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第11章 (株)関西国際医療 第1営業部、営業3課。
第2話 社員の皆様、ご出勤。
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次第に、明るい初夏の朝日が差し込む。
眩しさに真っ赤な目を細めてデータ入力をする椎葉。
新大阪の駅も通勤の人達もどんどん増えて、ビル群の周辺はだんだん賑やかになって来た。
朝の8時も過ぎ、次第に他の課の社員達、同じフロアーの社員達も朝の挨拶と共に出勤して来た。
( ピン♪ )
エレベータの止まる音が事務室入れ口から聞こえてきた。通勤してきた社員達の話声が聞こえて来る。
「課長、おはよう御座います。」
「ういっす。」
「おざっす!課長!残業お疲れっす!」
「ういっす。」
男性社員の後ろから、鞄の中をゴソゴソしながら、ショートヘアーでスタイル抜群、背が高く美人の女性社員が出勤してきた。
その女性社員が部署エリアを見ると、普段は岩崎律子主任が使う経理用ワークステーションの机で、画面を覗きこみながら体を丸めながら、入力する大男の椎葉きよしが目に入ってきた。
「えーマジに。やってるやってるぅ。」
椎葉の後ろを歩きながらニッコリ挨拶する。
「おはようございま~すっ!」
画面とカタログを見ながら小さな声で返事しないで入力する椎葉きよし。
( カタカタカタ……。 )
自分の机の前で、椎葉をゆっくりのぞく伊東奏。
「おはようございます。椎葉課長?おはようございます。」
( カタカタカタ、カタカタっ、あっ間違えた。 )
「……ん?」
返事のない椎葉に近寄りながら頭をかく伊東奏。
太腿にカタログを置いてキーを打つ椎葉の横に立った。
「椎葉課長~おはよう~、御座います。」
作り笑顔で顔を並べて画面を見る伊東。右目で顔を見て、いきなり鼻をつまんだ。
「うわっ臭っ!めっちゃ臭っさ~っ!オエー。」
鼻をつまんでパタパタ手をあおぐ。
「あっ……、おはよう伊東は~ん。」
( カタカタ、カタカタカタッ。 )
自分の机にカバンを置き、椎名の周りに散らかったペットボトルやコンビニ袋、鼻紙など散らかったゴミを片付ける伊東。
片付けながら話し掛けた。
「課長~。まさか姫路から帰って来て3日間も着替えてないんですか~?ご自宅近いのに。散らかしたままだったら岩崎に文句言われますよ~。微妙に昨日のお昼、みんなで出前取る位から匂ってましたけどぉ。めっちゃ、くっさ!」
その内、出社が早い社員たちも出勤して来た。
( おざーす! )
( おはようございます。 )
( なんか臭わないっすか、なんか臭い。 )
( ほんまやわ。めっちゃ臭い。 )
と、出勤した隣の課の社員たちが話をしている。
構わず、真っ赤な目で真剣にキーボードを打ち込む椎葉きよし。
「もし嫌でなければ、直ぐ着替え持って来ましょうか?課長のご自宅のセキュリティー、私の指紋や音紋登録まだ消してませんよね。姫の部屋の真下の部屋ですよねっ?寝室でしたっけ?最近、課長と姫の家に行って無いからハッキリ覚えてないですけどぉ?」
「もぅ終わるから~。それから着替えてくるぅ~。」
「え~?ズーッとやってたんですか?」
「カナちゃん眠くて死にそう。くたばる前にコーヒー頼んでいい?」
「はいっ喜んで。生きている間にコーヒー作ります。」
「ありがとう。余命いくばくもないので……あっ間違え。あらら。」
そこで、スマハンドが鳴った。
( ♪♪ぷるんぷるん、ぴっぴ♪♪ぷるんぷるん、ぴっぴ♪♪ )
( おい!シ~(椎葉きよしのニックネーム)か? )
幼馴染で友人の小林からの通信。
( 「コバ」(株)高崎薬品 天神橋 本社 )
の表示。
「うぃ~なんじゃ。えらい早いがな。パソコンとラブラブの最中~。なんや朝早く。」
