「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第14章 ビックドクと椎葉京子先生。

第3話 椎葉親子。

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 ドアが開き、聞き覚えアリアリの可愛い男性の声がした。
 
「ねえーかぁちゃん。だからなんか、あの調書?ミリーおばさんの友達の人ってさ。取り調べ?聞き方がおかしいっしょ。かぁちゃん、もう1回行ってさ……。戦闘の事より、僕の傷の様子っ~ばかりでさ。」
 
「もう、きよしいいから寝てな。いいから、後はお母さんたちがやるって。やっと太ももの骨くっついたんだから。もう、立つなって!だから~もう、いいから、動くなっ!」
 
「うん。」
 
 車いすから立ち上がろうとするきよしが怒られた。

 唇を尖らせて面白くない顔をして座り直す童顔のきよし。

( カチャカチャ。キィーン。 )
 
 再び自動的にゆっくり動き始める車いす。
 
「んで、かぁちゃん。顔のアザは?押すと、ほっぺも痛いし。」
 
( えっ!うそーっ!パンダ隊長!パンダ隊長と同じ部屋!うそー!よっしゃ、よっしゃ愛子っ!……でも、パンダ隊長、太もも骨折してたんだ。知らなかった。 )

 片眉が上がる布村。
 初めて会った時、倒れてるロボットからストンと降りて来た時、たしか左の太もも押さえてたのを思い出した。
 
( えっ、あの時から……。4日も、げーっ!我慢してるなんて。えぇぇ~。太ももの骨って太いの一本しかないのよね。たしか。 )
 
 4日間に起こった事を思い出しながら、きよしの人並外れた我慢強さを感心する布村だった。そして、寝たフリを続ける布村。
 
「アンタ、記念に青タンつけてな。まだしばらく腫れるしょ。2週間もしたらひくべさ。」
 
「かあちゃん、2週間って。早く治んないの。もう。絶対、小林とかルオにイジられるっしょ。夏休み終わるし。絶対クラスのみんなにも、イジられる。もぅ。」
 
「しゃ~ないべさ。」
 
( あっ!えぇー!あの女性の声は、さっき検査の時の椎葉先生。プッ。わたしはバカ。椎葉先生と椎葉きよし、パンダ隊長のお母さんだったんだ!うわ、わたし、気が付くのめっちゃドンくさっ。もうバカ。もっと早く私ぃ、気が付けば検査の時パンダ隊長のお母さんにもっと良い態度とれたのにぃ。時すでに遅しガクッ。 )

 今度は、死んだフリの愛子。
 
「アンタさ。眼底のヒビっていうか、骨が欠けてるからさ。しばらくは痛いべさ。でも、もうくっつけたけどさ。いいから、きよし転がってろ。」
 
「へいへい……。よっこらしょ。へいへい。」
 
 車イスからゴロンッとベットで横になるきよし。


( キィーン、カチカチッ。 )
 

 きよしが離れた車イスは、自動的に折りたたんでベットの下に入った。
 
「アンタ、誰にやられたか知らないけど……、」


( ふふっ! )

 
 ニッコリする愛子。
 頭の中の想像で、ドヤ顔をした。
 
「アンタの丈夫な頭蓋骨にヒビ入れる強者つわものなんていたんだ。眼底は剥離骨折だったし。普通の力じゃないよ。コレっ。」
 
 更にニコニコする布村。
 
「アンタ、ホントに戦闘でなったの?戦闘になったら頭や顔もアーマーで被せるべさ。テッポのたま弾くはじくっしょ。」
 

( うふっ、わたし強者だったんだ。うふふ。木の枝で突きと、可愛い私のお尻かな?ふふっ。 )

 
 なんか嬉しくなる布村。

 そして、きよしはベットで横になりながらチラッと布村を見た。
 
「もう、かぁちゃん解ったから。もう寝るべさあ。」
 
「機長のローマンがさっ。さっき言ってたけど。」
 
「えっ機長のローマンって、ローマン叔父さんが、このビッグドクの機長してるの?」
 
 上半身を起こすきよし。
 
「そうよ。」
 
「ホント?」
 
「そうだって!」
 
「ふ~ん。さっきまでオリエッタ叔母さんとローマン叔父さんと一緒に居たけどぉ、な~んにも言わないし。ふ~ん、今。操縦してるんだ。御舩閣下も言ってくれればいいのに。」
 
