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王都を駆ける弾丸

街を貫く銃弾のように

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「……結局、余裕はほとんどないんだな?」

「先行の便に乗れたことで、僅かばかり間に合う可能性が出てきた、くらいに考えた方がいいかと」

「そうか」

 それ以上は、なんだか言葉が出てこなかった。
終わるんだ。この旅が。
たった七日間の、旅。
だが俺が今まで無為に生きてきた時間の、どれより濃かった気がする。

 窓の外を流れる風景が、少しずつゆっくりになりはじめた。
それが合図のように、姫さんが言う。

「それでは、参りましょうか」

 凛と言い放たれた言葉に、俺とドチビは揃って頷いた。





 しゅう、と圧縮された空気が抜ける音たてて、扉が開く。
その瞬間を待ちかねたように、人々は列車を降りる。
俺たちは誰より先に、解き放たれた弾丸のようにホームを横切った。
階段を駆け下り、混むと噂の朝の時間の駅を駆け抜ける。

 その障害を覚悟していたが、拍子抜けするほど構内に人の姿はほとんどなかった。
不思議には思うが、ありがたい。
先導のメイドについて走りながら、ちらと周囲に視線をやる。
疎らな人は避ける必要もなく、ほとんど直線で駅出口へと向かう。
王都の空気は心地よい程度に含まれた湿気で、呼吸が楽だ。

 ホームから駅を出る、大きな階段。
静まり返った構内に、俺たちの足音だけが響く。
なんだ、この違和感──。
これが王都?
階段下までたどりつき、前を見た俺は走りながらも見えた光景に呆然とした。

 なんだ、これ。
広く、見上げるほど広く取られた駅の出入り口。
ホール状になったそこを抜ければ、大きな通りが街中へと続いているのが見える。
朝は、市場へ急ぐ荷車や馬車でごった返すと聞いていた、道。

 そこには王立騎士団の軍服を着た騎士たちが、整列している。
通りに出るすべての道を封鎖して。

「……!?」

「これは……、いったい……」

 その俺たちに駆け寄る男がいた。

「姫様……!」

 男は叫んで何かの紙切れを、御大層な台に捧げ持って姫さんへと差し出している。
姫様、と呼ぶからにはウェストブルック家の使用人なんだろう。

「陛下よりの書状でございます!」

「陛下からの……?」

 あんまり意外な名前が出てきたので、俺は一瞬だけ足を止めた。
姫さんは書状を受け取り、走りながら開いて一読する。
そして大きく双眸を瞠り、それからその書状を胸元に抱きしめるようにした。

「……陛下……!!」

「馬はこちらに」

 男が先導を代わる。
おそらくウェストブルック家の執事か何かなんだろうが、俺には分からない。
何が起こってるんだか、それも分からない。

「姫さん……何が……」

「陛下が、道を作ってくださいました。
──行きます!」

 何が何だか分からないままに、俺はすでに鞍が準備されていた馬に飛び乗った。
姫さんに手を貸して、前に引っ張り上げる。
ドチビも手慣れた様子で馬に飛び乗った。

 手綱を取り、馬首を巡らせる。
馬上で高くなった視界に、道を、ずっと先まで並ぶ騎士たちの姿が見えた。
おい、これどこまで続いてんだ。
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