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第13章 月からの使者。

第6話 最後はデカぶつ。

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 真っ黒の甲冑で覆われた腕が出て来た。

 身構えるヴィクトリアやジョナサン。
 真っ黒のヘッドギアが奥に見える。

 でも、よく見るとサイズは小さな子供か女の子サイズだった。
 
「あっ、あはは。ちっちゃ!」
 
 気が付きニッコリするヴィクトリア。
 
「布村愛ちゃんでしょ。愛ちゃん、引っ張るわよ。」
 
 日本語で話しながら腕を引くヴィクトリア。
 バトルモードのアーマースーツで覆われたヘッドギアと全身が引っ張りだされた。
 遠目には、助けられた真っ黒の宇宙人に見えなくも、なかった。

 
( おぉぉぉー。)

 
 微妙な歓声が上がる。ジョナサンが腕を持った瞬間、ペタッと鉄板の上で座り込む布村。
 
「おっ、おっ、ドしたドしたっ?」
 
 ヘッドギアをのぞき込むジョナサン。そのヘッドギアの正面ガラスを開ける布村。
 開けるなり、いきなり泣き始めた。
 
「ぶえっ~!ぶえっ。ぶえぇぇ~っ!ありがとうございますぅ~ぶえぇぇ~っ。わぁ~ん!」
 
 いきなり物凄い音量で、泣き始めた布村。

 ジョナサンがヴィクトリアと目を合わせる。
 トラッシュと目を合わせて、手を広げるヴィクトリア。への字にしてうなずくトラッシュ。

 トラッシュはその可愛らしい泣き顔の愛子を腕を組んで、眉をあげて愛しい目で顔で見ていた。

 曽根は曽根でジョナサンと目を合わせてから困った顔をしてひたいを掻く曽根。

 曽根がしゃがんで、なだめようとすると、後ろから京子の声。
 
「曽根さん?ジョナサン、その子は私たちが預かります。」
 
「えっ?」
 
 振り向くと、階段から特殊車両まで天幕がいつの間にか張られていた。

 周りから見られたら不味いのだろうか。

 ジョナサンがいつの間にか張られた天幕を身を乗り出して見てから、京子に聞いた。
 
「姉さん、どしたの?これ。」
 
「まぁきよしと一番長く一緒にいた子だからね。それと、ミリーたちも一般の人に、あからさまに見られたくないし。」
 
「あ~ま、まっ。しゃーないべ。……んだかぁ、んだかぁ。」
 
 への字にして、腰に手をする京子。

 仕方ないとジェスチャーをした。その横からミリューシャ・シーカ・ラファド・エリスカと同じ服を着た仲間の金髪軍団が来て、布村の手をとった。

 ゆっくり手を引いて労わりながら連れて行く。

 後ろから見ると、これまた、連行される宇宙人のようだった。

 額の汗を手の平でぬぐうジョナサン。

 腕を組みながら愛子に興味を持ったのか、トラッシュがずっと後ろ姿を見ていた。

 その後ろでガサガサと音が聞こえて来た。

 ビクトリアが振り向くと太くて長い右脚がコクピットの隙間かだらんと下がった。

 慌てて、腰に手で押さえてサポートするヴィクトリア。
 愛子を見て気が付かないトラッシュ。
 
「ヘイッ!ビリー!(トラッシュ・リーバ中尉のコール名)何してんの!」
 
「あ、あ。」
 
 後ろと愛子を2度素早く見て、ニコニコしながらビクトリアとパイロットの腰を支えた。

 その汚れた白いスーツ。

 自衛隊HARMOR隊のパイロットスーツを着て、ちぐはぐな色の薄い緑色のAXISのヘッドギアを被った大男が、2人のサポートでゆっくり鉄板の上に着地した。

 ところがその瞬間、
 
 
(( グワッ!イテテテッ! ))
 
 
 左の太ももを押さえて前かがみになった。鉄板から落下しそうになったのだ。
 
「うおぉ!危ない、危ない、危ないーっ。」
 
 慌てる男女の2人のWALKER。


 大きなロボットスーツが邪魔ですぐサポート出来なかった。
 
「あ~あ、落ちる、落ちる、落ちるっ!」
 
 咄嗟に動いた曽根とジョナサン。
 しかし、

 
(( ドサッ! ))
 

