「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第12章 スイート・チャイルド・オー・マイン。

第4話 ジャンプ血清補助者の危機。

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 厳原湾の約40メートル上空をバーニアを吹かせながらゆっくり移動するきよし・布村タンデムモービル

  下になっている吉田HARMOR。


(( ドバババババー! ))


 荷揚げ場まで後100メートルまでに迫り、歌もひと通り終わった所だった。

 その時だった。突然、きよしの悲鳴がコクピットで響いた。


 
(( うぎゃーっ! ))


 
 緊張が走る千歳シーラスワンのウーラノスCDC・オペレーションルーム。
 
 全館オープン回線で響く椎葉きよしの悲鳴だった。

 オペレーション室に、かつてない程の緊張感が走った。

 いや、余りに突然の事で、逆に静まり返る広大なウーラノスCDC・オペレーションルーム。
 
 一瞬、いつも御舩が立ってい居る壇上を不安な顔で見る日本国軍と自衛隊の女性事務武官の2人だった。

 御舩が居ない以上、連絡が来るまでどうしようもない。

 両肘を立てて塞ぎ込んだ。

 きよしに大きな何かが起きたと思った大勢の事務武官のスタッフたち。
 
 戦略戦術ルームから歩いて来る白い制服の将校。

 御舩たちがいつもいる段上に向かって、対馬に向かう御舩ヒロシの代行で岩井宙空将が、のんきにやって来た。

 すると椎葉きよしの突然の悲鳴。

 
「何っ!椎葉少尉っ!」
  

 インカムを押さえながら、走ってベランダ壇上までいった。

 唖然とするオペレーションルームを見下ろして、厳しい目つきで正面の巨大モニターを見た。

 相変わらず、ゆっくり爆音と水しぶきを立てながらゆっくり進む重なった2機のHARMORが4方向から映っている。
 
 全く異常がない映像。
 
 その続きをインカムで聞き、険しい顔から笑い顔に表情が変わった。
 
「プーッ!なぁーんだぁ。あはははっ!あ~ビックリした。めっちゃ焦るし。ハァー!ヨレヨレ。なんだかなぁ。あはははっ。」
 
 壇上で呆れながらホットする岩井宙空将。
 その下の、女性事務次官の2人。
 
「あっ!もう、桐生。あはははっ。」
 
「あれっ、あらっ!やられた、やられた!何の悲鳴と思ったら。あははっ!もう、やーねー、きよし君たち。もぅフフフッ。」

(( アハハハッ! ))

(( アハハハッ! ))
 
 一瞬、息を飲むような、よめき声から、大笑いの会場になった千歳シーラスワン、オペレーションルームだった。
 
          ◇        ◇


空港地下にある、オスプレイ3機を乗せた宙空母艦「ウーラノス」の大型エレベーター。
 
 左右に護衛機の大型オスプレイ2と、中心にはコンパクトな多目的攻撃機の新型オスプレイ3があった。

 御舩が大型エレベーターに到着すると3機のオスプレイ・パイロットがコクピットから御舩と、護衛の2人が歩いて来るのを視認した。

 離陸準備をするパイロットたち。


( キイィィーン……。シュー……)

( キイィィーン……。ゴゴーッ! )

( キイィィーン……。ゴゴーッ! )

  
 全機のエンジンが始動を始めた。

 大型エレベーター側面、補助ライト類が、順番にパラッパラッ、パラッパラッと上に昇って点燈して行く。

 御舩は2人の衛士用WALKERを着たポーランドJWグロム、高度格闘戦の女性衛士に警護されながら、偽装空港ビルから移動し、これからオスプレイ3に乗り込むのだ。

 その時、きよしの悲鳴がインカムに聞こえて来た。
 

「なに!きよし!」

 
 今までの、きよしとの長い付き合いの中で、初めて聞く断末魔のきよしの悲鳴だった。
 
 もはやこれまで。
 と、あきらめてふらつく御舩。
 
 慌てて2人の女性衛士が御舩の肩を持って支えた。
 

「あ!閣下、大丈夫ですか?」
 
「閣下、大丈夫ですか!どうされましたか?」

 
 だが、しかし。
 動きが止まる御舩。
 

「あら……コラッ。もう……あ~ぁ。ダメだこりゃ。アハハハッ。」
  

 両肩を持たれたまま、笑い始める御舩。
 
「閣下?」
 
「ははっ……若いのってええなぁ、なっ!な、オイッ!はははっ。」
 
「はい?」
 
 不思議がる2人の女性衛士。2人を見て、慌てて立ち上がる御舩。

 笑いながら膝の埃を払い、裾を伸ばした。

 
「あははっ!いあ~、スマン。スマン、スマン。大丈夫、大丈夫。きよしの薄らボケが。アッハハハハッ!」

 
 直ぐに歩き始めて、オスプレイに乗り込む3人だった。
 
          ◇        ◇


 異星人の天才少年少女が物々しくオペレーションする戦略戦術オペレーション・エリア。

 御舩の代行で来た岩井に敬礼した後、岩井の歩く姿を目で追っていた秘書官のメリッサ・ガー・サイオン妃殿下。

 横で座ってオペレーションしている天才少女のナタリアの横にしゃがむと、いきなりのきよしの悲鳴が聞こえて来たのだった。

 奥の方では、岩井宙空将が焦ってベランダへ走って行く。
 
 メリッサが、アッ!と言う表情をしてから、気絶するように床に倒れ込んだ。

 無意識に首からのインカムを手で持って床に落とし、ドンッと尻もちを着いた。
 
 ネェイジェア星域帝国の正統派皇室の1人娘が床に崩れ落ちたのである。

 慌てて立ってメリッサの背中をさするナタリアと、立ち上がった数人の少年少女たちもメリッサを支えた。
 

「メリー!大丈夫っ?大丈夫なのメリー!」

 
「メリー!だ、大丈夫なの、メリーしっかりして!」
 

「メリー!ちょっとメリー!」

 
「メリー?メリー?」
 

 幼いナタリアは床に転がるメリッサのインカムを無理矢理、白目を剥けるメリッサの首に巻いた。

 驚いて、立ち上がって注目する戦略戦術室、残りの天才少年少女たち。

 きよしの悲鳴を聞いた何人かの少年や少女は一度立ち上がったが、また座り塞ぎ込んで泣き始めた。
 
……だがしかし、悲鳴の続きを気絶しながらも聞いているメリッサだった。
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