聖女の妹のせいで婚約者に婚約破棄されました。え?妹が聖女じゃなかった?もう一度やり直したい?知りませんよ、私はもう愛しの旦那様が居るのでw

チレム

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ルイアン視点

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「おい、『黒花』族仕事だ。」

そう言ってギルマスは俺達に書類を渡す。

俺は代々黒花族の血を受け継がれて来た奴らの末裔だ。


黒花族……

 黒花族の血は番を求める習性がある。唯一の人間に番が必要な部族だった。

番となる者を甘く執着し、重い愛を捧げる。

その代わり黒花族は身体能力に優れていた。

 黒花族は番以外の異性になびかない習性と身体能力で代々暗殺者として大事にされてきた。

 年々同族の者が減る中、俺は今日もまた仕事をしていた。


「ぐあっ!」

お貴族様の屋敷に忍び込み、対象を殺る。

 そいつの首を袋に入れ、ギルドに持ち帰り給料を貰い家に帰る途中たまたま目に付いたのは裏道を二人の男が袋に入った人だろう物を担ぎ運んでいた所だった。

何時もなら無視する所だが……


何故だ?もの凄くあの袋の中身が気になる。

 血がカッ!と熱くなり、居てもたってもいられなかった。

「へっへっへっ、これでしばらくは楽できるな」

「へ~?どうして?」

「どうしてってそりゃあ……?あ"ん?」

外行きの言葉遣いで話しかける。

「その袋の中に何が入ってんの~?」

 袋から近くなったからなのか、もの凄く袋が気になって仕方がない。

「誰だ?おめぇ。何の用だ?」

「ん~……いや、特に無かったんだけどその袋の中が無性に気になって仕方ないんだよね。だ・か・ら大人しく見せてくれないかな?」

大人しく渡してくれたら、命は取らないでやるから。

「はぁ?見せるわけないだろ?これは俺らの商売品になったんだから。」

……ダメか。

「……は~……こっちが優しく言ってる間に早く見せてくれないかな?」

俺はさっさと袋見たさに殺気を放つ。

「あん?それ以上俺らに近づくんじゃねぇ。」

「そうだ、金を払え。払ったらこの袋の中身を好きにしていいぞ。」

金……めんどくせぇ。お前らに別に許可とんなくても何時でも行けるって言うのに……

「ん~……面倒だし、君達死んでくれたら早いかも?あと片付けよりそっちの方が面倒臭い気がするし。……うん。やっぱり君達死んでね。」

 俺はすかさずナイフでこいつらの喉や心臓に刺していく。

「「ぐあっ」」

「ん?」


ドクン


袋から声がした。

起きていたのか……


 俺は落ちそうになった袋を受け止め床に下ろし、袋を開ける。


袋の口を開くと、紺色の髪が見えた。

 袋の中に居た子はゆっくりと俺の方を向いてきて目が合った。


ズクン


あぁ……まただ。


 袋の中に居た子は、紺色の髪に薄い紫の瞳をしていた。

 口を口枷で塞がれており、少し涙目で守らねばと言う気持ちが出てくる。
 

「………………」


「……あ~……大丈夫ですか?」

 濃い化粧をしているから貴族だろう女の子に外用の言葉遣いで声を掛ける。

 すると女の子はにこっと涙目なのに大丈夫ですっと言いたいような笑顔で必死にこくこく頷いていた。 


ジュグッ


 血が……本能が……何か言いたそうに俺の中をかき乱す。


「っっ! ……今、縛られているの解いてあげますから。」


 そう言って、口枷を外してあげたら彼女は『ぷはっ』と声を出して俺を見た。

 
あぁ……何でだろう?

 彼女の瞳を見ると、今までに無い感情が押し寄せてくる。

 

「…………好き……」

「は?」
 


何なんだ?

この言葉をずっと待っていたかのようなこの気持ちは?

この満足感は?


……あぁ……あぁ……分かった……

番だ。

俺の唯一の人。

「あ、あ、た、助けてくださってありがとうございます!!」

 気持ちを自覚したからなのか少し頬を赤らめどもりながらもお礼を言ってきた可愛さに俺はどうすればいいのか分からなくなった。

 こんな気持ち初めてなんだから、仕方ないっちゃ仕方がない。

「え?あぁ。大丈夫ですけど……さっきのは?」

俺は彼女の番だが、彼女の方は普通の人だ。

ましてや、目の前で人を殺したんだから。

「申し訳ございません!!いえ、思ってしまった事をつい言ってしまっただけなので、どうぞお気になさらず……」

彼女は、顔が熱くなりながらも言い切った。

ぶわぁぁ……

 あぁ……何だろうか……これは……これが好きって言う感情なのか?

「クックッ…………そういう事か……良いな。」

この素直な彼女と感情に今は満足しかしなかった。

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