「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第9章 2つの祖国。

第4話 しがらみからの逃亡。

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 振り向くと、懐かしい顔が2つあった。
 
「えっ!おー曽根っ!なんで。あら、おー西浦っ。お前たち!おー!しばらく。ちょっと待ってしょんべん終わって自分の、しまう。」
 
 4人の後ろには10名程の曽根と西浦の部下の日本国軍の特殊部隊員が銃口を向けていた。
 その手前に、元同僚の曽根と西浦がいたのだ。
 
 小便支度も終わり、両手を上げて振り向く4人。
 特殊部隊員に、手を後ろで縛られながら、吉田がニコニコと言う。
 
「西浦、お前のいう通り帰国しなければ良かったがな。ハハハッ。」
 
 銃を向ける西浦少尉、シーラス情報特務隊隊長だった。
 彼も在日韓国人だったが、彼は帰国しなかった。これを機会に日本へ帰化したのだった。
 その西浦が吉田の肩に手を乗せて言う。
 
「お前らの選んだ事だ。でも、今は敵同士。懐かしんでもおられへんがな。すまん。」
 
 吉田が振り向くと4機のHARMORには自衛隊、日本国軍と思われる整備員や作業員達が乗り込んだり、証拠の写真を撮っていた。

 自機のHARMORを見る吉田。

 その吉田のまぶたの裏に明洞で暮らす嫁や娘、日本から来た両親の笑顔の食卓が目に浮かんだ。

 その時、吉田の体が勝手に行動してしまった。
 
( ドンッ! )
 
( 痛ったー! )
 
 とっさに西浦を肩で倒して自機に向かった走って行った。

 突発的に頭に血が上ったのだった。
 
「バカ野郎ーっ!吉田~っ!やめんか~!止まれ~!吉田アカンって!」
 
 倒れた西浦が手を上げて叫んだ。

 特務部隊員の一人が腕を後ろに縛られたまま走る吉田を狙った。

 アッと、その銃口を下げる曽根。

 そして曽根少尉は吉田に目掛けて走った。
 
「待たんかぃ~吉田っ!」
 
 吉田は、上がり始めた自機のマニュピレーターに乗っている作業員を脚で蹴って落として、マニュピレーターに立ち上がった。
 
「すまん曽根っ!西浦っ!これでええんや。これでっ!」

(( シュパパ!シュパパ!シュパパ!))
 
(( パンパンパンッ!))
 
(( シュパパパパ!シュパパパパ!))
 
 特務部隊員が銃撃する。
 伏せる吉田。その吉田に自分の小隊員、同期の友人からの声が聞こえてくる。

( 吉田ーっ!一緒に日本へ帰ろう!吉田ーっ!かまへんて!一緒に酒飲もう!日本へ帰ろうっ! )
 
( たかー!もう止めようっー!たかー!帰ろー!曽根がなんとかする。帰ろうーたかーっ! )
 
( 吉田ーっ!一緒に帰ろう!吉田ーっ!かまへんて! )
 
 後ろで手を縛られ、確保された3人のパイロットが悲痛に泣き叫ぶ。
 マニュピレーターの上で身を縮こませて、泣きながら謝る吉田。
 
「みんな、すまん。ホンマにすまん。うっうぅ。」
 
 マニュピレーターがコクピットの正面に止まる。
 コクピットに転がり込む金上尉。
 
「AIっ!シールドクローズ。早く閉めんかいっ!核エンジンスタート!緊急発進スタンバイ!始動プロトコル省略っ!」
 
 コクピットのシールドが閉まり始める。
 そして、全装備品に火が入った。
 コクピットシールドの上下を閉めながら、カエルしゃがみから立ち上がる、金上尉こと吉田隆のHARMOR。

( ガラガラガラガラ。 )
 
( ウィーンガシャ!ウィィーン、ガシャン! )
 
( 金上尉を確認致しました。始動プロトコル排除。緊急始動いたします。 )
 
「溶接レーザー出せ!」
 
 自分を殺害しようとしていたダメージコントロール用溶接レーザーで手を縛った縄を焼く金上尉。手首をさすりながらコクピットに着いた。
 
( スタンバイ出来ました。指示をお願いいたします。 )
 
「緊急ジャンプ用意。バーニア、緊急始動。目標!敵フェリーターミナル直上1500~っ!」
 
( フェリーターミナルにジャンプ先を設定。トレースを完了いたしました。17秒後、発射可能です。 )
 
( キィィィーン!ゴーッ。 )

 バーニア噴射孔が過熱し、高熱による陽炎がランドセルの周りに上がって来た。

「退避ーっ!早く退避しろーっ!」
 
 バーニア噴射から逃げるために、曽根、西浦の両少尉が特殊隊員や整備士、捕虜になった3人を避難させる。

 走りながらスマハンドで田中対馬長官に報告する曽根少尉。
 
「長官!申し訳ございません。吉田を説得できませんでした。吉田は自機のHARMORで港の避難民を襲うと思われます。恐らく韓国に残してきた家族の為、武功を上げる為にそちらをジャンプ後、無差別急襲すると思われます。こちらも対戦車で破壊を試みますが、失敗したら。あと2分もせずに厳原湾上空へ到着します。」
 
 テントの外で連絡を受ける田中。

 左手を耳に当てながらテントに戻って司令を出した。
 異変に気が付くテント内のベテラン士官たち。

 全員が即通信できる体制になる。
 
「対HARMOR戦闘用意!対空戦闘準備!地対空用意!対戦車も用意。大至急ー!フタマル(20式戦車)回せー!」
 
(( はっ! ))
 
 テント内の士官全員が敬礼をしてから一斉に動いた。
 飛来するであろう、吉田が乗る、敵HARMORに備えたのだ。
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