コーヒーの準備をしながら、チラッとのぞく伊東の奏。
( 何しとん、オッサン。家か?会社におるんか? )
と、コバ。
「んにゃ、見て分からんかぁ。会社じゃボケ~。」
( えっ?なんで会社やねん。これから間に合うんかいな。 )
「残業で徹夜~あっ!あっボケッ間違えたやんけ!ったく。コバっ!もうっ。」
( カカカッ。鈍臭っ!だからシ~!今、何時じゃ。 )
「ん~残業2日目の金曜日の朝~。会社命令の(強制、10日間連続休暇)の初日ですやんかぁ旦那。それやのに、過剰なサービス残業で会社法バリバリの違法行為、懲役半年以下か90万円以下の罰金中~っ。あ~っ眠いっ。ぐあ~。」
( 何、こいてんだか、おいっ!シー。 )
2人のやり取りを聞いて、ニタニタ笑いながらでウォーターサーバーできよしのカップと自分のマグカップにお湯を注ぐ奏。
「あ"ぁ~またやってもた。落ち着け……落ち着け俺。うっし。もうすぐ終るから待ってろよコバ。待ってろ~。」
( シ~!だから今、何時~って言ってる。 )
怒り気味の小林。
「……えっ?ん?」
アニメアイドルの声優サイン入り卓上時計を見るきよし。
付箋に書かれた文字。
( 金曜は9時半より小バカの治験 )
と、書いてあった。
「あらまぁ治験やんか。9時半からだっけ?」
カタカタ、カタカタッ。急いでキーを打つきよし。
( 何があらま治験って、ほんま頼むで~!ほん~まに、ほんまに。治験、間に合うか?コラっ、オッサン!聞いとるか。 )
伊東がコーヒーを置く。
「カナちゃん有難う。」
ニッコリ、手をパッと指を広げて挨拶する奏。
カツカツカツと、ヒールを鳴らしながら席に戻る。
席に戻ると、目をつむり高い鼻をツンと上げて、両手でマグカップを持ってコーヒーを飲み始めた。背中をポリポリと搔きながら、チロッと椎葉を見てマグカップに口を付ける。
「あ~ほんまにやってた。ふ~ん。エル兄ぃは、やる人なんだ。2日間ノンストップ。わしにゃ無理、無理。絶対、無理。ぐあ~ぁ、まだ寝たりないしぃ……ズズズッ。」
手を添えて大あくびをしてから再び、コーヒーをすする伊東。
そこへウキウキオーラ発散しながらニコニコ顔の黄メイリンが出勤してきた。
( おはようございます~、うひひひっ! )
「あっ、メイ~わはようぅ。」
伊藤奏があくびの続きをしながら、手を口で押えて挨拶した。
「課長ちゃん!おはようございま~すっ!伊東主任おはようございま~す。」
ツカツカとコーヒーと飲む伊東に駆け寄る黄・メイリン主任代理。
「あっマジで課長ちゃん2日間、徹夜してたんですか?カナちゃん?」
と、メイリン。
「みたいね!目が真っ赤。」
両手の指で目を見開く伊東。
そして襟足を摘んで臭いを嗅いでオェ~臭い、臭いゼスチャー。
「うひひひ。徹夜、お疲れ様で~す。課長ちゃん~。」
「メイちゃん、おはょぅ……。」
と、画面をみながら手を振るきよし。
「ふ~ん、じゃ、メイリン。愛情たっぷりメイリンコーヒー入れますね?」
マグカップを持ちながらメイリンに答える奏。
「あっメイ!今、課長に頼まれてコーヒー入れたよ。」
コーヒーを机に置き、引き出しを開いて筆記用具を出す奏。
「えっ?カナちゃん先に入れたんですか?な~んだ。」
カバンからお姫様道具、モロモロを机に置くメイリン。
「愛情たっぷり!メイリンオリジナル本格コーヒー入れよう!と張り切って早めに会社来たのに。がっかりするメイリンだったのだ。うひひっ。」
腕を後ろに組んでゆっくり伊東に近づき、横に立ち覗きながら。
「カナちゃん何時に来たんですかぁ?気になるぅ、気になるメイちゃんであった。うひひっ!」
一言、言ってサッと、自分の机に戻りリップを塗るメイリン。唇をへの字にして、つまらなそうな顔で話す伊東奏。
「愛情たっぷり~メイリンオリジナル本格コーヒーって、事務所には粉のインスタントしかないけどォ。ウォーターサーバーのお湯に、粉入れて終わりだけどぉ。」
