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やりますか!

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「成る程、襲撃者達は紅の疾風のメンバーでしたのね、それならあの実力は納得出来ます」

「そうですわね」

「まあ、そうかもな...ですわ」

カリーナ達は何でも無いように頷くが、あの凄まじい紅の疾風のメンバー達が繰り出す攻撃を完封したカリーナ達の強さに改めて驚く。

「さて、問題はここからだ...」

ティラナは今回捕縛した襲撃者(紅の疾風)の話を聞きただちにプレストの街に確認した。
しかしプレストの街のギルド関係者はクレオールのギルドカードの発行は認めたがそのステータスが偽装であった事は認めず。
パシェット王国の査察官の来訪も否定した。

「どう言う事です?偽装ステータスを見破れなかった事を隠すのは分かりますが、ギルドが査察官の来訪を否定するなどあり得ません!」

カリーナは立ち上がり母であるティラナに迫った。

「全くその通りだ、王国の査察官の来訪をギルドが把握していないのはあり得ない。しかし査察官は来ていないと我が領からプレストのギルドに潜入させている間者スパイからも報告があった」

ティラナは暗い目で俺達に話す。ウィンカー領から王国内の各地に間者を潜入させている事を告げると言う事は恐らく最高機密だろう。それを俺にも教えると言う事は俺がそれだけ信用されている証と言う事か。

「つまり、査察官を名乗る奴等が紅の疾風に見せた査察官の身分証明書が...」

「偽物だった事ですね」

「クレオールのステータス偽装も...」

「その偽査察官達の仕業に違いありませんね」

カリーナ達の推測にティラナは回答する。

「私は今回の顛末を王国に報告するつもりです。婿殿を危険に晒しただけで無く我が領まで脅かしたこの度の所業許せません。ラムズボトム領の落ち度も糾弾されるべき物でしょう!」

ティラナは一同を見渡しそう言った。

「それで偽物の査察官はどうしたです?」

「プレストの街に潜入させている間者の報告では一昨日より姿を消したそうです」

「作戦の失敗を知って逃げましたね」

「どうやらこのバンクの街にも今回の黒幕の一味が潜んでやがたって事だな」

カリーナ達も今回の襲撃に裏がある事を理解した。

「しかしクレオールが死んだ以上ラムズボトムのギルドカードのステータスが偽装だと証明出来ねえ...出来ませんわ」

「死人に口なしですか...」

「あの男が生きてさえおれば」

アイラ達は悔しそうに言い合うが俺はクレオールを鑑定した。俺の鑑定では見破れたがあいつのステータスは偽装が掛かっていたので奴が生きていても問題無いと考えたのだろう。

クレオールに偽装を掛けたと思われる奴も姿を消しているしラムズボトム領の関与は否定されて真相は闇の中って訳だな。

「婿殿...」

ティラナが静かに俺を見つめた。

「これらの情報を整理するにラムズボトム領の関係者が今回の黒幕である事は最早疑いの余地はありません」

「はい」

「しかしラムズボトムの連中は決して関与を認めないでしょう。決定的な証拠が無いのです、しらを切るだけです」

「そうでしょうね」

やはりティラナの考えも俺と同じだ。
どうすればラムズボトム領の関与を認めさせるか、難しい局面に俺は答えが出せない。

「婿殿、今回のガシーの街に行く道程にラムズボトム領のプレストの街を経由して行って貰いたい」

「しかし、またラムズボトムの連中がこの街にちょっかい掛けませんか?今は街の防御を固めた方が...」

ティラナの提案に俺は口を挟む。

「いや、今だから良いのだ。まさか連中も襲撃された者達が自分の街に来るとは思うまい。そして婿殿、ラムズボトムの企みを潰してほしいのだ!!」

「企み?」

「うむ。奴等の狙いはこのウィンカー領の併合、鉱山の奪取だ」

「そうなんですか?」

「皆も聞いて欲しい...」

ティラナはウィンカー領とラムズボトム領の因縁を語り始めた。

鉱山はウィンカー領とラムズボトム領に跨がる山で最初は鉱石があると思われていなかった。
広大な山の管理を煩わしく思ったラムズボトム家は伯爵である事を嵩にかけ子爵であるウィンカー家に山の管理を全て押し付けた。

