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女は強し!

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「痛てて...」

俺は頭の痛みで目を覚ました。
ひょっとしたらベッドに寝かされて先程の美女に囲まれて
『大丈夫ですか?』
みたいな展開を期待したが残念ながらゴブリン達を殺した場所で延びてたらしい。

「冷てえな...」

俺は痛む頭を抱えて自分の体を確認する。

「相変わらずのパンツ一丁かよ」

せめて服を着せるか、新しく服を置いていく位の事は期待したが生憎だった。
3人の姿は見えないが助かったみたいだから良しとするか。
俺は立ち上がり、あても無く歩き始めた。

「お待ち下さい...です」

しばらく歩くと俺を呼び止める声がする。
振り返ると先程の杖を持った女性がいた。
怯えたように俺を見つめる視線は鑑定するまでも無く警戒の固まりだ。

「何ですか?」

俺はぶっきら棒に聞いた。

「あの先程はありがとうございました...です」

一応はお礼を言ってる所は評価できるな、しかし警戒を解かない姿はいつでも攻撃出来るというポーズだな。
なるべく明るい態度で接してみようかな、その前に[全鑑定]っと。

[種族  人間] 

[職業  魔術師 LV10]

[名前  レア・ハインツ]

[年齢  16]

[HP  145/200]

[MP  105/600]

[感情  警戒 少し恋慕]

[弱点  首筋 胸 耳 下半身...]

成る程、やはり魔術師か、格好からしてそうだと思ったよ。16歳、意外と子供だったのか。

しかし後半の項目はなんだ?感情の警戒は理解出来るが少し恋慕ってあり得ないぞ?俺は破れてお尻丸出しパンツ一丁の男だぞ?
特に最後の項目は弱点の意味が違うだろ!

「...あのどうされましたです?」

俺が困惑した表情でレアを見ていると先に聞いて来た。いかんいかん、フレンドリーに行こう。

「無事だったみたいだね、良かったよ。他の2人は見当たらないが大丈夫だったのかな?」

俺は笑顔でレアに聞いた。

「はい...あの後私はポーションで魔力を回復させて回復魔法をみんなにかけました。アイラは姫様を連れて先にお屋敷へ戻りました。私はあなたを見張っておくように姫様に言われてここに」 

「そうか、みんな無事で良かった...って姫だって?」

「あ、あの、あなたを間違って叩いた人で...です」

「あの甲冑に身を包んでいた人?」

「そうです、まだあなたを危険かもしれないと言いまして...申し訳ありませんです!」

そう言うとレアは俺に頭を下げるが、あの甲冑の姫さん気を失ってたみたいだし、気がついたら仲間が破れたパンツ男に絡まれてると考えたら...そりゃ叩くよな。

「大丈夫だよ」

俺は気にしないようにレアに言った。
その後レアからゴブリンに襲われた理由を聞いた。

最近ゴブリンの目撃情報があって家畜や農作物の被害が出ていた。
まだ人的被害は出て無かったので領主が早々にゴブリン退治をギルドに依頼したが冒険者達は雑魚のゴブリン退治をなかなか引き受けてくれず、そうこうしてる間にゴブリンの数が増えて町の近くまで目撃情報が来ていた。

問題はゴブリンの中に上位種がいるとの情報か寄せられた事で危機感が増していた。
女性が狙われる可能性が高まったので領主の娘、(まあこれが姫だ)を中心とした3人でゴブリン退治を決めた。
しかし予想していたゴブリン上位種のホブゴブリンより更に上位種のゴブリンロードが現れて姫達3人の攻撃は通じず逆にゴブリンロードに統率されたゴブリン達に追い詰められて傷つきピンチになっている所に俺が現れた、と。

