「メジャー・インフラトン」序章3/7（僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. ）

第10章 激突！

第5話 懐かしの「AMWOS」アモス。

((　ガシャーン！　))

　敵HARMORの両肩を持つきよし・布村タンデムモービル。
　
　２台のHARMORがおよそ1200メートル上空で接触したのだ。
　勢い収まらず、胴体同士がぶつかる。

（　ドガシャーン！　）
　
　摩擦熱で物凄い火花が空に噴き出した。
　
　日本や西側勢力のHARMORの装甲シールドは日本製の超軽量の炭素繊維装甲で一切火花など出ないのだが、AXISや東側のHARMORはロシアのOEM製で鍛造鉄鋼を使っているのだ。
　
　両HARMORの接触した接点から火花が噴き出した。
　
　きよし・布村タンデムモービルの持った左マニュピレーターの敵HARMORの左肩シールドが後ろに弾け飛ぶ。右手で敵HARMORの右肩しか持つことが出来なかった。
　お互いの胴体がぶつかり合ったために、衝撃で敵HARMORのコクピット・シールド・バイザーも吹き飛んだ。

((　ガシャーン！ヒュルルルー！　))
　
　吉田の正面にあった球面モニターがなくなり、きよし・布村タンデムモービルの胸部がモロに迫っていた。
　
　物凄い風の音だった。

「うぎゃー！ビックリー！ぶぅわー！かー！風がぁ風っキッツー！息ー出来ないぃーっ」
　
　驚く吉田だった。強烈な風圧が吉田を襲った。

　きよし達の正面モニターにも被弾し血だらけの敵パイロットが映し出された。

　しかし、回転し安定しないカメラ視点でパイロットが居る程度しか認識できなかった。

　２機はクルクル回りながら落下した。回転の横Gが布村達少女を襲う。

（　グググッ！　）
（　キャー！落ちるーっ！）
（　パンダ隊長助けてー！うわぁー！　）
（　目が回るーっ！オエーッ！）
（　誰かぁー！止めてーっ！）
　
（　高度1000メートル通過。依然、降下中。）

　回転する横Gに苦しむ布村達。

　左腕の小さなバーニアを噴射して敵HARMORの肩を持ち直し、自機の固定を試みるきよし。
　

「エイモス！ハッキング！」
　

（　既にハッキング中。……敵HARMORシステムに侵入中。システム初期化開始。システム初期化中。　）
　

　むき出しになった敵HARMORの左肩の関節部をやっと掴み、固定するきよし。

　２機の回転が、微妙な各部のバーニアの噴射で止まった。
　
（　高度900メートル通過、ハッキング終了。敵HARMOR初期化終了。システム立ち上がります。　）
　
　吉田のコクピットの全ての電源が切れる。暗闇の中、キョロキョロと見る吉田。その時、左右のコンソールモニター全てに吉田にとっては懐かしいロゴが出てきた。
　
　思わず声が出る吉田。
　コクピットの明かりもつき始める。
　
「オー！ホホホッ！」
　
　日本国軍時代、訓練のたびにHARMORを立ち上げると必ず目にしていた「AMWOS」の文字が表示されたのだった。
　
「ふふふっ。アモスが立ち上がったか。ざまー見ろAXISめ。ふふふっ。はははっ！」
　
　もう、これでAXISによる締め付けを気にすることが無くなった吉田だった。

　きよし・布村タンデムモービルの正面モニターには吉田のアップが映る。
　
　しかし、厚い雲の中に突入したので、流れる雲の水蒸気で顔が見づらかった。
　
　が、立ち上がったアモスOSによってコクピットの各種ライトの光が、顔に反射した。
　
　ハッキリした顔が少女たちの見ている正面球面モニターに浮かび上がる。

（　あっ！あぁーっ！　）

　声を出す４人の乙女達、佐藤結衣、寺田麗子、鈴木絵里、中村・スーザン・幸子だった。
　布村が振り向いた。
　
「結衣っ？麗っ？何、何、（あぁっ！）って。どうしたの？」
　
　佐藤結衣が目を細めてモニターを見ながら話す。
　
「サッチ、絵里、ねぇこの人だよね。麗子、あの初日よ。」
　
「そう、そう、タクシー乗り場を攻撃されて愛子とはぐれた時、地上部隊の変態（兵隊）たちに捕まったの。その夜、元、日本人とかで吉田さんと小林さんという２人が助けてくれようとした。でもダメだったけど。恐らく、その時の吉田さんだわ。」


（　……。認識開始します。　）


　結衣たちの話で、すぐに反応するエイモス。

　正面モニターの右ウインドーが現れ、顔照合と、手の平の指紋を照合した。

　すぐさま、日本国軍時代のデータが表示され、データが下からタタタと表示される。

　そして千歳シーラスワンにも情報が即座に伝達された。