にもリア充という言葉が生まれたよ。

「グルルルル」
「あっ、ちょっと待っててね。アルくんのは、別の鉄板で焼いているから」

 体の大きいアルくんの分まで肉を焼こうと思うと、とてもではないが、網の場所を占領してしまう。

 人間用の小さな肉をチマチマと食べさせるのも味気ないので、焼き肉のたれに漬け込んだステーキ肉を鉄板にドーンッと置いて、焼いていた。

 それをひっくり返して、両面にこんがりと焼き目を付けた後、皿の上に載せてアルくんに差し出す。

「熱いから気をつけて食べてね。肉はまだまだいっぱい出せるから、味わって食べても大丈夫だよ」
「グルルル」

 焼いた肉をクチバシで突いたアルくんは、大丈夫な温度だと思ったのか、パクリッと口にする。

 相変わらずムスッとした顔ではあるものの、じっくり噛み締めて、味わうように食べていた。

「おいしい?」
「グルルル」
「じゃあ、次はニンニク醬油に漬け込んだ肉にするねー」

 なんとなくアルくんと会話が成立しているような気がする私は、鉄板にステーキ肉を載せる。

 普段はエマが甘いものを中心に食べさせているから、たまにはこういう食事もおいしく思ってくれるだろう。

 肉が焼けるところをジッと見つめて待っているので、嫌いじゃないんだと思った。

 ただ、私も肉が食べたい。

 なんといっても、今は大人たちが話し合いでいないため、肉をガッツリと食べられるボーナスステージみたいなものなのである。

 このチャンスを逃してはならない。私は今日だけ童心に帰り、肉をいっぱい食らいつくしたい!

「エマ、シルフくん。お父さんたちが来るまでは、肉を焼き続けるよ。それまでは自由時間だから」
「わかった。今は肉のことだけ考える」
「ボクは鳥肉多めで食べるよ」

 こうして、私たちはお父さんが来るまでの間、肉を食べることに集中するのであった。

「グルルルル」

 もちろん、アルくんも一緒に、である。
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