「本当に助かりましたです」

レアは改めて俺に頭を下げた。

「もういいよ、でも女性だけでゴブリン退治は危険でしょ、男は今回参加してないのか?」

「え?」

俺の言葉にレアは絶句する。『なに言ってるんだコイツ?』って顔だな。

「何か変な事言ったかな」

「戦闘は女の仕事ですよ、冒険者の中にも男の人はたまにいますけどあまり戦闘には参加しませんです」

「え?男の冒険者は何をするの?」

「男の仕事ですか?冒険者達の為にお料理したり、洗濯、針仕事です」

さすがに男の役割が淋しいので俺は聞く。

「魔法や剣で戦ったりしないの?」

「男の人の魔法って戦闘に余り使えなくって...」

「使えない?」

「ええ、食べ物が腐ってるか、まだ食べるかの判定とか、雌の魔物を魅了するとかです」

「成る程それは使えないな」

「ええ、剣も女の方が強くて男の人は苦手みたいだし...臆病な方が多いんです」

「臆病が多いなら俺を警戒しなくても...」

「魔物の中には男に化けて女性を襲うのがいまして、それを姫様は警戒されたと思いますです」

レアはそういいながら俺を見た。

「君は警戒しないの?」

「はい、先程あなたを鑑定しましたです」

「俺を鑑定したの?」

俺は驚いた、レアスキルの鑑定を持った人がいたなんて!

「ええ、鑑定スキル持ちは珍しいから重宝されるんです。でも魔力をたくさん使うから余り使えませんです...」

そうなのか、俺はバンバン使ってるが体はどうもないがな。いやいやそんな事より俺の情報をきこう。

「あの俺の鑑定結果を教えて貰えないかな?」

「え、自分の事をです?」

レアは驚いた顔で俺を見つめるが記憶を消された今のままじゃ名前すら言えない。

「自分の事って意外と分からなくて...」

俺はそう誤魔化した。

「分かりました。あなたは人間です」

そりゃそうだ。

「後、職業はガス使いです」

「なんだそりゃ?」

俺は思わずレアに聞いた。

「私も分かりませんが鑑定によるとそう書かれていまして」

「ああ、成る程。後は?」

「名前ですよね....書いて無かったです」

「あらら」

残念、俺の名前は未だ分からずか。

「名前ってどうすれば分かるのかな?」

「あなた自分の名前が分からないのですか?」

逆に聞かれてしまった。転生の事やら聞かれたらややこしいので適当に誤魔化すか。

「うん、どうやら記憶を失ってしまったようでね、俺が誰で、ここがどこかも分からないんだ」

俺の言葉を聞きながらレアはじっと俺の顔を見つめて、しばらくすると笑顔になる。

「どうやら嘘は言ってないみたいですね」

成る程俺を鑑定したのか。

「レアの鑑定は何項目なの?」

「私の鑑定能力は5項目です。種族、職業、名前、体力と魔力です」

「え、発言の鑑定とか無いの?」

「そんな高レベルな鑑定持ってませんです!」

「それじゃどうして俺が嘘を言ってないと?」

「目を見れば分かりますです」

(意外と原始的ね)俺はそう思った。

「鑑定項目の入れ換えとかは?」

「それこそ鑑定レベルの最高位まで行かないと出来ませんです!」

レアは呆れたように俺を見るが今俺出来るんだよな、8項目の鑑定自由に入れ換え。まあ俺が鑑定スキル持ちは黙っておこう。
それにしても先程から俺は鑑定のスキルを発動したままだけど、レアは俺に1度も嘘は吐いて無い。今彼女の感情の項目から[警戒]は消えているから俺を信用してくれてるのだろう。

俺を信用してくれる人が出来た事に感謝をした。

「うん?」

「どうしましたです?」

「いや何でもないよ」

誤魔化すが、レアの鑑定項目表示が消えて行って...あ、全部消えた。
鑑定の表示部分にスキル全回復まで2時間と書いてある。

ナザリーの時から随分鑑定を使ったり、笑気ガスをバンバン使ったからな。2時間位なら全回復するまで置いとくか。

とりあえず、レアからこの世界の事やスキルについて聞こう。
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