「あっ?バレましたキャハハー。でも、今、まだ8:00ですよ。早過ぎませんか~!カナちゃん。」
( 朝から、いじる気満々なんだなこの娘は。今日、水曜朝礼だから書類整理に早く出社したの。 )
コーヒー飲みながら細い目でジーとメイリンを見る伊東。
タイピングしながら朝のオッサン同士のゆるゆる対話をする椎葉。
「コバ、ちゃうねん。あれやあれ、ほれシラスだかチラスとかなんちゃら最近売り出してる、恐ろし軍の納品書、今日まで必要なんやて。何があるかよう知らんけど、ポー支社に納品書確認してから振り込むらしい。それで大急ぎ納品書・請求書作りでんがな。(知るかっ!)そう言うなって。ポーランド軍はデジタルデータで残したくないらしい。(あー成る程。って、早よーせいや!)わかっちょるって。(早ょー!)だからさ、昼までに作って送らないと。ポーの時差は7時間。(知るかー!)コバ!じゃかしー!もう、頑張れ俺っ。頑張れ俺っ。」
カツカツカツ。
ヒールを鳴らしながら書類を持って横に立つ奏。
( カタカタカタ……。ゲッ、カタカタカタ。 )
横に立ったまま、鼻をつまんで冷たく棒読みする奏。
「昨日、総務から25日の締めがあるから早めに先週の広島と今週の姫路の出張経費、申請して下さいと催促がありましたよ~。(そう?カタカタカタ。)25日は日曜日。明日、土曜日で会社は休み。だから今日、金曜日が締め日。(へいへい。カタカタカタ。)宜しくです課長。あの~課長聞いてる?処理が遅れて私が困ります。」
「ん?あっ、そうだった。」
きよしは、ズボンのポケットやら、上着のポケットをまさぐる。
「え~、あらら。姫路の領収書、姫路の領収書……。」
と、言いながら上着のポケットからジャラ銭や会社の法人カードやらグシャグシャの領収書類を出した。
「了解、カナちゃん。もう終わるから申請書、そこに置いてくれ。(カタカタカタ。)」
「了解。」
置いた書類の上に、領収書などモロモロを手ですくって、椎葉の課長席に置くカナちゃん。カツカツカツと席に戻った。
また小林が椎葉きよしに話す。
( シー!交通費で5,000円渡すし、承諾書とか書類にハンコか、サイン必要。ハンコあれば持って来いよ。……聞いてるかオッサン。 )
小林を無視して、突然手を合わせる椎葉。
「神様の巡り合わせ!今、今、おわ~りました。はい~っ!終了~でっすぅ。終わったぁ腹減ったぁ!」
( ぎゃー!ぐわーっ!かーっ眠いっー! )
両手を上げて大あくびをする椎葉。
「えっ!マジに終わったんですか?」
ぬっ!と反応する伊東奏。
「課長ちゃん、終わったの?」
目を合わせる伊東奏と黄メイリン。椎葉に駆け寄り画面を見るOLの2人。
「課長ちゃん凄い!凄い~!」
「だべぇ~、すげべ~!俺もよ~やるわ。2日の徹夜なんて、この歳でさすがないわぁ~。なぁい、ないーっ。」
ウキウキメイちゃんがさらにウキウキして横に立った。
「ハイ!倉庫の奥から埃だらけのカタログ、探した甲斐があります~。やったー!課長ちゃん。」
「えっ?そーなの?早く言ってよ。有難うメイちゃん。余計な仕事させたね~。」
右手を上げるメイリン。
「ハ~イ課長ちゃんっ!」
( パシン!パシン! )
ハイタッチする2人を、腕を組んで額にシワを寄せ、背中でみる奏。
「フン!」
( ワシがほとんど書類、運んだっちゅうねん!メイはダンボール発見しただけ! )
突然、奏がタッタッタと2人の間をねじるように割り込んだ。
「椎葉課長?データ、ポー支社に送りましたか?」
無理矢理椎葉のマウスを奪って、豊かなバストを椎葉の横顔に当てたまま画面の納品書を確認する伊東奏。
「ぐわっ。あらら有難うカナデ様、寝不足でボケて……危なかったけど、これちょっオッパ、オッパ、オッパィ。」
