6 / 47
第2章 アメリカ陸軍、テキサス捕虜収容所。
無敵の日本兵。その名は「ヒロシ・ミフネ」
しおりを挟む
大袈裟に手を広げるボイス大佐。
「無傷、完治。解る?ナッシング。次の日には傷跡もあなたが縫ったデタラメな縫い跡も無いのよ。縫った糸はどこにいったの!まったく。」
ボイス大佐は、唇を噛み締めて無音で、ゆったり回る天井のシーリングファンを見つめた。そして、イスから立ち上がり、外の収容所の様子を外窓のブラインドの隙間から見た。
そんな大佐を目で追いかける女軍医。
ボイス大佐は首を振りながらまた、笑いながら呆れて、しゃべり始めた。
「あー。彼には、……本当に。クレンショー伍長には済まない事をしたわ。あ~まさか、まさか……本当に有る事だなんて。」
ブラインドの外を見ながら腰に手を当て、下を向いて額に指を当て、独り言を言うボイス大佐。
「ハッ?何の事ですか、誰ですかクレンショー伍長って?あまりに酷い縫い方でその伍長が治してくれたの?翌日には完治だなんて!凄い方です。魔法かしら。どうやったら翌日に完治するの?もう、そのような治療薬が開発されているのでしょうか?もしそうでしたら、私のレポート撤回します。テキサスの収容所に配属されて、頭がイカレタと思われます。」
レポートを返せとばかりに手を差し出す女軍医を、大佐はまぁまぁと女軍医を手で押さえた。
また机の上に置かれた診断書の患者の名前とレポートの患者の名前を両方を、指で差した。
「ただ、診断書の捕虜の名前はグンソー・フクダ。レポートと名前が違うじゃない?ね?これよ。」
「それは、ここ収容所での名前は、偽名です。本名はヒロシ・ミフネです。」
「ん?何故、偽名とわかるの?」
「昨日、本人と、他の日本兵にも聞きました。」
大佐が再び椅子に座り、両手を組んだ。
「ふふふっ。いつも転任したての軍医、特に白人の女医はアジア人をものすごく嫌がるけど……気味が悪いって。戦時中のプロパガンダのせいだとは思うけど。黄色いサルは知能が低いって。新聞で、日本兵の頭蓋骨を本土まで送ってきた記事とか、アナタ見なかった?写真付きでよ。プロパガンダの極みよ。ほんと恥知らずの記事。どう?」
「え?そうですか。ヨーロッパに居たので、よく知りません。」
「まぁでも、よく貴女は自分から近くまで行けたわね。まだ、転属して5日目でしょう?彼らは、何と?アナタは日本兵と話をしたの?」
と、ボイス大佐。
「イエスマム。通訳を通してですが、彼らはミフネの事を不死身の分隊長、鬼の分隊長とか。」
大佐は聞き間違えたか?との表情で耳たぶに指を当て聞き直した。
「不死身?何ですって?」
「そう不死身の、死なないの意味の。ここ、テキサスに回されたアンガウル・ペリュリューでの生き残り8人全員が同じ事を言います。本人にも会って名前を確認しました。ヒロシ・ミフネで間違いないと。アンガウルでは戦死した戦友の名前で戦っていたと。それで昨晩、レポートの名前をすぐに本名に書き直しました。」
私も呆れたと、両手を開きゼスチャーをしながら女軍医は話し続けた。
再び立ち上がりガラスの壁に立ち、腕組みをする大佐。構わず話を続ける女軍医。
「たまたま、昨日の昼。ワシントンから検閲にいらっしゃった軍医殿、医療部長の、元空挺部隊で従軍医師の少佐と昼食をご一緒しましたの。」
ガラス壁のブラインドの前に立つ大佐が、突然!振り向き鋭い眼光を女軍医に向けた。
「ん?あー!元ワイルドキャッツ、第八十一歩兵師団の従軍外科部長の?マイケル・マズル少佐の事か!」
突然、強い態度になる大佐。
少し驚く女軍医だった。しかし、気の強い女軍医。
彼女も負けずに返した。
「そうです!そのマズル少佐ですわ。」
少し興奮気味の軍医。