「何かあるの?」
 
「いやさ、小林と俺、オタクだけど、」

 
( はあぃ?ヲタクぅ?わたしの、パパ、パンダ隊長がヲタクですって? )
 

「何言ってんのさ、あんた、暗~いダウナー系のキモヲタでしょ。はははっ。マニアックなフィギア集めるだけのキモヲタ。あんたの部屋見たら彼女も出来んわ。あはははっ!ニヤニヤしてフィギアみてるきよし見たら、めっちゃキショいわ。ほんまやで。あはははっ。」
  

( 母親にダウナー系のキモヲタと言わせるって。止めて~私のパンダ隊長! )
 

 思いっきり手と、額に汗を噴き出す布村。
 
「小林はコクピット計器類ヲタも入ってるから、オメー!俺がコクピット・ヲタって知ってるのになんでビッグドクのコクピット写真撮らねんだぁ!って絡まれるなぁと思って。奴の言う事、大体、想像出来るべさ。あいつぁ、いつまでも、しつこいし。」
 
「太ももの痛み、落ち着いたら車イス乗って好きに回れば。アンタ、機内オールフリーパスで入れるっしょ。さぁて、母ちゃんたちは、アンタの経過をノーラとミリーたちと一緒に、これから報告せねばさ。アンタに構ってらんないわ。あと10分もすると、薬が効いて痛みも無くなるべし。とにかくテキトーに機内で時間潰しな。いい?アッ!」
 
「かぁちゃん~アッてなんだべ。アッて。」
 
「ん?でもなぁ……、機内うろつかれると、ドクのスタッフいちいちあんたに敬礼とか、いちいちメンドーだからさっ。かぁちゃんとしては、千歳着くまで部屋で寝てるもらうのがいいけどさ。」
 
「へいへい。小林にコクピット写真撮れない言い訳が出来た。かぁちゃんが動くなって。そんで寝る。」
 
 ベットに沈んで毛布を被るきよし。
 
「まぁローマンが、ノンビリ千歳に帰るって言ってるべさ。千歳行く前に、先に、三沢基地に寄って、ジョナサンたちも給油するってさ。」
 
 きよしの肩近く、ベットの上に座る京子。
 きよしの頭をなで始める。
 全く構わないきよし。
 
「あっそうだ、ジョナサンが給油の間、1時間くらいミーティングあるって。オリエッタはオリエッタでポーランドに用事あって戻るから、三沢で降りてからポー軍のJWKの輸送機でポーランド向かうらしいけどね。」
 
 目と閉じたまましゃべるきよし。
 
「んだ、かぁちゃん。オリエッタ叔母さん、さっきシルビアとなんか話してたべさ。エリザベス(妹のエルジビエタ)が子供服のモデルデビューとかなんとかで。それで帰るのかな、知らんけど。」
 
「あ~オリー、きよしにその話してたんだ。ふ~ん。」
 
 京子がスマハンドで時間を見た。
 恐らく薬の効き始める時間を確かめたかもしれない。
 
「きよし、きよし。今、足は?まだ病んでる?。」
 
「う~ん、まだ病んでる。ちょとピクッっと筋肉動いたら痛い。布村さんや佐藤さんたちといた時は我慢出来るくらいだったのに~。」
 

( それは可愛いた布村の、愛子の、愛の力よ! )
 

 と寝たふりしながらヨッシャ!と心の想像でのガッツポーズ。
 
「でも、さっきよりマシかなぁ。ん~、こういう風にちょっと動かしてピクッっと。あ、痛っ。なんだかなぁ、脈打ってるべさ。ジミに痛い。HARMORの中で救助待ってる時から急に痛み始めた。なんまら痛かった。でも、HARMOR倒れた時、布村さんのお尻でさ、」

 
( ゲッ! )