( 何だ?コラッ、シー。何しとん。朝っぱらからキャッキャッ騒ぎおって、ぶち殺すぞ!話聞いてるかコラ、シー! )
と、小林が叫んでる。が、お構い無しの3人。
座ったきよしの体が斜めになり、からだが椎葉に引っ付いたままデータを確認する伊東奏。
横では積み上がったカタログ本を段ボールに仕舞い始めるメイリン。
同じフロアの男子営業社員が机から、首を伸ばしてのぞき始める。
( うわ!朝から羨まし過ぎる! )
( うわ~カナデちゃんと。課長羨ましい。 )
と、泣く他の課の男性社員たち。
「本当に出来てますょ。課長。(パシンっ!)」
睡魔に襲われて、ボヤーとしている椎葉の肩を叩いた。
伊東が腰に両手をあてて起き上がった。
「ほな、早う認証してから送信してくれへんと。課長。」
「ホンマ?(はい、出来てますやんか。うん、うん。)ヨッシャ!ポイポイの~、ポイッ!ハイ送信~ッ!スミス部長終わったよ~!」
「キャハハ~。やりましたね課長ちゃん。」
キャピキャピしてるメイリンと対照的に、マウスを持ってジーっと画面を見る伊東奏。また前のめりでマウスを持って確認し始めた。
椅子をクルっと回すきよし。ガッツポーズをした。
( ウシッ! )
「俺偉い~。カッチョええだろ俺、見たかバカ姫。やった~!お嬢様2人有難う~!ハイ、タッチ~メイちゃん~!ハイっ!カナちゃんタッチ!」
画面を操作しながら、嫌々マウスの反対の手を出してタッチする伊東奏。
「ちょっと課長?課長!小林さんは?」
と、マウスを持った肘で、椎葉の肩を押した。
( な~にがハイタッチ~じゃ!ボケーッ!こらっシー絶対来いよ!待ってるからな! )
と、自室で叫ぶ小林。
大あくびをしながら、薄目で小林を見る椎葉。
「ぐわー、はぁー!かぁー!なぁコバ、行く前に寝ていい?ちょっこっとだけ。この歳で連チャン徹夜はシンドイべさ。」
( キーッ!……駄目! )
「プツッ……」と、終わるコバ通信。
「あ。」
赤い目で放心状態の椎葉。
「通信……切れたね……。」
と、椎葉。
「……切れましたね。」
と、メイリン。
きよしが放心状態のままで画面を見ている。
「替わりにコバの治験行ってくれるかなぁ、メイちゃん。」
同じく画面を見たまま、鼻をつまむメイリン。
「……駄目。そして、すんごい臭っ。」
と、鼻をつまみ、瞬きしないで答えるメイリン。
椎葉は伊東奏をキッと赤い目で見つめた。
鼻を膨らませて叫ぶ。
( 眠い! )
( ピシッ! )
その椎葉きよしの顔を、手の平で軽く叩く伊東奏。
クスクスッ。と優しいメイリンが笑った。
眩しさに真っ赤な目を細めてデータ入力をする椎葉。
新大阪の駅も通勤の人達もどんどん増えて、ビル群の周辺はだんだん賑やかになって来た。
朝の8時も過ぎ、次第に他の課の社員達、同じフロアーの社員達も朝の挨拶と共に出勤して来た。
( ピン♪ )
エレベータの止まる音が事務室入れ口から聞こえてきた。通勤してきた社員達の話声が聞こえて来る。
「課長、おはよう御座います。」
「ういっす。」
「おざっす!課長!残業お疲れっす!」
「ういっす。」
男性社員の後ろから、鞄の中をゴソゴソしながら、ショートヘアーでスタイル抜群、背が高く美人の女性社員が出勤してきた。
その女性社員が部署エリアを見ると、普段は岩崎律子主任が使う経理用ワークステーションの机で、画面を覗きこみながら体を丸めながら、入力する大男の椎葉きよしが目に入ってきた。
「えーマジに。やってるやってるぅ。」
椎葉の後ろを歩きながらニッコリ挨拶する。
「おはようございま~すっ!」
画面とカタログを見ながら小さな声で返事しないで入力する椎葉きよし。
( カタカタカタ……。 )
自分の机の前で、椎葉をゆっくりのぞく伊東奏。
「おはようございます。椎葉課長?おはようございます。」
( カタカタカタ、カタカタっ、あっ間違えた。 )
