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第13章 月からの使者。

第5話 パンダガールズの救助開始!

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( ピーポーピーポー! )
( ピーポーピーポー! )
 
 
 人混みの奥から日本の救急車のサイレンが鳴り始めた。
 
「オーライっ!オライ!」
 
 歩きながら救急車を誘導する西浦少尉。
 3台の救急車がバックでゆっくり進入して来た。
 
 止まった救急車からは自衛隊の救急隊員と須崎医官も降りて来た。
 須崎医官はジムニーBEVに乗って巡回治療に行くはずだったが、田中対馬長官に改めて指示を出され、4人の少女の担当医に回ったのだった。
 各医療チームの準備が整った。
 周りを見渡しニッコリするヴィクトリア。部下と目を合わせた。
 
「トラッシュ開けるわよ。ジョナサン、オースティン大尉!行きます。もう少しジョナサンたち、曽根さんも離れて下さい。さぁ行きます。ヘイ!トラッシュ、脚部マグネットオン。」
 
「イエッサー。マグネットアンカーオン。」
 

( ガンッ、ガンッ! )
( ガンッ、ガンッ! )
 

 鉄板の上に立つ、ヴィクトリアとトラッシュのWALKERの脚部が鉄板に固定された。
 
「さー!トラッシュ開けるよ!ワン、ツー、スリー、オーラ!」
 
 一瞬、鉄板を押さえている4台のWALKERごと浮かんだ。それだけ2台のWALKERにはパワーがあるのだった。鉄板の上の2代のWALKERは両手でコクピットシールドをこじ開けた。
 

(( ギ、ギ、ギッ!ドスンッ! ))
 

 HARMORの大きなコクピットシールドが、WALKER2体の力で80センチほど開いた。
 ライトを照らすトラッシュ・リーバ中尉のWALKER。
 
 すると暗い中からグレーのストッキングを履いたような少女たちの足が動いているのが見えた。
 日本語で声を掛けるヴィクトリア。
 
「みんな、もう大丈夫よ!順番に出て来て頂戴。大丈夫?」
 
 隙間から顔を出す佐藤結衣。そして、手を振った。
 
「はーい!みんなー、ありがとうございます!」
 

(( おぉぉー! ))
 

 歓声が上がる救助現場。
 
 ニッコリするノーラたち、そして京子だった。
 ノーラに抱っこされたオディアが手を振る。
 そして、佐藤結衣が顔を出しながら答えた。
 
「大丈夫です。ありがとうございます。一人づつ出ます。お願いします。」
 
 鉄板の高さに合わせた幅が広い階段を、地元の漁師が大勢で持って来た。
 彼らは、フェリー・ターミナルから漁船で、潜水艦へ対馬市民をピストン輸送した功労者たちだった。最後まで残っていたのだ。

( おー、パチパチパチッ! )

 見守る観衆の後ろから大きな階段を持って来る人たちが来た。
 

( よいしょ!よいしょ! )
( よいしょ!よいしょ! )
 
 
 運ばれて来たのは、船に荷揚げする幅の広い階段だった。
 設置された階段を上るジョナサン。
 そしてその階段を防護服の上を脱いで上半身を出した曽根少尉も昇って来た。
 顔で挨拶する2人。
 ヴィクトリアが少女達に向かって、声を上げた。
 
「みんな、いい?足からでなく、頭から、上半身から出てきてください。こちらで受け止めます。両腕を思いっきり伸ばして!(日本語)」
 

(( 了解しました! ))
 

 コクピットの奥から元気な少女達の声が聞こえた。
 まず、最初に鈴木絵里がニッコリ顔でのぞいた。
 鈴木絵里は、ほっかぶりしたアーマースーツの布をはずしていたので、汗でビッシャリの顔だった。
 伸ばして出て来た両腕を掴んで、引っ張り出すヴィクトリアとトラッシュ。
 何故か、自然に拍手が沸いた。

 
( パチパチパチパチ。 )
 
 
 そのまま出た体を曽根とジョナサンがつないで丁寧に介抱した。

「お姉ちゃん、大丈夫かい?」

「はい、ありがとうございます。」
 
 階段には担架を担いだ救急隊員が居た。
 すぐにジョナサン達がベットに鈴木絵里を寝かせた。
 救急隊員は担架を担いで、ゆっくり階段を下りた。
 下で待っていた須崎医官がアーマースーツの手袋を脱がして、腕まくりをしてバイタルを測った。
 OKサインを出すと、また拍手が起こった。

 
( パチパチパチパチ。 )
 
 
 そして救急隊員へ何か指示を出して救急車へ運んでもらった。
 
 次は中村・スーザン・幸子が出て来た。
 拍手が聞こえる。
 中村は、担架ベットを拒み、歩いて階段を下りた。
 地上に着くなり両手を上げて喜びのあまりピョンピョンと跳ねたのだ。また拍手が起こった。

 
( オォー!パチパチパチパチ。 )
 
 
 しかし、その中村に須崎が何かを言って、おとなしくなった中村。やはり担架で横になって救急車に運ばれて行った。
 

( ピーポーピーポー! )
 
 
 2人を乗せた救急車がサイレンを鳴らして出て行く。
 
 次に寺田麗子が両腕を伸ばして出て来た。
 
 力なく、ダランとする寺田麗子。
 介抱するジョナサンと曽根。
 鉄板の上で少しグッタリしている。
 
 気が付いた須崎医官が階段を駆け上がってきた。
 直ぐに寺田の背中や胸に補聴器を当てて心音を聞き始める。
 佐藤結衣がいつのまにか、寺田の後ろに立っていた。
 佐藤結衣は、1人でHARMORから出て来たのだ。
 
 その快活な行動に呆れるヴィクトリアとトラッシュ。
 寺田の異変にすでにコクピット内で気が付いていたのか、寺田の背中をさすって一緒にしゃがんだ。
 鉄板の上で担架に乗せられる寺田。
 
 立って寺田を見ている結衣に補聴器を当てる須崎医官。
 
 2人ともニッコリした。
 寺田を乗せた担架が持ち上がり階段を下りていく。
 結衣が振り向き、コクピットの隙間に向かって、叫んだ。
 
 
「次は愛よ!愛ーっ。私は寺田と一緒に行くね。札幌に着いたら連絡頂戴っ。じゃ愛っ。そして、パンダ隊長!わたしのきよし!愛してる~っ!」
 
 
 投げキッスをする佐藤結衣に目を大きくするジョナサンと曽根。
 そしてヴィクトリアとトラッシュだった。
 
「いやいやいや、まだ女の子いるのかいぃ。何人いんだべ。はははっ」
 
 ジョナサンは首を伸ばして覗いてから、後ろのヴィクトリアとトラッシュに目を合わせて笑った。
 スタイル抜群の佐藤結衣は上品に階段を下りて、運ばれる寺田の担架まで走って行った。
 

 ( ピーポーピーポー! )
 
 
 そして、須崎医官と共に救急車に乗って行った。

 腰に腕を当てて笑いながら見送るジョナサンと曽根。
 
「さぁ、次も来るよジョナサン。次の方、どうぞ。」
 
 その時、真っ黒の甲冑で覆われた腕が出て来た。

 身構えるヴィクトリアやジョナサン。
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