山には魔物や盗賊が出没する為警備に莫大な費用が掛かる。その為ウィンカー領は膨大な借財を余儀なくされた。
この窮地を救ったのが伝説の[勇敢な男]だ。

魔物退治に立ち寄った際ウィンカー領の領主に告げた。
『あの山には膨大な鉱石が眠っている』と。
半信半疑の領主に[勇敢な男]は旅の仲間である魔術師に命じて山の中腹に特大の魔法を撃ち込ませると貴重な鉱石が顔を見せたのだ。

ウィンカー領の領主は驚喜したのは言うまでも無い。直ちにパシェット王国に報告すると王国から功績を認められウィンカー領の領主は辺境伯に任ぜられた。

面白く無いのはラムズボトム家だ。すぐに山の権利を奪い取ろうとしたがウィンカー家が拝領した辺境伯は伯爵より地位が高く最早手出し出来なかった。

ウィンカー家は鉱石の収入で莫大な借財を忽ち返済し、更に近隣の土地を次々併合して行った。そして今やウィンカー領は広大な領土を有する大貴族となったのだ。

「それが面白く無いのですわ」

カリーナが忌々しく顔を歪ませた。

「今までラムズボトム家はウィンカー家に対して嫌がらせは数知れずありましたが今回の事はやり過ぎました。婿殿、今ラムズボトム家と争っては他国に漬け込まれるは必定、何とかこのウィンカー領、いやこのパシェット王国を救って貰いたい!」

ティラナの言葉に俺は戸惑う。そこまで買いかぶられては困るのだ。ナザリーには異世界を楽しんで来いって言われたのだから。

「あなたの勇敢さがあるから私達は実力を、いえ実力以上を出せるのです」

「そう、私達の実力であのAランクパーティの攻撃を寄せ付けず完勝はありえませんでしたわ」

「ああ、あなたは俺達の世界の救世主になれる、いやなって貰わない....と困りますわ」

レアやカリーナ、アイラの言葉にティラナや自警団の団員達も熱い視線で頷いている。
俺は弱い、だが逃げる事は出来そうにない。『覚悟を決める時が来た』
俺はそう考える。

「分かりました。俺に世界を救う力はありませんがみんながいれば頑張れる気がします。微力ですがやってみます」

俺はそう言いながら静かに頭を下げる。

「....宜しくです...」

レアが俺の肩に体を寄せた。

「...ついて行きますよ...」

カリーナが反対の肩に身を寄せる。

「...死なせねえ、死ぬ時は一緒だぜ...」

アイラは俺の正面に立ち手を優しく握ってくれた。

「よくぞ申した婿殿、必ずこのウィンカー領に再び帰って参れよ」

ティラナは涙を溜めて俺を見つめた。

「実は言っておきたい秘密がある」

俺は再度皆を見渡した。

「「「「秘密?」」」」

俺の言葉に皆は一斉に見つめる。

「ああ、俺は笑気ガスのスキル以外に鑑定のスキルとスキルの成長スキルを持っている」

「...何と!3つもスキルを...」

俺の言葉にティラナ達は目を大きく見開き絶句する。

「それで合点がいきましたわ」

「ああ...」

「あなたも鑑定のスキル持ちだったんですね、今までの不思議な事全て納得です...」

「婿殿...最早あなた様は伝説の「勇敢な男」...疑いの余地は有りません」

ティラナやカリーナ達、自警団員達も全て涙を流しながら俺を見ていた。

「なぜですか?」

理解できない。
何故なら転生者は全て3つスキルを与えられている事をナザリーから聞かされていたからだ。

「何故なら伝説の勇敢な男も鑑定スキルの持ち主だったそうです」

「その鑑定スキルは神の領域で世の全てを見抜く力を有していたと言われています」

「ああ、俺は何て幸せ者だ...幸せな女でしょう」

カリーナ達は眩しそうに俺を見た。
俺慢心しないように戒める気持ちを常に持とうと思うのだった。
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