「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち

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第3章 発見、ゼロ・スターター。

第2話 ヒロシ・ミフネを連れ戻せ!

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 落ち着いて冷たい目線のボイス大佐。女軍医を冷ややかに、ドヤ顔で見下している。

 大佐は銃を机の上に置き、腰が抜けてしまったジェーンに対し構わず立ち上がり、叫ぶ様に大声で話した。
 
「他言無用。意味は解るな!」
 
 嗚咽しながら口と胸を押さえ、うなずくジェーン。
 
「軍医!彼は、そのヒロシ・ミフネは?収容所にいるのか?」
 
 大佐は、床で膝を抱いて体育座りのまま、震えて泣いているジェーンの横に歩いて行く。
 床に響く大佐のハイヒールの音。

( コツ、コツ、コツ。 )

 スカートの裾を、膝裏に織り込んでしゃがむボイス大佐。
 耳元で囁くようにジェーンに話かけた。
 
「さあ、ミフネを呼んでらっしゃい。ジェーン・ゴールドウィン軍医殿。」
 
「さ、先っ、あっ、朝一番、日本行きの復員船、ミッ、ミフネは港に!」
 
「ノー!いかん!連れ戻せ!私もペンタゴンに連絡する。」
 
「ペンタゴンッ 。」
 
 聴き慣れない言葉を思わず復唱したジェーン。立ち上がった大佐を恐怖のまま目で追いかけた。
 大佐は机の上の銃を取り、床に座るジェーンの所で横に、再び一緒にしゃがんだ。
 そして、再び銃口をジェーンのアゴに、ピタッと付けた。
 銃の上から、ヌっと顔を近づけるボイス大佐。
 
「よく聞いて。死にたくなければ、私も、あなたも。OK?あなたが港に向かいなさい。いい事。必ず連れ帰るのよ!もう一度言うわ。」
 
 ゴクッとツバを飲むジェーン。
 銃を向けたまま、ゆっくり立ち上がるボイス大佐。
 
「何があっても、必ず連れ帰るのよ!解った?」
 
( イエッマムッ! )
 
 ジェーンは、ミフネが戦争とはいえ、戦争犯罪人で200人以上殺害したから極刑。その兵士を逃した大佐、そして私も犯罪幇助はんざいほうじょ(手助け)で死刑になる。と、勝手に勘違いをした。
 
 とっさに、ジェーンは立ち上がり部屋を飛び出した。

( ガッチャ!タタタッ! )
 
 大佐はガラス壁のブラインドの隙間から部屋の通路を走り去るジェーンを確認してから、机から垂れ下がる受話器を持ち直した。
 
 椅子に座り直し銃を引き出しに仕舞った。
 
 カチャ、チンッっと、一度電話を切り、受話器を持ったままダイヤルを回してかけ直した。【お華の補足】
 
「ボイスです、准将閣下。え~、えっ。解りました。ハイ、彼女は港に向かいました。車を手配します。えっ?ウシハクル(敵の異星人)の通信波をピーター(味方の人工知能)がキャッチしたと。」
 
 立ち上がり、天井を見るボイス大佐。
 
 この収容所はまだ、敵星からの遮蔽シールドをしていなかった。
 それを悔やむボイス大佐姿の異星人だった。
 
「ウカツでした。えっ?閣下?ハイ。ハイ。えっ!マジっ?良かった。本当ですか?やはり彼がゼロ・スターターで間違いないと、確定したんですね。本国、宮内庁のARTS(Attack Response and Tracking Satellite:ネイジェア星域帝国の攻撃型迎撃追跡衛星)がミフネを登録、保護監視を開始したのぉ。やったー!よかったぁマイケルッ!あっごめんなさい准将閣下。でも、ウシハクルの手回しの早い……ハイ、ハイッ、成る程。ARTSがウシハクルの遮蔽監視衛星を撃破……成る程、ここで彼を保護するより日本に戻した方が良いのですね。あ~、日本上空には、監視衛星ジンムが。あ~成る程。彼女を、ジェーン・ゴールドウィン軍医をミフネ保護に向かわせてしまいましたが……。ハイ、すぐに手配いたします。成る程、あ~復員船の「ゆきかぜ」を30分早くに。はい、解りました。では閣下が復員船にご連絡を。えー。はい。イエッサー!」

( チンッ! )
 
 電話を切ってから、深く椅子に座り、両手の握りこぶしを作ったまま目を閉じて喜ぶボイス大佐。
 そして、歓喜の声を上げた。

 ( よし!やったー! )
 
 天の川銀河の異星人たちが、長年血眼にして探していた天然ジャンプ血清のゼロスターター、(御舩ヒロシ)をようやく発見し、確定したのだ。
 それも自分の皇国国家がいち早く保護したのだ。
 歓喜の声を思わず出してしまった異星人の彼女だった。
 
 その声が士官室から聞こえて来て、一瞬タイピングを止めるオペレーターの女性達。
 お互いの顔を見合って、はにかんでからまた、タイピングを始めた。
 
 大きな声を出した自分にビックリして、手で口を塞いだ。
 大きな目をキョロキョロするボイス大佐。
 焦ってブラインドを指で少し開いてタイピングルームをそ~っと覗くと、普段通りにタイピングする女性達がガラスの向こうに映っていた。

( ん?ん~?……よし! )
 
 何事も無かったようだ。
 深呼吸をしてニッコリ笑顔になるボイス大佐。
 気を取り直して長く上品に伸びた中指でチンっと電話を切り、すぐに受話器を手に持ったまま電話をかけ直した。
 
「ゴホンッ!」
 
 咳ばらいをして、背筋を伸ばしから渋い声で話始める。
 
「私だ。至急、頼みたい事がある。車を収容所、寄宿舎の正面に回して欲しい。」

 椅子に深く座り、腕組をしてから湧き上がる喜びで思わず笑いになるボイス大佐へ化けた、異星人だった。

(( バタンッ! ))

 収容所の職員が住む寄宿舎のドアから若い女性が飛び出して来た。
 
( やばい、やばい~!やばい、やばい~! )
 
 陸軍制式のベレー制帽と制服スカート姿の女性が大急ぎで出て来たのだ。

( やばい、やばい~!やばい、やばい~! )

 軍制服に着替えたジェーンは、地図を持ちながらボイス大佐が用意した空軍のシボレーの後部座席に飛び込んだ。
 無造作に車のドアを閉めるジェーン。

( バンッ! )
 
「ジェーン・ゴールドウィン博士ですね。ボイス大佐からお聞きしています。ドク?決まりですので確認を。」
 
 MPがジェーンの身元を確認する。
 ジェーンは胸のIDを見せると同時に、ドライバーのMPに震える手で地図に指さしながら行き場所を大急ぎで伝えた。
 
「ジェーン・ゴールドウィンです。テキサス港まで、お願い!急いで!」
 
「イエッマムッ!」

( ブッブッ、ブ~ン。 ザザーッ! )
 
 砂利を飛ばして車は、急発進した。
 テキサスのだだっ広い草原を走り始める軍の黒いシボレー。

 何処までも続く一直線の道を飛ばして行く。
 黒いシボレーは、草原に咲く黄色一色のお花畑の路を、埃を上げながら走って行った。
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