 
 と、また汗ばむ布村。
 
「僕の顔に布村さんのお尻が当たったんだわ。その振動で硬化したアーマーのお尻でさ、ゴリゴリって音したのさ。そっから両目の裏がグーって痛くなって。そん位から太ももも激痛が来た。なんまら痛かったべ。布村さんたちに心配かけないように、何とか黙ってたけどさぁ。なまら痛かった。ずっと汗も止まんなかったし。」
 

( あらまぁ、やっぱりトドメは私のお尻だったかぁ。 )
 

 ガクッっと、また死んだフリする布村。
 
「救助待ってる間、もうきつかった。段々気絶する位に痛くなるし。泣きたくなった。固定した日本国軍の硬化した炭素タオル、きつくなってパイロットスーツ脱いで、いつ外そうかな、いつ外そうかとそればっかり思ってた。足の指先まで痺れてジンジンしたし。もう狭くて苦しいのもあったし。女の子たち5人とギューギューでさ。動けなかったし。痛くて泣きそうに何度もなったし。」
 
「んで、だから今は?きよし、今は?って。」
 
「まだマシかなぁ。かぁちゃん?麗子叔母さんたちがくっつけてくれたんでしょ?」
 
「そうだ。くっつけたさ。骨にホッチキスした。目の下の欠けた頭蓋骨もホッチキスした。レーザーを使った丁寧な接合手術は、なんかカァちゃんたち、もぅ疲れてさ。寝不足でもう、メンドー臭いし。止めたんだわ。」
 
「え!なんでもう!自分の子供にメンドーって。まだ、太もも、脈打って痛いし。もう、ちゃんとくっつけてよ。もう。」
 
 横目で京子を見ながら文句を言うきよし。
 
「パッキリ折れてんだから、しゃーないべ。……だからソワソワ動くな。また折れる。」
 
「あ、へいへい。」
 
「多分、始めはヒビ入ってたんでしょ。パッキリ折れたの最近だべさ。女の子のお尻で顔踏まれた時、筋肉の緊張で、骨に最後の付加が掛かって綺麗に折れたんだべさ。布村さんにトドメ刺されたんだわ。あははっ。しっかし、ホントにパパもアンタもさ。ケガしてもさ、なぁ~んにも言わないよね。後になって周りの人がビックリして騒ぎ出すんだわさ。次、怪我したらすぐに言いなさいよ。きよすぃ。ホント君らは……。椎葉家の男は、ほんとジジやパパ、アンタも。みな一緒っ!バカタレが。」
 
「へいへい。へいへい。」
 
 目をつむって面倒くさそうに話すきよし。
 
「そう、そう。アンタ言ってたけど、そのオリーっ、エッラちゃんがさ、子供服3D地上波のモデルするんだってさっ。ポーランドだけじゃなくヨーロッパ全域でだって。すんごいな~芸能人姉妹っ。お姉ちゃんのシルシルも既に子供モデルで結構キャリア長いけど、今度は妹かぁ。すんごいなぁ美人姉妹、羨ましいマズル家。うちのオディ子もモデルにしたろかぁ。あはははっ。」
 
 全く興味がないきよしだった。
 横を向いて動かないきよし。勝手にしゃべり続ける京子。
 いつもの椎葉家の景色。
 
「御舩閣下と私が三沢のクリンクリン(フランクリンUSASF少将 三沢宙空防衛基地司令官)に挨拶もするから千歳に帰るには半日はかかるわ。真夜中になるよ。中途半端だから、今日はこのシャトルに泊まってさ、朝っ、栗山に帰るか?どうせ、かぁちゃんたちもバタバタして、ここで作業して一旦終わらせた方が楽だし。」
 
 クルっと振り向くきよし。
 
「いいよ~。ここのシャトルのご飯、なまら旨いし。2~3日居てもいいよ。今、夏休みでな~んも無いし。父ちゃん、畑もひと段落つけたみたいだし。んだけど、父ちゃんいつ対馬から帰るの?」
 
