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第四章:火の妖精と王都観光
第44話:写真
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王都の観光を終えて、日本に帰還した翌日。
どうしても休日のうちにやっておきたいことがあり、私は朝から慌ただしく動いていた。
「よし、デジカメの充電完了っと」
デカ小豆のどら焼きを売り込むポスター用の写真を撮っておきたいのである。
そのため、日当たりの良い窓際に机と椅子を並べて、朝ごはんの代わりにどら焼きを置き、エマとノエルさんにモデルをお願いしていた。
「お腹すいた」
「エマ、まだ食べないでね。カメラのセッティングが終わってないから」
「むう……早くしてほしい。エルフが耐えられるシチュエーションじゃない」
「同じエルフのノエルさんも我慢してくれてるんだから、もう少しだけ時間をちょうだい」
いつもポスター用の写真は、作った商品を机に置いて撮影している。
しかし、今回のようにモデルを起用するケースは初めてで、どうしても段取りが悪くなっていた。
明るさやカメラとの距離の調整がうまくいかず、苦戦している。
エマとノエルさんとどら焼きをメインに撮らなきゃいけないなんて、いったいどうすればいいんだろうか。
うーん……と悩みながら画角調整をしていると、不安そうな表情を浮かべるノエルさんと目が合う。
「胡桃ちゃん、本当にこんな普通の光景でいいの?」
「大丈夫です。その普通が撮りたいんですから」
「そうなのね。まあ、お菓子屋さんのイメージ的にも、落ち着いた感じの方がいいのかしら」
「どら焼きはゆっくりと味わってほしい商品ですからね。そういう方向性でお願いします」
ノエルさんとイメージのすりあわせが終わる頃、ようやく私も画角の調整が終わる。
「よしっ。じゃあ、こっちで何枚か写真を撮るので、二人で自由にどら焼きを食べてください」
「ありがたくいただく」
余程お腹が空いていたのか、ゴーサインを出した瞬間、エマはガツガツと食べ始める。
そこはもう少し撮影を意識してほしいと思いつつも、エマに我慢させ過ぎた私のミスでもあるので、仕方ないと思った。
「なんだか緊張するわね」
一方、ノエルさんはカメラを意識するあまり、いつもより控え目な印象だった。初めて撮影することもあって、緊張しているように見える。
うーん……、なんだか思っていたイメージと違う。このままでは、ポスター用の写真が撮れない気がしてきた。
いつも通りの雰囲気を出すにはどうするべきか、と悩んでいると、ちょうどお風呂掃除を終えたばかりのお父さんがやってくる。
「お父さん、写真に映らない程度にノエルさんに関わってもらってもいい?」
「……父さんも映っていいと思うんだけどな」
「絶対にダメ。家族写真を撮るわけじゃないんだからね。外人が和菓子を食べる設定でいきたいの」
「そうか、さすがに看板親父にはなれないか」
「別にそこで目立たなくてもいいじゃん。異世界では勇者なんだから」
納得したのかしていないのかわからないが、お父さんはノエルさんの元へ向かい、雑談を始めてくれた。
それが功を奏して、ノエルさんの緊張が解けていく。
これで大人っぽいノエルさんの雰囲気はバッチリだ。後は、空腹で我を失っているエマだけなのだが……。
そう思ってエマを見ていると、どら焼きを一つ食べ終えた影響か、少し落ち着いた様子で二つ目を手に取っていた。
「おかわり」
順調に日常らしい雰囲気になり始めたところで、私はシャッターを下ろす。
やっぱり二人は絵になるなーと、オタクの血が騒いでいると、おいしそうな表情を浮かべるエマが、空いてる手で新しいどら焼きを手に取った。
そして、私に向かって差し出してくる。
「胡桃も食べる?」
パシャリッ
反射的にシャッターを下ろしたその瞬間、私はこう思った。
これでデカ小豆のどら焼きが売れるわ、と。
どうしても休日のうちにやっておきたいことがあり、私は朝から慌ただしく動いていた。
「よし、デジカメの充電完了っと」
デカ小豆のどら焼きを売り込むポスター用の写真を撮っておきたいのである。
そのため、日当たりの良い窓際に机と椅子を並べて、朝ごはんの代わりにどら焼きを置き、エマとノエルさんにモデルをお願いしていた。
「お腹すいた」
「エマ、まだ食べないでね。カメラのセッティングが終わってないから」
「むう……早くしてほしい。エルフが耐えられるシチュエーションじゃない」
「同じエルフのノエルさんも我慢してくれてるんだから、もう少しだけ時間をちょうだい」
いつもポスター用の写真は、作った商品を机に置いて撮影している。
しかし、今回のようにモデルを起用するケースは初めてで、どうしても段取りが悪くなっていた。
明るさやカメラとの距離の調整がうまくいかず、苦戦している。
エマとノエルさんとどら焼きをメインに撮らなきゃいけないなんて、いったいどうすればいいんだろうか。
うーん……と悩みながら画角調整をしていると、不安そうな表情を浮かべるノエルさんと目が合う。
「胡桃ちゃん、本当にこんな普通の光景でいいの?」
「大丈夫です。その普通が撮りたいんですから」
「そうなのね。まあ、お菓子屋さんのイメージ的にも、落ち着いた感じの方がいいのかしら」
「どら焼きはゆっくりと味わってほしい商品ですからね。そういう方向性でお願いします」
ノエルさんとイメージのすりあわせが終わる頃、ようやく私も画角の調整が終わる。
「よしっ。じゃあ、こっちで何枚か写真を撮るので、二人で自由にどら焼きを食べてください」
「ありがたくいただく」
余程お腹が空いていたのか、ゴーサインを出した瞬間、エマはガツガツと食べ始める。
そこはもう少し撮影を意識してほしいと思いつつも、エマに我慢させ過ぎた私のミスでもあるので、仕方ないと思った。
「なんだか緊張するわね」
一方、ノエルさんはカメラを意識するあまり、いつもより控え目な印象だった。初めて撮影することもあって、緊張しているように見える。
うーん……、なんだか思っていたイメージと違う。このままでは、ポスター用の写真が撮れない気がしてきた。
いつも通りの雰囲気を出すにはどうするべきか、と悩んでいると、ちょうどお風呂掃除を終えたばかりのお父さんがやってくる。
「お父さん、写真に映らない程度にノエルさんに関わってもらってもいい?」
「……父さんも映っていいと思うんだけどな」
「絶対にダメ。家族写真を撮るわけじゃないんだからね。外人が和菓子を食べる設定でいきたいの」
「そうか、さすがに看板親父にはなれないか」
「別にそこで目立たなくてもいいじゃん。異世界では勇者なんだから」
納得したのかしていないのかわからないが、お父さんはノエルさんの元へ向かい、雑談を始めてくれた。
それが功を奏して、ノエルさんの緊張が解けていく。
これで大人っぽいノエルさんの雰囲気はバッチリだ。後は、空腹で我を失っているエマだけなのだが……。
そう思ってエマを見ていると、どら焼きを一つ食べ終えた影響か、少し落ち着いた様子で二つ目を手に取っていた。
「おかわり」
順調に日常らしい雰囲気になり始めたところで、私はシャッターを下ろす。
やっぱり二人は絵になるなーと、オタクの血が騒いでいると、おいしそうな表情を浮かべるエマが、空いてる手で新しいどら焼きを手に取った。
そして、私に向かって差し出してくる。
「胡桃も食べる?」
パシャリッ
反射的にシャッターを下ろしたその瞬間、私はこう思った。
これでデカ小豆のどら焼きが売れるわ、と。
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