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時計の針は無情に進む
貴族というものについて
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さっき姫さんも言ってたが、具体的になにをするんだか、よく分からなかった。
それで興味本位だったが訊いてみる。
クソ騎士は、少しばかり馬鹿にしたような冷ややかな視線を向けてくる。
「なんだよ」
「……お前みたいな奴が、税金返せとか言ってくるんだろうなと思って」
「そもそも税金なんざ払ったことねえよ」
「……」
クソ騎士くんは、馬鹿にしたというより呆れたようで、遠い目をする。
帰ってこい。
「……道を作ったり」
「道?」
「お前、そのへんに道が勝手にできると思ってないか」
「思ってる」
「……あれは、その土地の施政者が整備してるんだっ!」
「……へえ」
「港や道や都市の建築、補修。
そういったものは全て税金や資産家から募った資金なんかで賄われている。
他には、農産物の生産を事業として経営してる領主なんかもいるな」
「……ピンとこねえなあ」
「軍備なんかも、必要になる。
弱けりゃ、あっという間に侵略されて、詰む。
そうなると侵略してきた国に搾取されて民草は大変な目に遭う」
「あー……」
「領地経営に失敗して破産した国なんてのは、本当にろくでもないことになるぞ。
軍が維持できないから、お前らみたいな悪党が、なんの制限もなしにのさばる。
どういうことになるか、本人なんだから、わかるだろう」
「……俺たちの天国?」
「こっちは地獄だ」
クソ騎士は吐き捨てるように言う。
それから、ひとつため息をついた。
「長い目で見りゃ、どんどん荒れていく国なんて、ならず者自身にとっても美味しい訳はないと思うがな」
それはそうか。
それなりに豊かでなきゃ、奪えるものもない。
「俺の故郷なんて、収穫時期が近くなると隣国の軍船が海賊の振りをして産物を奪いに来る。
外交問題にしようにも、海賊の仕業ですって言い張られるんだ。
……軍が強くないと、そういう目に遭うんだよ」
「北の魔女みたいに強いのがいるだろう」
「あそこは破格なんだよ」
メイナードは、ため息交じりに言って、ぐいとグラスの水を飲み干す。
「軍の強さも破格なら、領土全体が豊かなんだ。
もともとは痩せて岩ばかりゴロゴロした土地だったらしいが。
数十年かけて農業生産を領主主導で行い、土地自体を改革したって話だ」
「あ、もう何言ってるんだか、わかんねえ」
「お前なー」
呆れかえったクソ騎士が、俺をにらむ。
俺は笑って、その視線を躱した。
「ま、あそこは国境の守りの要だ。
他の国境地帯の領主は、たいてい国から補助金をもらってたりするらしいけど、あそこはそれも辞退し続けてるって話だぜ。
領地経営がきっちりしてるから、できる芸当だな。
内政が上手いってんで、視察にいった貴族の話もよく聞く」
「んなに何もかも揃ってる領主で軍まで強いと来たら、謀反の疑いとかかけられたりしねえの」
訊ねるとクソ騎士は、きょとんとした後に笑い出した。
「ないな。北の魔女……ウェストブルック侯爵夫人は、国王陛下の御血筋の出でいらっしゃる。王家との結びつきが、すごく強い」
「……」
すげえや。姫さんのところの家庭事情。
それで興味本位だったが訊いてみる。
クソ騎士は、少しばかり馬鹿にしたような冷ややかな視線を向けてくる。
「なんだよ」
「……お前みたいな奴が、税金返せとか言ってくるんだろうなと思って」
「そもそも税金なんざ払ったことねえよ」
「……」
クソ騎士くんは、馬鹿にしたというより呆れたようで、遠い目をする。
帰ってこい。
「……道を作ったり」
「道?」
「お前、そのへんに道が勝手にできると思ってないか」
「思ってる」
「……あれは、その土地の施政者が整備してるんだっ!」
「……へえ」
「港や道や都市の建築、補修。
そういったものは全て税金や資産家から募った資金なんかで賄われている。
他には、農産物の生産を事業として経営してる領主なんかもいるな」
「……ピンとこねえなあ」
「軍備なんかも、必要になる。
弱けりゃ、あっという間に侵略されて、詰む。
そうなると侵略してきた国に搾取されて民草は大変な目に遭う」
「あー……」
「領地経営に失敗して破産した国なんてのは、本当にろくでもないことになるぞ。
軍が維持できないから、お前らみたいな悪党が、なんの制限もなしにのさばる。
どういうことになるか、本人なんだから、わかるだろう」
「……俺たちの天国?」
「こっちは地獄だ」
クソ騎士は吐き捨てるように言う。
それから、ひとつため息をついた。
「長い目で見りゃ、どんどん荒れていく国なんて、ならず者自身にとっても美味しい訳はないと思うがな」
それはそうか。
それなりに豊かでなきゃ、奪えるものもない。
「俺の故郷なんて、収穫時期が近くなると隣国の軍船が海賊の振りをして産物を奪いに来る。
外交問題にしようにも、海賊の仕業ですって言い張られるんだ。
……軍が強くないと、そういう目に遭うんだよ」
「北の魔女みたいに強いのがいるだろう」
「あそこは破格なんだよ」
メイナードは、ため息交じりに言って、ぐいとグラスの水を飲み干す。
「軍の強さも破格なら、領土全体が豊かなんだ。
もともとは痩せて岩ばかりゴロゴロした土地だったらしいが。
数十年かけて農業生産を領主主導で行い、土地自体を改革したって話だ」
「あ、もう何言ってるんだか、わかんねえ」
「お前なー」
呆れかえったクソ騎士が、俺をにらむ。
俺は笑って、その視線を躱した。
「ま、あそこは国境の守りの要だ。
他の国境地帯の領主は、たいてい国から補助金をもらってたりするらしいけど、あそこはそれも辞退し続けてるって話だぜ。
領地経営がきっちりしてるから、できる芸当だな。
内政が上手いってんで、視察にいった貴族の話もよく聞く」
「んなに何もかも揃ってる領主で軍まで強いと来たら、謀反の疑いとかかけられたりしねえの」
訊ねるとクソ騎士は、きょとんとした後に笑い出した。
「ないな。北の魔女……ウェストブルック侯爵夫人は、国王陛下の御血筋の出でいらっしゃる。王家との結びつきが、すごく強い」
「……」
すげえや。姫さんのところの家庭事情。
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