「作戦行動中だから、わからんわ。」
 
「なんだかハリケーンとかでしょ。」
 
「シラス加盟12か国連合、掃討作戦名、「ハリケーン」よ。あんた軍人でしょ?正確に覚えなさいよ。」
 
「へいへい。」
 
 きよしの頭をポンポン叩く京子。
 
「ふふっ……さぁて、あと40分で三沢基地に着くわ。通常の、日本航空機の航路はドンくさいなぁ。まぁアンタ。着陸したら、1回起きなさいよ。」
 
「ん?なんで、かぁちゃん。ちょっとしか、寝られないじゃん。」
 
「着陸して、暫くしてからだけどぉ、ここの病室に、そこの布村さんとアンタに、クリンクリンと三沢の指揮官たちが表敬訪問に来るってさ。着陸して3時間位後かな?かぁちゃん達の会議の後だとさ。アメリカ宙軍の広報と、コバンザメのアメリカン・マスコミが表敬訪問の取材に来るって。その時、また2人を起こしに来るわ。」
 
「うわ~メンドーちぃ。なんだべ表敬訪問って。」
 

( えっ!えっ!アメリカのマスコミの取材って。え~、どうしよう。プチお化粧とか持ってないし。う~こういう時、結衣とか、サッチーが居れば。 )
 

 と、言いながらワクワクしてニコニコする布村。
 
「アンタ、愛ちゃんに英語で、もし取材されたら、通訳してあげなさいよ。って佐藤の結衣ちゃんとかみんな愛ちゃんの友達、ミリーとかノーラに英語喋ってたけどぉ、愛ちゃん英語大丈夫かな?まぁ、ダメならアンタが通訳しなよ。」
 

( えっパンダ隊長、英語喋れるの?ウッソー!超カッコイイ! )
 

 小っちゃくガッツポーズする布村。
 
「へいへい。もう、メンドーっちぃ。」
 
「なんだって?面倒?」
 

( はぁい?私の通訳がメンドーっちぃって。プンプン、プンプン!馬鹿パンダ!何よ。 )
 

 額にシワを寄せる愛子。
 
「へいへい、やりますやります。へいへい。」
 
「アンタ、愛ちゃんにも助けてもらったんでしょ?」
 

( そう、そう!パンダ隊長ママ、良く言ってくれましたぁ!もう、それっこそ!それっこそ!いっぱいっぱい、沢山沢山助けたのでア~ル。海岸で美味しいお魚の捕獲と選別から~、サバイバルナイフで高級魚をさばいて~の愛情たっぷりお魚料理。ジャーン!最後は愛子先生の高級お魚のお出汁スープ!ジャーン!もう最っ高ーっ!そして、核爆発の後の世紀末戦争っ!布村ドライバーの超絶ハングオンっ!超~カッコイィ!ジャーン!スミス中佐と軍事衛星とのリアルタイム連携!タンデムモービルを操縦するスーパーガール!それも敵のHARMOR盗んで運転したんだからねっ!アハハハハーッ!)
 

 また、心の中の想像では、フルアーマーで腰に手を付けてカッコつけているイメージだった。
 何気に、瞼に力が入り、両手の握りこぶしでガッツポーズをする病院ベットの上の愛子。
 
「だから、やりますやります。へいへい。」


( はあい? )

 
「ちょと、きよし、愛ちゃんの通訳。ちゃんとやりなさいよ。ほんとに。」

「やります。へいへい。」

 
( やります。へいへいって、メンド臭そうに……。モゥ~プンプン!牛さんになって、モゥモゥ!プンプンっのプン!馬鹿パンダ。あんなに一杯一杯お手伝いしたのに~。モゥ! )

 
 ほっぺたを膨らまして怒る愛子。
 薄目を開けて、めちゃめちゃ暗い目線の愛子。
 

「もう。了~、了~っ。通訳します。……痛テテッ……もう寝るよ、かぁちゃん。」
 

 壁の方に向いて寝るきよし。
 そこへ、廊下から太い男性の声がして来た。

 声が近くなる。なんか赤ちゃん言葉をしている様だった。そして、病室のドアが開く。


( プシュッ。 )

 
「ほらーオディちゃん、ママもお兄ちゃんもここでちゅよ。」
 
 オディアを抱っこしてニコニコしている御舩と、一緒にニコニコしている護衛のポーランド軍兵士の2人だった。
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