「……ん?」
返事のない椎葉に近寄りながら頭をかく伊東奏。
太腿にカタログを置いてキーを打つ椎葉の横に立った。
「椎葉課長~おはよう~、御座います。」
作り笑顔で顔を並べて画面を見る伊東。右目で顔を見て、いきなり鼻をつまんだ。
「うわっ臭っ!めっちゃ臭っさ~っ!オエー。」
鼻をつまんでパタパタ手をあおぐ。
「あっ……、おはよう伊東は~ん。」
( カタカタ、カタカタカタッ。 )
自分の机にカバンを置き、椎名の周りに散らかったペットボトルやコンビニ袋、鼻紙など散らかったゴミを片付ける伊東。
片付けながら話し掛けた。
「課長~。まさか姫路から帰って来て3日間も着替えてないんですか~?ご自宅近いのに。散らかしたままだったら岩崎に文句言われますよ~。微妙に昨日のお昼、みんなで出前取る位から匂ってましたけどぉ。めっちゃ、くっさ!」
その内、出社が早い社員たちも出勤して来た。
( おざーす! )
( おはようございます。 )
( なんか臭わないっすか、なんか臭い。 )
( ほんまやわ。めっちゃ臭い。 )
と、出勤した隣の課の社員たちが話をしている。
構わず、真っ赤な目で真剣にキーボードを打ち込む椎葉きよし。
「もし嫌でなければ、直ぐ着替え持って来ましょうか?課長のご自宅のセキュリティー、私の指紋や音紋登録まだ消してませんよね。姫の部屋の真下の部屋ですよねっ?寝室でしたっけ?最近、課長と姫の家に行って無いからハッキリ覚えてないですけどぉ?」
「もぅ終わるから~。それから着替えてくるぅ~。」
「え~?ズーッとやってたんですか?」
「カナちゃん眠くて死にそう。くたばる前にコーヒー頼んでいい?」
「はいっ喜んで。生きている間にコーヒー作ります。」
「ありがとう。余命いくばくもないので……あっ間違え。あらら。」
そこで、スマハンドが鳴った。
( ♪♪ぷるんぷるん、ぴっぴ♪♪ぷるんぷるん、ぴっぴ♪♪ )
( おい!シ~(椎葉きよしのニックネーム)か? )
幼馴染で友人の小林からの通信。
( 「コバ」(株)高崎薬品 天神橋 本社 )
の表示。
「うぃ~なんじゃ。えらい早いがな。パソコンとラブラブの最中~。なんや朝早く。」
コーヒーの準備をしながら、チラッとのぞく伊東の奏。
( 何しとん、オッサン。家か?会社におるんか? )
と、コバ。
「んにゃ、見て分からんかぁ。会社じゃボケ~。」
( えっ?なんで会社やねん。これから間に合うんかいな。 )
「残業で徹夜~あっ!あっボケッ間違えたやんけ!ったく。コバっ!もうっ。」
( カカカッ。鈍臭っ!だからシ~!今、何時じゃ。 )
「ん~残業2日目の金曜日の朝~。会社命令の(強制、10日間連続休暇)の初日ですやんかぁ旦那。それやのに、過剰なサービス残業で会社法バリバリの違法行為、懲役半年以下か90万円以下の罰金中~っ。あ~っ眠いっ。ぐあ~。」
( 何、こいてんだか、おいっ!シー。 )
2人のやり取りを聞いて、ニタニタ笑いながらでウォーターサーバーできよしのカップと自分のマグカップにお湯を注ぐ奏。
「あ"ぁ~またやってもた。落ち着け……落ち着け俺。うっし。もうすぐ終るから待ってろよコバ。待ってろ~。」
( シ~!だから今、何時~って言ってる。 )
怒り気味の小林。
「……えっ?ん?」
アニメアイドルの声優サイン入り卓上時計を見るきよし。
付箋に書かれた文字。
( 金曜は9時半より小バカの治験 )
と、書いてあった。
「あらまぁ治験やんか。9時半からだっけ?」
カタカタ、カタカタッ。急いでキーを打つきよし。
( 何があらま治験って、ほんま頼むで~!ほん~まに、ほんまに。治験、間に合うか?コラっ、オッサン!聞いとるか。 )
伊東がコーヒーを置く。
「カナちゃん有難う。」
ニッコリ、手をパッと指を広げて挨拶する奏。
カツカツカツと、ヒールを鳴らしながら席に戻る。
