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15 公開処刑すぎる

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「ジュリアーノ叔父様!?」

 イリヤの驚きに満ちた声で叫ぶ。家泉は聞き返した。

「叔父様?」
「は、はい。父の一番下の弟で、わたしの叔父です」
「叔父さんもこっちに来ていたんですね」
「連絡を取ってなかったので、どうしているのか全然知らなくて……まさかこの街にいるとは思いませんでした」

 イリヤの話している内容が聞こえたのか、ジュリアーノが声を上げる。

「知らないだって!?リシェと話をした時に僕のことを伝えておくと言っていたぞ!」
「いえ、聞いてない……と思います」

 実はリシェはイリヤにジュリアーノのことを話していたのだが、家泉のことで頭がいっぱいだったイリヤは完全にスルーしていた。おかげで、1ミリも憶えていなかったのである。
 首を横に振ったイリヤ目掛けてジュリアーノはものすごいスピードで詰め寄る。
 そしてイリヤの腕を掴んでいた家泉の手を捕らえた。

「とりあえず話は後で聞くとして、まず貴様はイリヤから離れたまえ」
「え、あ」
「うちのイリヤに危害をくわえようなど、不届きな奴め」

 ジュリアーノは怒りの感情を隠そうともせず、家泉の手首を掴んで捻り上げた。相手のあまりの力の強さに家泉は顔をしかめる。人間相手に手加減をしているのかもしれないが、それでも掴まれた腕は骨が折れそうなほどの痛みだった。
 2人を見たイリヤがなりふり構わず飛びついた。

「叔父様!やめてください!違うのです!!」
「何を言っている。この男に腕を掴まれて困っていただろう」
「それは誤解なのです!家泉さんの手を放してください!折れてしまいます!」

 イリヤが渾身の力をこめてジュリアーノの手を家泉の手から引きはがす。その瞬間、異様な音がしてジュリアーノの5本の指がそれぞれありえない方向に変形したが、あっという間に指は治って元の形に戻っていく。吸血鬼の回復の早さに家泉が目を丸くしていると、ジュリアーノが怪我していた手をひらひらとさせながらイリヤを軽くにらみつけた。

「痛いじゃないかね」
「叔父様が、話をちゃんと聞かずに家泉さんに暴力を振るうからです」
「む、そうは言ってもだな」

 ジュリアーノは不満そうな顔をしたが、イリヤの毅然とした態度の前にはどうしていいかわからないと言った様子だ。
 家泉も2人の話に入ることができずに見守っていると、イリヤが家泉の方を向いた。

「ごめんなさい、家泉さん。痛かったでしょう。怪我はしていないですか?」
「あ、う、うん。はい、おれは大丈夫」
「よかったです」

 泣きそうな顔でよかった、と繰り返すイリヤに黙っていたジュリアーノがイライラと声を上げる。

「君はそこの人間に絡まれて困っていたのではないのかね」
「だから、それは誤解って言ってるじゃないですか。それよりも、家泉さんに謝ってください!」
「それはイリヤが……ん?ちょっと待て。そこにいる人間の男は家泉というのか?」
「はい」

 ジュリアーノはイリヤの返事を受けて家泉に向き直る。

「改めて訊こう。名前は?」
「家泉です」
「そうか」
 
 ジュリアーノは10秒ほどたっぷり沈黙を守っていたが、改めて大声を上げた。

「やはり、貴様は許さん!」
「な、なにがです?」

 家泉が思わず聞き返すとジュリアーノは目を吊り上げた。

「リシェからイリヤに好きな人がいると聞いていたから心配していたが、ああやってイリヤの腕を不躾に掴むような者は、うちのイリヤには似つかわしくない!」
「……え?」

 なんだかものすごいことを言われた気がして家泉はジュリアーノをぽかんと見た。そして、今度はイリヤを見る。
 イリヤの顔が茹で上がりそうなほど赤くなっていた。

「お、お、叔父様!」
「なんだ、イリヤ。リシェから聞いているぞ君はこの家泉という男を好」
「それ以上、口を開かないでください叔父様ーー!!!」

絶叫したイリヤは、恥ずかしさのあまりめまいを起こして、その場に座り込んだ。
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