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はじまりの街
早撃ちのメイド
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「じゃあな。運が良けりゃ、生きて帰れるだろ」
俺はひらひらと手を振って、踵を返した。
俺に関わる気がないのを見て取った追い剥ぎどもが、ずいと女に距離を詰める。
まあ、殺されはしないだろうよ。
身包み剥がれて、身代金を取られるくらいで済む。
抵抗すれば命の保証はねえが、おとなしくしてりゃ命まではとられねえ。
死体の処理だって、面倒だからな。
それがここいらの流儀だ。
金が全て。
ただし、命の代価がいくらになるかは運次第。
「――姫様」
ふいに、別の女の声が割って入る。
女というか、子供?
肩越しに振り返って見る。
すると女のドレスの陰にメイド服姿の子供が見えた。
ドチビすぎて、視界に入らなかったんだな。
……それにしても、気配が感じられなかったが。
「おい、金出しな!」
おっと、流石に路地裏の陳腐な追い剥ぎは、台詞までありきたりだ。
まあ、いい勉強になるだろ。
自分の身を守るには、どうすりゃいいのかってことのな。
そう考えて、やはり身を返そうとした時だった。
──響いた、銃声。
ガン!と重い音。
連中、いきなり撃ったのかよ、と咄嗟に後ろを見る。
「な……」
魔道硝煙の臭い。
まるで銃撃が起こしたような風が、砂塵を巻き上げる。
黄色い砂がおさまった後、俺が見たのは手足を撃ち抜かれ、無様に地面に転がった追い剥ぎどもの姿だった。
見れば、ドチビのメイドが腰に吊るしたホルスターから、一度収めた銃を引き抜くところだ。
メイドは無造作に、倒れている一人の許へ歩み寄る。
銃口を男の額に向けると、こう言った。
「――姫様。とどめの御許可を」
俺は思わず、口笛を吹いた。
おいおい、なんつう腕だよ。
倒れた男は五人。
銃声なんて、一発分しか聞こえなかったぞ。
しかも、狙いは正確無比。
一瞬で五人の手足ばかりを撃ち抜いて、行動不能にしちまいやがっただと。
俺ぁ、んな早撃ちのできる性能の銃なんざ、見たこともねえ。
どんな代物だ。どんだけ金かけりゃ、そんな性能の銃が作れる。
こんな腕前のガンナーも見たことがねえ。
しかも、それがこんなドチビのメイドだと?
――なんて日だ。
しけた路地裏で、こんなクソ面白そうなもんに出くわすとはね。
「……駄目よ。リィ。
もう勝負はついています。
これ以上、貴女の手を穢すことは、わたくしが許しません」
凛と響いた声に、思わず女を見た。
これだけの修羅場を見た後だってのに、女は息ひとつ乱しちゃいなかった。
世間知らずな貴族の御嬢様かと思ったのに。
女はポカンとしている俺に気付くと、柔らかく微笑んだ。
「面倒ごとは、片付きました。
あらためて――案内を御願いできませんか?」
丁寧な物言いには、厭味っぽいところはない。
俺の方はといえば、さっきまでと違って、この主従に興味がある。
知りたいねえ。
特に、あの銃の性能やらが。
俺はひらひらと手を振って、踵を返した。
俺に関わる気がないのを見て取った追い剥ぎどもが、ずいと女に距離を詰める。
まあ、殺されはしないだろうよ。
身包み剥がれて、身代金を取られるくらいで済む。
抵抗すれば命の保証はねえが、おとなしくしてりゃ命まではとられねえ。
死体の処理だって、面倒だからな。
それがここいらの流儀だ。
金が全て。
ただし、命の代価がいくらになるかは運次第。
「――姫様」
ふいに、別の女の声が割って入る。
女というか、子供?
肩越しに振り返って見る。
すると女のドレスの陰にメイド服姿の子供が見えた。
ドチビすぎて、視界に入らなかったんだな。
……それにしても、気配が感じられなかったが。
「おい、金出しな!」
おっと、流石に路地裏の陳腐な追い剥ぎは、台詞までありきたりだ。
まあ、いい勉強になるだろ。
自分の身を守るには、どうすりゃいいのかってことのな。
そう考えて、やはり身を返そうとした時だった。
──響いた、銃声。
ガン!と重い音。
連中、いきなり撃ったのかよ、と咄嗟に後ろを見る。
「な……」
魔道硝煙の臭い。
まるで銃撃が起こしたような風が、砂塵を巻き上げる。
黄色い砂がおさまった後、俺が見たのは手足を撃ち抜かれ、無様に地面に転がった追い剥ぎどもの姿だった。
見れば、ドチビのメイドが腰に吊るしたホルスターから、一度収めた銃を引き抜くところだ。
メイドは無造作に、倒れている一人の許へ歩み寄る。
銃口を男の額に向けると、こう言った。
「――姫様。とどめの御許可を」
俺は思わず、口笛を吹いた。
おいおい、なんつう腕だよ。
倒れた男は五人。
銃声なんて、一発分しか聞こえなかったぞ。
しかも、狙いは正確無比。
一瞬で五人の手足ばかりを撃ち抜いて、行動不能にしちまいやがっただと。
俺ぁ、んな早撃ちのできる性能の銃なんざ、見たこともねえ。
どんな代物だ。どんだけ金かけりゃ、そんな性能の銃が作れる。
こんな腕前のガンナーも見たことがねえ。
しかも、それがこんなドチビのメイドだと?
――なんて日だ。
しけた路地裏で、こんなクソ面白そうなもんに出くわすとはね。
「……駄目よ。リィ。
もう勝負はついています。
これ以上、貴女の手を穢すことは、わたくしが許しません」
凛と響いた声に、思わず女を見た。
これだけの修羅場を見た後だってのに、女は息ひとつ乱しちゃいなかった。
世間知らずな貴族の御嬢様かと思ったのに。
女はポカンとしている俺に気付くと、柔らかく微笑んだ。
「面倒ごとは、片付きました。
あらためて――案内を御願いできませんか?」
丁寧な物言いには、厭味っぽいところはない。
俺の方はといえば、さっきまでと違って、この主従に興味がある。
知りたいねえ。
特に、あの銃の性能やらが。
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