「パラオのペリュリュー島は、星条旗の旗揚写真で有名となった硫黄島に次いで、激戦地として有名になりましたが、隣の島、アンガウルは米国にとって更に最悪だったそうです。1,259名の日本兵に対し上陸した約21,000名のアメリカ兵の戦い。アメリカの戦死傷者は2,559名。軍の機密事項ですよね。」
と、下を向く女軍医。
「私も聞き知ってはいるが。」
ボイス大佐は下を見ながら話を続ける女軍医の目線を確かめて、ガラス壁のブラインドを全て外から見えないように、静かに締めた。
( シャカシャカシャカ……。 )
「マズル軍医殿と私は2人ともポーランド人で、話が盛り上がってしまって。誠実でユーモアがあるお方で、」
話が脱線しそうになり、大佐の視線を感じて赤くなる女軍医。
「ゴホンッ!失礼しました。ただ、お話の中で、信じられませんでしたが、」
大佐の顔を見て、人差し指を上げ興奮気味に話続ける。
「たった1人。たった1人ですよ。大佐。1人の日本人に200名以上の兵士がやられたと。もしかしたら間接的には、300名以上のアメリカ兵がやられたかもと仰ってました。」
「えっ?1人の兵士で、そんなバカな。ふふっ。」
「いえ、事実みたいです。私も疑って話を聞いたのです。でも、アンガウル、ペリュリューで味方の遺体を検死したのも、重症者を治療したのもマズル少佐ですので間違い無いと。負傷者、戦闘による死亡者の検死・統計報告はマズル少佐との事でした。」
「あははっ。そんな、1人の兵士でそんなに味方の負傷者が出るなんて。世間に知れたら、大変な事になる。戦時国債が暴落するわ。ふふふっ。」
半分、バカにしながら上目使いで女軍医をみるボイス大佐。
そんな、態度に構わず話を進めた。
「はい、マム。たとえば、日本兵が占拠した洞窟の前で、すでに日本兵は一掃されたと油断した米軍が、生き残りのそれも、たった1人の日本兵と戦闘になり見方が大勢やられたと。その時、敵の、その日本兵も重傷を負ったハズなのに、翌日また同じ日本兵に中隊が襲われて全滅したと聞きました。その中隊長の、テイラー少尉。いえテイラー大尉が自由ポーランド軍の降下部隊でご一緒だったので間違いないと。」
少し高揚しながら話す女軍医。
ボイス大佐が、腕を組みながら自分の机に腰を掛けた。
「なるほど。あなたはその話、少年の妄想みたい話を信じるの?無敵の兵隊だなんて。サムライは無敵みたいな。はははっ。全く。あり得ない、あり得ない。そんな話を。今、GHQのマッカーサー元帥の日本占領が始まったのよ。そのサムライの地、日本の占領が始まった時に。あははっ。もう、日本に上陸した兵士が間に受けたら、パニックになるわ。あははっ。」
「はい。話の序盤ではありえない作り話と思って聞いていましたが……マム、」
「聞いていましたが、って何?」
「はい、日本軍との戦闘に決着がつき、アンガウル・ペリュリューでの占領も終わり、本格的にペリュリュー島で空港の建設が始まった時、それが始まったと。」
「えっ?なにが始まった?」
眉にシワを寄せ、思わず本職の記者に戻り、メモ用紙とペンを用意するボイス大佐。
「それが大佐。毎晩、恐怖の爆発事件が多発したらしいのです。」
「そんな作り話。ペリュリューや東南アジア方面から戻った、私の通信社の従軍記者からも聞いてないわ。爆発事件って、初耳よ。クレンショー伍長も爆発事件は言ってなかった。」
「そうですか。それも死んだはずの日本兵、そのサムライが何度も行っていたらしいのです。最初の出会いはアンガウル。重症の彼を治療したらしいのです。でも翌日は脱走したと。」
「死んでから翌日って。そんな。」
「私も疑いましたが全身、創傷や銃創が多数で、撃たれた後なのに。翌日から脱走したらしいのです。」
「……馬鹿馬鹿しい。それで?」
つい、馬鹿馬鹿しくなり、ペンを収めたボイス大佐。
「はい。そして、2回目に彼と出会ったのはペリュリューの本部キャンプとの事です。」