席に戻ると、目をつむり高い鼻をツンと上げて、両手でマグカップを持ってコーヒーを飲み始めた。背中をポリポリと搔きながら、チロッと椎葉を見てマグカップに口を付ける。
「あ~ほんまにやってた。ふ~ん。エル兄ぃは、やる人なんだ。2日間ノンストップ。わしにゃ無理、無理。絶対、無理。ぐあ~ぁ、まだ寝たりないしぃ……ズズズッ。」
手を添えて大あくびをしてから再び、コーヒーをすする伊東。
そこへウキウキオーラ発散しながらニコニコ顔の黄メイリンが出勤してきた。
( おはようございます~、うひひひっ! )
「あっ、メイ~わはようぅ。」
伊藤奏があくびの続きをしながら、手を口で押えて挨拶した。
「課長ちゃん!おはようございま~すっ!伊東主任おはようございま~す。」
ツカツカとコーヒーと飲む伊東に駆け寄る黄・メイリン主任代理。
「あっマジで課長ちゃん2日間、徹夜してたんですか?カナちゃん?」
と、メイリン。
「みたいね!目が真っ赤。」
両手の指で目を見開く伊東。
そして襟足を摘んで臭いを嗅いでオェ~臭い、臭いゼスチャー。
「うひひひ。徹夜、お疲れ様で~す。課長ちゃん~。」
「メイちゃん、おはょぅ……。」
と、画面をみながら手を振るきよし。
「ふ~ん、じゃ、メイリン。愛情たっぷりメイリンコーヒー入れますね?」
マグカップを持ちながらメイリンに答える奏。
「あっメイ!今、課長に頼まれてコーヒー入れたよ。」
コーヒーを机に置き、引き出しを開いて筆記用具を出す奏。
「えっ?カナちゃん先に入れたんですか?な~んだ。」
カバンからお姫様道具、モロモロを机に置くメイリン。
「愛情たっぷり!メイリンオリジナル本格コーヒー入れよう!と張り切って早めに会社来たのに。がっかりするメイリンだったのだ。うひひっ。」
腕を後ろに組んでゆっくり伊東に近づき、横に立ち覗きながら。
「カナちゃん何時に来たんですかぁ?気になるぅ、気になるメイちゃんであった。うひひっ!」
一言、言ってサッと、自分の机に戻りリップを塗るメイリン。唇をへの字にして、つまらなそうな顔で話す伊東奏。
「愛情たっぷり~メイリンオリジナル本格コーヒーって、事務所には粉のインスタントしかないけどォ。ウォーターサーバーのお湯に、粉入れて終わりだけどぉ。」
「あっ?バレましたキャハハー。でも、今、まだ8:00ですよ。早過ぎませんか~!カナちゃん。」
( 朝から、いじる気満々なんだなこの娘は。今日、水曜朝礼だから書類整理に早く出社したの。 )
コーヒー飲みながら細い目でジーとメイリンを見る伊東。
タイピングしながら朝のオッサン同士のゆるゆる対話をする椎葉。
「コバ、ちゃうねん。あれやあれ、ほれシラスだかチラスとかなんちゃら最近売り出してる、恐ろし軍の納品書、今日まで必要なんやて。何があるかよう知らんけど、ポー支社に納品書確認してから振り込むらしい。それで大急ぎ納品書・請求書作りでんがな。(知るかっ!)そう言うなって。ポーランド軍はデジタルデータで残したくないらしい。(あー成る程。って、早よーせいや!)わかっちょるって。(早ょー!)だからさ、昼までに作って送らないと。ポーの時差は7時間。(知るかー!)コバ!じゃかしー!もう、頑張れ俺っ。頑張れ俺っ。」
カツカツカツ。
ヒールを鳴らしながら書類を持って横に立つ奏。
( カタカタカタ……。ゲッ、カタカタカタ。 )
横に立ったまま、鼻をつまんで冷たく棒読みする奏。
「昨日、総務から25日の締めがあるから早めに先週の広島と今週の姫路の出張経費、申請して下さいと催促がありましたよ~。(そう?カタカタカタ。)25日は日曜日。明日、土曜日で会社は休み。だから今日、金曜日が締め日。(へいへい。カタカタカタ。)宜しくです課長。あの~課長聞いてる?処理が遅れて私が困ります。」
「ん?あっ、そうだった。」
きよしは、ズボンのポケットやら、上着のポケットをまさぐる。
