「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第10章 激突!

第1話 ムーンリバー・ワン、参上!

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 晴れ渡る南西諸島の夜空。
 
 無数の星がきらめいている。空気が綺麗なこの小さな島々では、鮮やかな天の川が伸びているのが見える。
 
 その星々がこぼれたのだろうか、またひとつ、またひとつと流れ星が流れる。
 
 それも長い尾をひいた流れ星だった。
 真っ暗で星空のキャンバスに、どんどん遠慮しないで無数の流れ星の光る線を引き始めた。
 
 最新鋭の宙空急襲攻撃型戦闘機F-39Bの24機が「EI」(大気圏再突入)を始めたのだった。
 キャプテンのジョナサン・M・オースティン大尉が搭乗した通称:ネオファントムだった。
 地球に対して背面のまま、再突入したのだ。
 逆さまになった、戦闘機の底が真っ赤になり、摩擦熱の透明な長い炎を後ろになびかせている。
 
 再突入の為、対地ミサイルや対HARMORミサイル、対戦車ミサイルなどの装備品を守っている流線型のシールドカバーが、いよいよ役目を終えて外れて後ろに弾き飛ばされた。
 
 「EI」も終わる間近に、ジョナサンの目に恐らく目的地だろう対馬の方角の暗闇の中、黄色く光る火球と広がる衝撃波を目視する事が出来た。火球が空に昇るのが見えたのだ。
 
「何?戦術核!遅かったか。どうなんだ?」
 
( はい、「EI」(大気圏再突入)中で断片的な通信情報ですが、シーラスマザーや対馬を包囲している艦隊と思われる味方の通信からの報告では、チャイニーズアクシスのHARMOR用核融合電池が融解、爆発したと聞きとれました。断片情報で正確ではありません。 )
 
「ん……了解。核融合電池で核爆発って意味が解らん。重水素でどうやって核爆発?まぁ良い。後で解るだろう。核攻撃による核爆発ではないんだな。「EI」終了後、戦況分析も頼む。」
 
( はい、了解しました。大尉、MSFCTの戦術データベース及び千歳シーラスワン・マザーとのアクセス開始致します。 )
 
「了解。……ロシア製のHARMORって自家発電にたしか、通常の核融合電池に重水素しか使ってなかったはずだけど、ふ~んロシア製のコピーのチャイニーズのHARMORはまだ小型原子炉電池を使ってるのか。お~怖っ!製品精度が悪く、HARMORの機体が重たいから馬力を上げる為なのか?怖~っ!」

( はい、仰る通りです。以前、潜入、ハックしたゴブリンのレポートにもありました。 )
 
「だべー。同じOEMでも、このF-39B、正確にはJF-39Bはアメリカ製のOEMを日本で作っているけど、日本製のハイパーカーボンで外殻が20パーセントも、強度が上がって2トン軽くなってるのになぁ。エンジンだってアメリカ製のラムジェットより15パーセント小さくて、馬力30パーセントアップだぜ。オイっ!OEMで更に性能アップの日本と真逆だな。そうかぁ核爆発か。了解。各機連絡せねば。」
 
( 大尉、まもなく「EI」が終了いたします。ラムジェットエンジン、アイドルー開始。プラズマ・デトネーション・エンジンの正常停止確認。ラムジェットシリンダー内、大気流入開始。……大気流入の安定確認。ラムジェット・エンジン点火。 )
 
 F-39Bの噴射孔から出ていた真っ白の噴射炎が終わり、代わりに鋭い青白い鋭い炎が噴射し始めた。大気圏へ突入し、通常エンジンに切り替えたのだった。
 左右の噴射孔側を振り向いてみるジョナサン。
 
「はははっ!さすが、高性能のIHeの日本製!薄い大気でも一発点火だ。スッキリスッキリ~。あ~気分いいわ。はははっ。」
 
 「EI」も無事終わり、ぐるりと、機体を回し背面飛行を元に戻した。
 後衛の23機も順次ゆっくり回転して背面飛行を終えた。
 背後には各機の真っ黒い煙が大気を漂っている。全機の状態をAIで確認しているジョナサンに三沢基地から通信が入った。


( ピー。こちらMSFCT。こちらMSFCT。第1HARMOR宙空艦隊打撃群、 第13宙空防衛部隊・宙空対地急襲攻撃第1中隊ムーンリバーワン、ムーンリバーワン聞こえるか?中隊に異常はないか?オーバー。 )

 
「MSFCT、感度良好。全機異常なし。全機異常なし。ロールオーバーは見事に成功だ。オーバー。」

 
( ムーンリバーワン了解した。最終フェーズおめでとう。さっそく、月帰りの「EI」後で悪いが、ムーンリバーワン。ミッションだ。詳細は今、確認してくれ。カピー。)
 

「アイカピーザッ。作戦指示書を確認する。オーバー。」
 
 キャノピーの手前に3Dの作戦指示書が浮かんだ。読みながら苦笑いするジョナサン。

 
「ふふっ。あ~うっとうしい奴らだ。なんで、負け始めると核攻撃?地球のゴミだな。全く。」
 
 作戦指示書には、2つの小隊(ムーンラビットワン、ムーンラビットツー)に分かれ、惑星環境ハイブリッド新型ミサイルの効果確認の意味も含め、中国大陸を飛ぶ戦略熱核爆弾をつんだAXISの戦略爆撃機20機を撃墜せよ。
と書かれていた。
 

「MSFCT、MSFCT。作戦受領。直ちに作戦に入る。カピー?」
 
( アイカピーザッ。こちらMSFCT、MSFCT。作戦の成功を祈る。カピー? )

 
「カピーザッ!ムーンラビットワンは対馬に向かう。オーバー。」
 

( ムーンラビットワン、ラジャ。 )

 
「ムーンラビットツー、シモンズ。ユーカピー。」

 
「アイカピーザッ!キャプテン。ムーンラビットツー、作戦受領しました。ラジャー。」

 
 ジョナサンの24機が単縦陣の、一直線になってならんで飛行している。
 シモンズ准尉の12機が、ジョナサンのムーンラビット・ワンと平行に並び始めた。
 ネオファントム部隊は、2列になって、超音速で高高度を飛び始めた。
 
 左にならんだシモンズ准尉の12機の機体を身を乗り出してみるジョナサン。ニッコリ微笑んだ。
 
「武運を!シモンズ!ユーカピー。」
 
( アイカピーザッ! )
 
 シモンズ准尉が敬礼をしてから左上に急旋回を始めた。
 機体を傾けて見るジョナサン。シモンズに続く11機の機体。あっという間に成層圏の上層に消えていった。
 暗闇の中、傾いた機体をサッと戻しマッハ5の超音速で対馬に向かうジョナサン・M・オースティン大尉率いるムーンラビットワンだった。
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