納得いかない顔のボイス大佐。眉の上を指で掻いた。
「その時は頸部、首を撃たれ銃殺されたらしいのですが、遺体で運ばれてきたと。その遺体を、マズル軍医殿が戦死判定を出したと言っておられました。それなのに遺体置き場に3日間放置していたら突然いなくなったと。」
「は?何っ?そんな馬鹿な!」
「戦場を渡り歩いたベテランの医師が死亡を確認したんですよ。その遺体が遺体置き場から行方不明に。捜索したその夜、燃料倉庫や弾薬置き場を爆破されたらしいのです。」
鼻で笑いながら話すボイス大佐。
「はははっ。もう、ありえるの?そんな作り話。いい加減な。マズル少尉ってそんな人だったの。」
「いいえ、マム。彼はまじめな方です。そのマズル少佐殿が、間違いなく仰っていました。」
「たしかに、私の取材したクレンショー伍長は確かに、グンソー・フクダは傷の治りが早く、すぐ傷が治ると脱走しそうになるので、体当たりして止めた事があったとは言っていたのよ。」
「でも、そのグンソー・フクダがここに居るのです、マム。」
「わかっているわ。でも爆破事件までは聞いてないな。ん~まぁ、軍の機密に関わるのかな。驚異の回復力か。でも、あなたのお父様が作る映画じゃないのだし。」
「あっ、父をご存じで?」
「あなたのお父様、敏腕プロデューサー、ゴールドウィン監督は全米の皆が知ってるわよ。」
「ありがとうございます。それで、その軍医の話から私が興味を持ち、グンソー・フクダと呼ばれる日本兵。そのサムライに興味が沸いて、今日の朝に彼を呼び出して検査をしたらなんと、回復している……本当なんです。」
話の途中、ボイス大佐は突然、サッ机に戻り引き出しの銀のガバメント銃をとった。
あろう事に女軍医の目の前を、片腕で机を押えて机の奥から忍者のように1回転し、着地した。
( シュ、シュ、タンッ!)
部屋の中で何が起きたのかわからない女軍医。
棒立ちになったままだった。
その棒立ちのまま立ち止まった軍医のこめかみへ、ボイス大佐が腕をまっすぐ伸ばし銃を突き付けて横に立ったのだ。
一瞬の出来事に、両手を顔の前にパっと開いたまま、固まる女軍医のジェーン・ゴールドウィンだった。
「無傷、完治。解る?ナッシング。次の日には傷跡もあなたが縫ったデタラメな縫い跡も無いのよ。縫った糸はどこにいったの!まったく。」
ボイス大佐は、唇を噛み締めて無音で、ゆったり回る天井のシーリングファンを見つめた。そして、イスから立ち上がり、外の収容所の様子を外窓のブラインドの隙間から見た。
そんな大佐を目で追いかける女軍医。
ボイス大佐は首を振りながらまた、笑いながら呆れて、しゃべり始めた。
「あー。彼には、……本当に。クレンショー伍長には済まない事をしたわ。あ~まさか、まさか……本当に有る事だなんて。」
ブラインドの外を見ながら腰に手を当て、下を向いて額に指を当て、独り言を言うボイス大佐。
「ハッ?何の事ですか、誰ですかクレンショー伍長って?あまりに酷い縫い方でその伍長が治してくれたの?翌日には完治だなんて!凄い方です。魔法かしら。どうやったら翌日に完治するの?もう、そのような治療薬が開発されているのでしょうか?もしそうでしたら、私のレポート撤回します。テキサスの収容所に配属されて、頭がイカレタと思われます。」
レポートを返せとばかりに手を差し出す女軍医を、大佐はまぁまぁと女軍医を手で押さえた。
また机の上に置かれた診断書の患者の名前とレポートの患者の名前を両方を、指で差した。
「ただ、診断書の捕虜の名前はグンソー・フクダ。レポートと名前が違うじゃない?ね?これよ。」
「それは、ここ収容所での名前は、偽名です。本名はヒロシ・ミフネです。」
「ん?何故、偽名とわかるの?」
「昨日、本人と、他の日本兵にも聞きました。」
大佐が再び椅子に座り、両手を組んだ。