「え~、あらら。姫路の領収書、姫路の領収書……。」
と、言いながら上着のポケットからジャラ銭や会社の法人カードやらグシャグシャの領収書類を出した。
「了解、カナちゃん。もう終わるから申請書、そこに置いてくれ。(カタカタカタ。)」
「了解。」
置いた書類の上に、領収書などモロモロを手ですくって、椎葉の課長席に置くカナちゃん。カツカツカツと席に戻った。
また小林が椎葉きよしに話す。
( シー!交通費で5,000円渡すし、承諾書とか書類にハンコか、サイン必要。ハンコあれば持って来いよ。……聞いてるかオッサン。 )
小林を無視して、突然手を合わせる椎葉。
「神様の巡り合わせ!今、今、おわ~りました。はい~っ!終了~でっすぅ。終わったぁ腹減ったぁ!」
( ぎゃー!ぐわーっ!かーっ眠いっー! )
両手を上げて大あくびをする椎葉。
「えっ!マジに終わったんですか?」
ぬっ!と反応する伊東奏。
「課長ちゃん、終わったの?」
目を合わせる伊東奏と黄メイリン。椎葉に駆け寄り画面を見るOLの2人。
「課長ちゃん凄い!凄い~!」
「だべぇ~、すげべ~!俺もよ~やるわ。2日の徹夜なんて、この歳でさすがないわぁ~。なぁい、ないーっ。」
ウキウキメイちゃんがさらにウキウキして横に立った。
「ハイ!倉庫の奥から埃だらけのカタログ、探した甲斐があります~。やったー!課長ちゃん。」
「えっ?そーなの?早く言ってよ。有難うメイちゃん。余計な仕事させたね~。」
右手を上げるメイリン。
「ハ~イ課長ちゃんっ!」
( パシン!パシン! )
ハイタッチする2人を、腕を組んで額にシワを寄せ、背中でみる奏。
「フン!」
( ワシがほとんど書類、運んだっちゅうねん!メイはダンボール発見しただけ! )
突然、奏がタッタッタと2人の間をねじるように割り込んだ。
「椎葉課長?データ、ポー支社に送りましたか?」
無理矢理椎葉のマウスを奪って、豊かなバストを椎葉の横顔に当てたまま画面の納品書を確認する伊東奏。
「ぐわっ。あらら有難うカナデ様、寝不足でボケて……危なかったけど、これちょっオッパ、オッパ、オッパィ。」
( 何だ?コラッ、シー。何しとん。朝っぱらからキャッキャッ騒ぎおって、ぶち殺すぞ!話聞いてるかコラ、シー! )
と、小林が叫んでる。が、お構い無しの3人。
座ったきよしの体が斜めになり、からだが椎葉に引っ付いたままデータを確認する伊東奏。
横では積み上がったカタログ本を段ボールに仕舞い始めるメイリン。
同じフロアの男子営業社員が机から、首を伸ばしてのぞき始める。
( うわ!朝から羨まし過ぎる! )
( うわ~カナデちゃんと。課長羨ましい。 )
と、泣く他の課の男性社員たち。
「本当に出来てますょ。課長。(パシンっ!)」
睡魔に襲われて、ボヤーとしている椎葉の肩を叩いた。
伊東が腰に両手をあてて起き上がった。
「ほな、早う認証してから送信してくれへんと。課長。」
「ホンマ?(はい、出来てますやんか。うん、うん。)ヨッシャ!ポイポイの~、ポイッ!ハイ送信~ッ!スミス部長終わったよ~!」
「キャハハ~。やりましたね課長ちゃん。」
キャピキャピしてるメイリンと対照的に、マウスを持ってジーっと画面を見る伊東奏。また前のめりでマウスを持って確認し始めた。
椅子をクルっと回すきよし。ガッツポーズをした。
( ウシッ! )
「俺偉い~。カッチョええだろ俺、見たかバカ姫。やった~!お嬢様2人有難う~!ハイ、タッチ~メイちゃん~!ハイっ!カナちゃんタッチ!」
画面を操作しながら、嫌々マウスの反対の手を出してタッチする伊東奏。
「ちょっと課長?課長!小林さんは?」
と、マウスを持った肘で、椎葉の肩を押した。
( な~にがハイタッチ~じゃ!ボケーッ!こらっシー絶対来いよ!待ってるからな! )
と、自室で叫ぶ小林。