 曽根とジョナサン遅し。

 パイロットは落下してしまった。

 慌てて階段を下りて行くジョナサンと曽根の2人。

 厳ついWALKERのロボスーツの中で、不味い顔をしてヴィクトリアとトラッシュが目を合わす。
 
 しかし、パイロットスーツのインナーにアーマースーツを着ているはずで、この位の高さは何ともないとはわかっているが、ビックリして地面をのぞいた。
 
 デカいパイロットはビッタリ大の字になって、天幕の内側で倒れている。
 
 パイロットの周りに集まる関係者たち。
 ジョナサンがすぐさまパイロットを仰向けにして、ヘッドギアを脱がした。

 そして驚くジョナサン。
 
「うぎゃー!きよすぃー!ホントにきよしだ。きよすぃーオイッ!」
 
「えっ?ぇえー!ジョナサン叔父さんっ!」
 
 ジョナサンの顔を見るなり、悪い事はしていないが、驚いて、右足で後ずさりするきよし。
 その顔は40度以上の高熱の為真っ赤になっていた。そして、パンダ隊長由来の右目周りの青タン。

 布村のお尻に踏まれて更に青タン度が増してパンパンに腫れている。
 
「うわーはっは!うわーはは!こん所で逢えるとわなっ!なっ!きよすぃオイ!うわーはっは!」
 
 苦笑いの椎葉きよしだった。
 
「うわーいててっ。」
 
 左の太ももをさするきよし。
 
「あーんだか、バッキリ脚折れてんべ。京子姉さんいるから。もう大丈夫だぁ。」
 
「えっ、かぁちゃん来てるの。ちょっと……。」
 
「きよすぃ、無理すんな。寝てろ。」
 
「はははっ。いてて。なんでこんなに痛いかなぁ……。」
 
 きよしの額に手を当てるジョナサン。
 
「あらまぁ、きよすぃ、スンゴイ熱出てるべさ。」
 
 自分の額に手を当たるきよし。
 
「なんか、ボーとして、顔面と目の裏と、足。スンゴイ痛いし。叔父さん、どもならん。しかし、なんでこんなに足が痛いかなぁ。脈打ってるべさ。おー痛っ。」
 
 文句を言いながらジョナサンと曽根の肩を借りて立ち上がるきよし。

 目の前から京子とオディアを抱っこしているノーラがやって来た。

 その後ろから金髪軍団がゾロゾロ歩いて来たのだ。

 後ろの金髪美女がサッとしゃがんで、きよしを立たせたまま、太ももを、見るからにオーバーテクノロジーの縦長の板を2枚使って足を挟んだ。
 
 両方の板のボタンを押す金髪美人。

( ビッビッビー!ビリビリビリーッ! )

 挟まれた左足が真っすぐにピイーンと突っ張った。
 
「痛っ~てーっ!痛ったぁ!ぁあ~あっ、あっ。痛くない。あれっ。」
 
 きよしの側に、浮かぶベットを引き寄せる京子。

 あごできよしに乗れ!と命じる京子。

 全く痛みが引いたのか、ジョナサン達の肩から腕を外して、一人で歩こうとするきよし。

 そのきよしの肩を抑える京子。
 
「きよし、コラっ!動くな。この担架に寝れ。」
 
「へいへい。だって、かぁちゃん痛くないもん……。」
 

「早く乗れ!きよし!言う事聞きなさいっ!」

 
 アッとなり、ジョナサンや曽根、ノーラや待機している京子付けの兵士や、鉄板の上から覗くヴィクトリアとトラッシュ、鉄板を支える機動歩兵をグルッと見渡してから、軽く苦笑いして、額を人差し指でポリポリ掻くきよし。諦めて、ハイテクギブスの左脚からベットにカラダを落とすきよしだった。
 
「へいへい。へいへい……。かあちゃんそんなに怒らなくてもさ。」
 
 京子がデカいきよしを寝かせた。

 ブツクサ言いながらベットで横になるきよし。

 すぐさま金髪たちが、見たことも無い検査道具できよしを調べ始めた。
 
 特殊車両に向かって音も無く動き始める浮かぶベット。

 動くベットと一緒に調べながら歩く金髪軍団。

 ノーラに抱っこされているオディアがきよしの所に行こうと抱っこを嫌がると、ノーラが、きよしからオディアを離した。
 
「オディちゃん、ちょっと我慢。いい子だからちょっと我慢してね。きよし兄ちゃん、ちょっと調べてるの。ちょっとだけ待ってね。」
 
「嫌だ、きよし兄ちゃんの所にいく。」
 
 オディアのほっぺたにチュッとキスした。
 
「今、きよし兄ちゃんが痛い、痛いって。痛い、痛いって、どこに怪我しているか調べてるのよ。ちょっと我慢しようか。」
 
 大きな可愛い目がノーラをジッと見た。
 
「痛い、痛いしてるの?うん、わかった。」
 
 ノーラの左耳をいじりながら、少しふくれて、右肩に顎を乗せるオディア。

 そんなオディアを抱いたまま、浮かぶベットの後をついて行くノーラだった。
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