「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第10章 激突!

第4話 空中での衝突!

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 敵の残存HARMORが対馬市と反対に逃げるのを確認できた田中たち。
 これで、ジョナサン航空隊の空爆目標がこの避難所から遠くへ離れて行ったのだ。
 シーラスやきよしたちの戦略目的、空爆目標の敵HARMORや、地上部隊を極力対馬市から遠ざけるという作戦が半ば成功したのだ。
 疲れが出て来た田中対馬長官が、指先でペンを回しながら座っていた。
 
「そうか、あの吉田だったか。」
 
 ボソッとつぶやいてテーブルの立体画面を見る。テントの外では、対HARMOR用に20式戦車の列が走って来ていた。

( キュルキュルキュル。 )
( キュルキュルキュル。 )
( キュルキュルキュル。 )

 戦車のキャタピラの振動で、テーブルの上の文房具も振動している。

( ジャラジャラジャラ。 )

 その音が目障りなのか、その文房具をマグカップの中に差し入れる田中対馬長官。
 額を掻きながら衛星戦術モニターを何気なく見ている。こちらに落下してくる敵アイコンがあった。そのアイコンへ、目がけて高速で接近するきよし・布村タンデムモービルの003バードワン。
 通常の3倍のスピードで吉田HARMORに接近している。立ち上がる田中。
 
「あっ!椎葉少尉が来た!」
 
 テーブルの正面に立って、モニタリングしているVRの岸田も確認した。
 
「003バードワン、椎葉少尉のHARMORが全速力で敵HARMORに接近中。」
 
 岸田が答える。両手を広げて慌てて田中がテントで大声を出した。
 
「あっいかん!いかん!全員ちゅーもーく!対空戦闘中止!バードワンは敵の識別信号。椎葉少尉が使っている。先程の通達通り、味方だ!椎葉少尉だ!バードワンは味方だ!対空警戒のみ!対空ミサイル発射準備停止、対空砲はトレースのみ。即座に通達~!」
 
( 対空戦闘中止、監視のみ!繰り返す、対空戦闘中止、監視のみ! )
 
 復唱するテントの将官達。全員がテントの外に出て、上空を見上げた。再び張り出した低い雲があって、上空にいるであろう吉田が搭乗しているHARMORは肉眼では見られなかった。
 
「吉田の、HARMORの状態は?」
 
 VRの岸田に聞く田中。
 
「全く動かず、自然落下のままです。直上から落ちてきています。司令?バードワンとの連絡は?」
 
 田中は少し考えてから、VRの岸田の肩を持った。
 
「シーラス、閣下から一切の連絡は不要とのお達しだ。それで落下予想地点?落下時刻は?」
 
「えー。落下予想地点は……えー、フェリーターミナル正面80メートルの海面です。あと約2分後です。」
 
「解った。とりあえずフェリーターミナルから避難民を一時出せ。」
 
「了解。」
 
 すぐに連絡をする岸田。
 ゾロゾロと避難民が誘導されながら、フェリー・ターミナルビルから出て来た。

(( ヒューン!ゴォー! ))

 ベイパーコーンの雲の傘を身にまといながら上空に更に加速するきよし・布村タンデムモービル。
 
 さすがにバーニア全開の飛行中のコクピットでは物凄い騒音と予期せぬ左右上下の揺れが突然している。
 
 その中で発射時の加速Gに負けて気絶している5人の少女達。きよしの周り、4人の少女達は両手をしっかり上げたまま気絶していた。
 
 ガタガタを大きく振動しているコクピット内部。
 よだれを垂らしたまま気絶している彼女たち。
 そして腕をダラ~と下げていた布村が、最初に気が付いた。
 
「あ、あ、うん……。あっ!パンダ隊長っ。気絶してました。意識不明の十代してました。わ、うわー凄い振動!私はずっと下向いていたんですねぇ。」
 
「大丈夫ですか?布村さん、今、まだ飛行中です。これから敵HARMORを空中で確保します。空中の白兵戦になるかも。」
 
「了解!パンダ隊長。さぁー皆起きて起きてっ!(パンパンッ!)あーんもぅ!頭に血が昇っ来た。こめかみとか首筋が痛い。」

(( パンパンッ! ))
 
 手を叩く布村。
 起き始める4人。布村ときよしはHARMORがうつ伏せになって飛ぶと、頭が下に向くのだった。
 
「うわー物凄い加速だったのだ。瞬殺!ズルッ、うわぁよだれ御免なさい。」
 
「私も、うえ~よだれだらけ。」
 
「私もぅ。アゴがよだれだらけ。気持ち悪いぃ。両手使えないからパンダ隊長拭いて。」
 
「私も拭いてぇ。キッしょい。お願いーっ。アゴが痒いぃ。思いっきり掻きたい!」
 
 棚を開けてリュックから汎用ウエットテッシュを出して、4人のアゴのよだれをさっさと拭いてあげるきよしだった。
 実は、この機体のバーニア。今回の最大噴射で既に限界だったため、次の噴射が出来ない。
 せめてもの思いでよだれを拭いてあげたきよしだった。
 
 そしてコクピット内を見渡した。
 
「みんな、聞いて。」
 
 ヘッドギアの正面ガラスを開けて、振り向く布村。
 
「みんな、聞いてくれ。もうバーニアはこの噴射がラスト。何も手を打たなければ墜落するしかない。」

( えぇぇぇー! )

「コクピットを機体から緊急脱出させても、6人乗るスペース確保の為、パラシュート収納部分を捨ててリフォームしたから、それも出来ない。」

( えぇぇぇー! )

「だからあの落下している敵のHARMORのバーニアを使う。」
 
( 敵HARMOR補足致しました。接触まで15秒。画面出します。 )
 
 選択肢の無い、布村とその少女たち。全員覚悟した。
 しかし、実際はアーマースーツを着ている為、空から落下しても平気ではあるのだが。そのきよしの話を聞いて真剣になる乙女たち。
 
「エイモス!接触と同時にハッキング開始。」
 
( 了解いたしました。アーム部、腹部バーニア噴射。減速いたします。 )
 
 きよし・布村タンデムモービルが両腕のアーム部の肘を曲げて前に出した。
 
( バシュー!バババー! )
 
 肘、手首、脇腹のバーニアが噴射する。小型バーニアでも物凄い減速にともなうGが全員に掛かった。
 

(( 衝突に備えろっ! ))

 
 歯を食いしばり目をつむる少女達。そして、6人の正面画面に迫る敵HARMOR。

 次の瞬間。


(( ガシャーン! ))


 敵HARMORが衝突したのだ!
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