「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち

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第11章 (株)関西国際医療 第1営業部、営業3課。

第1話 徹夜明け

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 西暦2062年、6月23日、金曜日の朝。
 
 通勤が始まったリニア新大阪駅。
 その新大阪を望むビル群。その1つのビル内部。

( カタ、カタカタ、カタカタ。 )
 
 キーを打つ音が暗い事務室で聞こえて来る。
 その暗い事務室のフロアー全体にパラパラパラッと天井照明が付き始めた。

( キュッキュッ、キュッキュッ。 )
 
 閉めたブラインドを自社の主任警備員、三田主任が回して開ける。
 更に明るさが広がるオフィス空間。
 
「お疲れ様です。椎葉課長。」
 
「おざっす……。」
 
「椎葉課長、2日目の徹夜ですね。身体、気ぃつけて下さいよ。ホ~ンマに。」
 
 画面を後ろから覗く警備社員の三田主任。
 
「昨日も徹夜っすよね課長。今日もビル管理残業申請書、代わりに書きましたやんか。ハンコもらいます課長。このビル管理申請だけはネット印がダメなんすよ。ウチ(関西国際医療)は勤怠とか、警備や勤怠とか、セキュリティー案件は全て本人の実印ですやんか。軍属社員が多いからかなぁ。産業スパイの警戒か?」
 
「うぃっす!はい、主任。」
 
 引き出しから印鑑を出して三田主任に渡す椎葉。印鑑を突いてから、椎葉きよしの脇から画面をのぞく三田。
 
「うわっ、臭っ!めっちゃ臭っ!椎葉課長!」
 
 鼻をつまみながらハンコを机の中に戻す三田。
 
「カカカッ!残業加齢臭じゃ!アハハハッ。そうだ、三田主任は今日から夜勤明けしょ?また、岩崎のリっちゃんと姫路の新舞子の潮干狩り行くんかい?」
 
 タイピングしながら話す椎葉。
 
「やだな~課長。今~6月やん。潮干狩りは先月、新舞子は5月に行きましたでぇ。姫路に2人で行った潮干狩り。捕ったニョッキ貝、課長の家で課長が焼いてくれはりましたやんか。美味しかったのに。酢味噌あえとか、スンゴイ美味しかったやん。忘れたん課長?黄(ホァン)社長も居ってビックリ!しましたやんか。なんで、うちの社長が課長の家で、2人で野球中継見てるって。どこの友達やねん。ホンマにびっくり。おかげでリっちゃんと付き合ってるのバレてもた。」
 
「せやねん、忘れとった。徹夜ボケや。すまん。すまん。リっちゃんと一緒に来はったな。はははっ。逆に社長が居って良かったやんか、ちゃうか~っ。」

「いやいやいや、良かったってホンマですかぁ?」

「あはは。結婚式の時は、社長の奥さんは亡くなって独身やからっちゅーて、自宅のお手伝いさんの岸和田のバアさんと2人で仲人してくれはるッちゅーて、良かったやんか。ニョッキ貝の縁いうて。はははっ。」
 
「もう、他人事やんか、課長!もっ。はははっ。でもマテ貝、素焼きも美味しかった。」
 
「せやな淡白な味で。来年も、りっちゃんと新舞子に潮干狩り行ったらニョッキ貝たのむわ。俺もアイドルマネージャ時代、子供と北海道のバー様と、メンバー連れてぇ新舞子で短期合宿したやんか。合宿の後、姫路城で本物のアイドルの代打でコンサートってなって、あれっ?岩崎の~リっちゃんと言えば~、せやせや、んっ?」
 
 何かを思い出し、ガサガサ書類の山で、書類を探す椎葉。
 
「有った有った。岩崎のリっちゃん。明日?ちゃう、今日はもう金曜かいな。今日と、えーと来週の月火と、有給申請が出とる。りっちゃん達5連休やんか。ちょ、ちょ、あれ~岩崎だけやなく、うちの3課から、1、2、3、4、5枚。ん?6、7枚って。えっ、えっ有給が5名申請出てるやん。何なん?三田主任なんかあるん?みんな理由の詳細書いてないから何で休むか解らんし。あっ、ボケてる。あっちゃー!たしか、先週のミーティングで聞いとった。詳細忘れたけど。普通、有給は所属長の承認が……、んっ?黄社長の承認を得ています。って全部に書いてあるし。あっ、メイリンも今日の昼から早退だって。あらら、検印。必死で納品書作って、全く書類見てないから解らんかった。んっ?奏ちゃんの稟議書?パラオ?って。まぁ~ハンコ。三田主任のおかげで気が付いたがな。ありがと、ありがと。」
 
 あわてて、書類に所属長印を押してから立ち会がり、伊東奏の机に書類を置く椎葉。歩きながらニコニコして話し掛ける。
 
「三田主任、リっちゃんの実家の姫路だっけ?加古川だっけか?釣りでもするん?ちゃうか。」
 
「はははっ。僕の実家が姫路の加古川で、りっちゃんは淡路です。今日の夜勤明けは予備役の機動モービルの新型HARMORの訓練です。リっちゃんと二人で4日間、しごかれにいきますやんか。」
 