「ふふふっ。いつも転任したての軍医、特に白人の女医はアジア人をものすごく嫌がるけど……気味が悪いって。戦時中のプロパガンダのせいだとは思うけど。黄色いサルは知能が低いって。新聞で、日本兵の頭蓋骨を本土まで送ってきた記事とか、アナタ見なかった?写真付きでよ。プロパガンダの極みよ。ほんと恥知らずの記事。どう?」
「え?そうですか。ヨーロッパに居たので、よく知りません。」
「まぁでも、よく貴女は自分から近くまで行けたわね。まだ、転属して5日目でしょう?彼らは、何と?アナタは日本兵と話をしたの?」
と、ボイス大佐。
「イエスマム。通訳を通してですが、彼らはミフネの事を不死身の分隊長、鬼の分隊長とか。」
大佐は聞き間違えたか?との表情で耳たぶに指を当て聞き直した。
「不死身?何ですって?」
「そう不死身の、死なないの意味の。ここ、テキサスに回されたアンガウル・ペリュリューでの生き残り8人全員が同じ事を言います。本人にも会って名前を確認しました。ヒロシ・ミフネで間違いないと。アンガウルでは戦死した戦友の名前で戦っていたと。それで昨晩、レポートの名前をすぐに本名に書き直しました。」
私も呆れたと、両手を開きゼスチャーをしながら女軍医は話し続けた。
再び立ち上がりガラスの壁に立ち、腕組みをする大佐。構わず話を続ける女軍医。
「たまたま、昨日の昼。ワシントンから検閲にいらっしゃった軍医殿、医療部長の、元空挺部隊で従軍医師の少佐と昼食をご一緒しましたの。」
ガラス壁のブラインドの前に立つ大佐が、突然!振り向き鋭い眼光を女軍医に向けた。
「ん?あー!元ワイルドキャッツ、第八十一歩兵師団の従軍外科部長の?マイケル・マズル少佐の事か!」
突然、強い態度になる大佐。
少し驚く女軍医だった。しかし、気の強い女軍医。
彼女も負けずに返した。
「そうです!そのマズル少佐ですわ。」
少し興奮気味の軍医。
「パラオのペリュリュー島は、星条旗の旗揚写真で有名となった硫黄島に次いで、激戦地として有名になりましたが、隣の島、アンガウルは米国にとって更に最悪だったそうです。1,259名の日本兵に対し上陸した約21,000名のアメリカ兵の戦い。アメリカの戦死傷者は2,559名。軍の機密事項ですよね。」
と、下を向く女軍医。
「私も聞き知ってはいるが。」
ボイス大佐は下を見ながら話を続ける女軍医の目線を確かめて、ガラス壁のブラインドを全て外から見えないように、静かに締めた。
( シャカシャカシャカ……。 )
「マズル軍医殿と私は2人ともポーランド人で、話が盛り上がってしまって。誠実でユーモアがあるお方で、」
話が脱線しそうになり、大佐の視線を感じて赤くなる女軍医。
「ゴホンッ!失礼しました。ただ、お話の中で、信じられませんでしたが、」
大佐の顔を見て、人差し指を上げ興奮気味に話続ける。
「たった1人。たった1人ですよ。大佐。1人の日本人に200名以上の兵士がやられたと。もしかしたら間接的には、300名以上のアメリカ兵がやられたかもと仰ってました。」
「えっ?1人の兵士で、そんなバカな。ふふっ。」
「いえ、事実みたいです。私も疑って話を聞いたのです。でも、アンガウル、ペリュリューで味方の遺体を検死したのも、重症者を治療したのもマズル少佐ですので間違い無いと。負傷者、戦闘による死亡者の検死・統計報告はマズル少佐との事でした。」
「あははっ。そんな、1人の兵士でそんなに味方の負傷者が出るなんて。世間に知れたら、大変な事になる。戦時国債が暴落するわ。ふふふっ。」
半分、バカにしながら上目使いで女軍医をみるボイス大佐。
そんな、態度に構わず話を進めた。