大あくびをしながら、薄目で小林を見る椎葉。
「ぐわー、はぁー!かぁー!なぁコバ、行く前に寝ていい?ちょっこっとだけ。この歳で連チャン徹夜はシンドイべさ。」
( キーッ!……駄目! )
「プツッ……」と、終わるコバ通信。
「あ。」
赤い目で放心状態の椎葉。
「通信……切れたね……。」
と、椎葉。
「……切れましたね。」
と、メイリン。
きよしが放心状態のままで画面を見ている。
「替わりにコバの治験行ってくれるかなぁ、メイちゃん。」
同じく画面を見たまま、鼻をつまむメイリン。
「……駄目。そして、すんごい臭っ。」
と、鼻をつまみ、瞬きしないで答えるメイリン。
椎葉は伊東奏をキッと赤い目で見つめた。
鼻を膨らませて叫ぶ。
( 眠い! )
( ピシッ! )
その椎葉きよしの顔を、手の平で軽く叩く伊東奏。
クスクスッ。と優しいメイリンが笑った。
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この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。
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ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )
あおっち
SF
とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。
そして、戦いはクライマックスへ。
現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。
この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。
いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。
次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。
疲れたあなたに贈る、SF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲
俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。
今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。
「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」
その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。
当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!?
姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。
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第8回歴史時代小説参加しました!
ぼくらの国防大作戦
坂ノ内 佐吉
SF
始まりは、周人に届いた一通の脅迫メールだった。メールの主は2065年からタイムスリップしてきた未来人。
数年後に第三次世界大戦が勃発、日本に核ミサイルが落とされると言う未来人の話を聞いて、周人とその仲間たちは、日本を救うためのミッションに加わっていく。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
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