「ほ~予備役で、ロボット乗るんかいな。新型って。あ~せや!せやな。千歳から教官で早乙女のボケが来るんだった。来週月曜日から、俺の自宅に泊まりたいって、新大阪にくるって。止まる部屋無い!っていったら新大阪のホテルに泊まるとか何とか。はははっ!お前たちに稽古つけるんかいな。しらんけどぉ。」
 
「えっ!課長!今をトキメク、千歳シーラスワンの早乙女教官知ってはるん?」
 
「まぁな。へえ~早乙女のガキが教官か。今をトキメクってなんだべ。はははっ。」
 
 ものおじせずに、きよしに話す三田主任。
 
「シバの神の再来とかで、私たち、保守系の軍人のSNSでは有名人ですやんか。第2のシバの神!無敵のシバ神の再来って言ってますやんか。」
 
 なんとも言えない表情でごまかし笑いをする椎葉。
 
「シバの神って。はははっ。」
 
 首を揉みながら、微妙な表情をする椎葉だった。
 
「だから、課長?早乙女教官のお知り合いなん?」
 
「あははっ!ふ~ん。まぁ、たまたまな。(そうなん。)北海道の実家の近所の悪ガキの一匹だ。昔からな。(え~!マジっすか!)せやねん。妹のオディア、エルなんか目当てに大阪へ来るけど、誰も旅行に行って、いいひん!って。カカカッ。とにかく三田主任、(はい。)無理はアカン。なんせ予備役なんやし。(は~。)しっかし、なんでうちの会社、予備役軍人が多いんかな。(多いですよね。)なー?三田主任。(はい。)社員の3割やんか。(そうですよね。)まあ、俺の課の12名、俺以外全員女で、それも全員予備役って。あーヤダヤダァ。(はははっ!)課の打ち上げの飲み会に行っても、女12人。義理の妹のエルジビエタとか皆、軍やら自衛隊やらの訓練の話とか、実戦の時の武勇伝とか、装備の話とか。どこの軍隊やねん。おまけに俺の嫁も現役の軍人さんやんか、(え!マジっすか。奥様軍人なんすかっ!)せやん!あ~ヤダヤダァ。(そう、言わんと。羨ましがってる社員、多いっすから。)そうなん?(ホンマですよ。)ふ~ん、課の飲み会いっても俺、浮きまくり。(なんでぇ。会社の美人は課長の課に一点集中なんすから。美人課ぁ~なのに。)いやいやいや、まぁ、黄(ホァン)社長の特命課で、この課は社長命令だから……シャーないけどぉ。(ふ~ん。)ところで、訓練は南港の自衛隊の射撃浮島でやるん?」
 
「ちゃいますよ~課長~。今回の訓練は母艦搭乗で衛星軌道上でんがな。」
 
「えっ、そら(宇宙)、上がるんかいな?」
 
 つんつんと、親指を立てて、話す椎葉。
 
「そーですよ!だから今日の昼に。めっちゃ眠いのに、橿原に集合してから、自衛隊のビッグマム(超大型急襲攻撃型武装オービター・シャトル)で千歳に行きますやんか。千歳で2日、訓練やもろもろしてからそのまま、ビッグマムでそら(宇宙)に上がる予定でぇす。民間人の課長には解らないと思いますが、予備役も大変なんすよ。ホンマに。ホ~ンマにですよ。」
 
「へー。知らんけど。ウチの課の岩崎も予備役って、リっちゃん、あのロボット乗って何するん。」
 
「何するんて、課長。リっちゃんは衛生兵。特殊な救助用医療HARMORに乗っておますわ。ものごっつー優秀でんがな。リっちゃんは。可愛いだけじゃおまへんよ~課長。」
 
「よ~って。アホッ。のろけよってからに。でも、でもリっちゃん可愛ええな。ええ彼女作りおってからに。いつの間にか、手ぇ~出しよって。コイツ。」
 
「いやいや、いや。まぁ自慢の彼女でんがな~。えへへ。」
 
「えへへ言うな。朝からのろけるなボケが。腹立つホンマにぃ。」
 
 エヘヘヘッ。と警備帽を脱いで頭をかきながら照れる三田主任。
 
「月曜日は丙(あき)の克弘も、実家の隣の甲賀のよっちゃんも来るゆうっとたし。俺達はおらへんけどぉ。カカカッ。甲乙丙のボケどもヲタが。はははっ。でも三田主任とは入れ違いで、違う任務なんかな?正規と予備役はちゃうんかな。良く解らへん。カカカカッ。」
 
 画面を見ながら意地悪そうに笑うきよし。
 
「……。とにかく歳なんだから無理せんでください。課長。失礼します。いい加減に、むっちゃ臭いですよ~。服位ぃ~着替えてくださいな。はははっ!」
 
「了解っ、了~解!了~了~!三田主任も訓練、ほどほどにな。まぁ、2人でがんばれ!」
 
( 了解で~す。 )
 
 腕を上げて挨拶する三田主任。他の部屋の巡回に回って行った。

 再びデータ入力に戻る椎葉きよしだった。
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