「はい、マム。たとえば、日本兵が占拠した洞窟の前で、すでに日本兵は一掃されたと油断した米軍が、生き残りのそれも、たった1人の日本兵と戦闘になり見方が大勢やられたと。その時、敵の、その日本兵も重傷を負ったハズなのに、翌日また同じ日本兵に中隊が襲われて全滅したと聞きました。その中隊長の、テイラー少尉。いえテイラー大尉が自由ポーランド軍の降下部隊でご一緒だったので間違いないと。」
少し高揚しながら話す女軍医。
ボイス大佐が、腕を組みながら自分の机に腰を掛けた。
「なるほど。あなたはその話、少年の妄想みたい話を信じるの?無敵の兵隊だなんて。サムライは無敵みたいな。はははっ。全く。あり得ない、あり得ない。そんな話を。今、GHQのマッカーサー元帥の日本占領が始まったのよ。そのサムライの地、日本の占領が始まった時に。あははっ。もう、日本に上陸した兵士が間に受けたら、パニックになるわ。あははっ。」
「はい。話の序盤ではありえない作り話と思って聞いていましたが……マム、」
「聞いていましたが、って何?」
「はい、日本軍との戦闘に決着がつき、アンガウル・ペリュリューでの占領も終わり、本格的にペリュリュー島で空港の建設が始まった時、それが始まったと。」
「えっ?なにが始まった?」
眉にシワを寄せ、思わず本職の記者に戻り、メモ用紙とペンを用意するボイス大佐。
「それが大佐。毎晩、恐怖の爆発事件が多発したらしいのです。」
「そんな作り話。ペリュリューや東南アジア方面から戻った、私の通信社の従軍記者からも聞いてないわ。爆発事件って、初耳よ。クレンショー伍長も爆発事件は言ってなかった。」
「そうですか。それも死んだはずの日本兵、そのサムライが何度も行っていたらしいのです。最初の出会いはアンガウル。重症の彼を治療したらしいのです。でも翌日は脱走したと。」
「死んでから翌日って。そんな。」
「私も疑いましたが全身、創傷や銃創が多数で、撃たれた後なのに。翌日から脱走したらしいのです。」
「……馬鹿馬鹿しい。それで?」
つい、馬鹿馬鹿しくなり、ペンを収めたボイス大佐。
「はい。そして、2回目に彼と出会ったのはペリュリューの本部キャンプとの事です。」
納得いかない顔のボイス大佐。眉の上を指で掻いた。
「その時は頸部、首を撃たれ銃殺されたらしいのですが、遺体で運ばれてきたと。その遺体を、マズル軍医殿が戦死判定を出したと言っておられました。それなのに遺体置き場に3日間放置していたら突然いなくなったと。」
「は?何っ?そんな馬鹿な!」
「戦場を渡り歩いたベテランの医師が死亡を確認したんですよ。その遺体が遺体置き場から行方不明に。捜索したその夜、燃料倉庫や弾薬置き場を爆破されたらしいのです。」
鼻で笑いながら話すボイス大佐。
「はははっ。もう、ありえるの?そんな作り話。いい加減な。マズル少尉ってそんな人だったの。」
「いいえ、マム。彼はまじめな方です。そのマズル少佐殿が、間違いなく仰っていました。」
「たしかに、私の取材したクレンショー伍長は確かに、グンソー・フクダは傷の治りが早く、すぐ傷が治ると脱走しそうになるので、体当たりして止めた事があったとは言っていたのよ。」
「でも、そのグンソー・フクダがここに居るのです、マム。」
「わかっているわ。でも爆破事件までは聞いてないな。ん~まぁ、軍の機密に関わるのかな。驚異の回復力か。でも、あなたのお父様が作る映画じゃないのだし。」
「あっ、父をご存じで?」
「あなたのお父様、敏腕プロデューサー、ゴールドウィン監督は全米の皆が知ってるわよ。」
「ありがとうございます。それで、その軍医の話から私が興味を持ち、グンソー・フクダと呼ばれる日本兵。そのサムライに興味が沸いて、今日の朝に彼を呼び出して検査をしたらなんと、回復している……本当なんです。」
話の途中、ボイス大佐は突然、サッ机に戻り引き出しの銀のガバメント銃をとった。
あろう事に女軍医の目の前を、片腕で机を押えて机の奥から忍者のように1回転し、着地した。
( シュ、シュ、タンッ!)
