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土地神様たちの円卓会議
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「では第一回、神と贄による円卓会議を始める」
「……」
円卓って、このちゃぶ台のことかな。
おごそかに宣言した松里さんを見つめて、私たち残りの三人はきょとんとした。
私と汐と、あと氏康さんが巻き込まれました。
場所は私のおばあちゃんが孫のために作っていたと思われる、ログハウス風の離れである。
まさか、こんな用途に使われることになろうとは、おばあちゃんも想像もしていなかっただろう。
母屋だと、いきなり村の人たちが訪ねてきて人型の汐と氏康さんの姿を見られる可能性があるため、中を覗けない作りのここが選ばれた。
孫たちがここで遊ぶことはなかったけれど、神様たちが集ってくれたよ、おばあちゃん。
これはこれで名誉なことだよね。
「……会議とは」
「……」
「ええと、どんな話し合いをするんですか、松里さん」
「もちろん、土地神が過疎集落で生き残るすべを」
「……」
「ちょっと、汐、ゲームやめなさい」
「……生き残るすべとは」
「……」
何かこう……場は混乱気味だけど。
氏康さんは初めて入る部屋が物珍しくてたまらないらしく、真面目に話そうとしてるけど、そわそわしっぱなし。
汐は設置された大画面テレビを使ってのゲームに夢中だった。
……格闘ゲーム、下手なんだね。
松里さんは松里さんで、何か色々と持ち込んでいる。
そのお酒の包まれた風呂敷と、つまみらしきものの数々。
やる気はあるのか、君たち……。
まあ、私もちょこちょこと持ち込んではいるので神様たちのことは言えないけど。
「まずいよね。ここの秘密基地っぽい雰囲気が」
私が呟くと神様たちは一斉に、こちらに注目した。
「里ちゃん、それ何」
「……いい匂いがする」
「湯気が」
えへ。
だって集まったらやっぱり美味しいものが必要じゃない?
会議も真面目にするつもりだけど。
「栗いりの中華ちまきでーす」
ドンと大皿をちゃぶ台に置くと、おお、と神様たちがどよめく。
季節は秋も深まった頃合い。
一足先に寒くなり始めた山間の里は、秋の食材であふれている。
梨柿栗に御イモの類やキノコ類。猟が解禁になった猪肉に鹿肉。
そんなわけで栗をたくさん頂いたし、お正月用にってモチ米も分けてもらったので、お試しにちまき作ってみました。
「レシピは三重子さんに教えてもらった奴だから、期待して」
言うと氏康さんが目を輝かせた。
色んな意味で愛だね。
三重子さんは、つい先日退院してきたばかりだ。
念のための検査入院で、まったく意図していなかった別の場所に悪いところが見つかり、その治療のために入院していたのだ。
まるで、悪いところを早期に見つけるために倒れたみたいだ運がいい、とお医者さんは言っていた。
発見が早かった御蔭で、大変なことにはならなかった。
「あと、卵をたくさんもらったのでバケツプリンも作っちゃいましたー」
今度は汐が目を輝かせる。
「好きなだけ食べていいのか、好きなだけ取っていいのか……」
大事なことなんだね、ほぼ同じこと二回も言ったよ。
はいはいどうぞ、とバケツというか巨大タッパーに入ったプリンを手渡す。
その時、ちょうど私と汐の指先同士がふれた。
「……!」
途端に、汐の白い頬のあたりが赤くなる。
釣られて私まで耳元が熱くなる。
慌ててタッパーを渡して手を引くと、その様子をじっと見ていた松里さんが胡散臭そうな顔つきになった。
「……あんたたち、なんかあったの。夏の終わりぐらいから、変よね。二人とも」
「……」
別に、変じゃないと思う。
汐の反応に私が釣られるくらいのことは日常茶飯事だ。
起因しているのはたぶん、私のあのやけっぱちに近い告白のせいだとは思うけど……。
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