部屋の中で何が起きたのかわからない女軍医。
棒立ちになったままだった。
その棒立ちのまま立ち止まった軍医のこめかみへ、ボイス大佐が腕をまっすぐ伸ばし銃を突き付けて横に立ったのだ。
一瞬の出来事に、両手を顔の前にパっと開いたまま、固まる女軍医のジェーン・ゴールドウィンだった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. )
あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。
この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。
パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!
ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。
遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。
その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章5/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 JUMP! JUMP! JUMP! No2.
あおっち
SF
海を埋め尽くすAXISの艦隊。
飽和攻撃が始まる台湾、金門県。
海岸の空を埋め尽くすAXISの巨大なロボ、HARMARの大群。
同時に始まる苫小牧市へ着上陸作戦。
苫小牧市を守るシーラス防衛軍。
そこで、先に上陸した砲撃部隊の砲弾が千歳市を襲った!
SF大河小説の前章譚、第5部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )
あおっち
SF
とうとう、AXIS軍が、椎葉きよしたちの奮闘によって、対馬市へ追い詰められたのだ。
そして、戦いはクライマックスへ。
現舞台の北海道、定山渓温泉で、いよいよ始まった大宴会。昨年あった、対馬島嶼防衛戦の真実を知る人々。あっと、驚く展開。
この序章3/7は主人公の椎葉きよしと、共に闘う女子高生の物語なのです。ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。
いよいよジャンプ血清を守るシンジケート、オリジナル・ペンタゴンと、異星人の関係が少しづつ明らかになるのです。
次の第4部作へ続く大切な、ほのぼのストーリー。
疲れたあなたに贈る、SF物語です。
是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
カラー・マン
上杉 裕泉 (Yusen Uesugi)
SF
とある金曜日の夕方のこと。週末のゴルフの予定を楽しみにする朝倉祐二外務省長官のもとに、一人の対外惑星大使が現れる。その女性――水野は、ウルサゴ人と適切な関係を築くため、彼らの身にまとう色を覚えろと言う。朝倉は、機械の力と特訓により見違えるように色を見分けることのができるようになり、ついに親睦パーティーへと乗り込むのだが……
話好きの自動車整備士が戦車に乗って一人前の冒険者を目指します
かば
SF
半年前に日本から連れてこられた自動車整備士の飛雄馬(ひゅうま)は、五人の個性的な異星人たちのパーティーに迎えられ、戦車に乗ってモンスターと戦うことが日常になっている世界で「自分の戦車を持つ」という目標を胸にモンスターが出没する地下施設の調査を行っていた。その地下施設には戦車を含む莫大な物資が眠っていたため飛雄馬の目標は一気に現実に近付くが……。
前作『心の支え』(N1405HV)をプロローグにして、最初に考えていた中編です。
ゲーム『メタルマックス』シリーズの世界観に強い影響を受けて「荒廃した世界で戦車に乗って戦う」話になっていますが、異世界転移、超越的存在、ダイソン球、多種多様な異星人と、オリジナル要素も盛り込みました。
楽しんでもらえたらと思います。
「小説家になろう」「カクヨム」にも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる