「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第9章 2つの祖国。

第1話 対馬市、厳原港。

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 厳原湾港の臨時の日本国軍・自衛隊戦術作戦本部テント。
 
 腕を組みながら戦術3D テーブルの画面を、上から見ている田中対馬司令長官。

 先程、御舩からの連絡で、自分の妻や長女の無事を知り、実際に家族2人と話をして無事を確認した田中だった。

 田中の気持ちとは別に、逆に心配もされて物凄く妻子に怒られたりもしたが、対馬から離れた福岡で保護されていたのだ。
 
 少しは心に余裕が出来たのであろうか。

 落ち着いて周りに気をつかう余裕が出来た様子だった。

 大きなテント内を改めて、見る田中。

 撤退につぐ撤退だったが、何とかスタッフも通常通りの仕事をしているようだった。
 
 テントの端では、シーラスから送られた衛星戦術モニターを見ながら司令を出す者、白板で残った部隊の配置を考えている者など日本国軍や自衛隊の指揮官たちが忙しく動いている。

 対馬共同基地センターから命からがら持って来たOA機器や通信司令機器はテント中央に置かれ、シーラスからの贈り物はテントの端側において、外を見ながらオペレーション出来るようにしたのだった。
 
「司令。椎葉少尉機、北側最後尾の敵部隊の直上。ランディングを開始しました。敵、直上より降下始めの模様です。」
 
「お!少尉が来たか。よし、よし。」
 
 田中に報告したのは日本国陸軍事務官の岸田2等陸尉だった。

 サングラスタイプのVRを付けてきよし・布村タンデムモービルの動きや、鹵獲HARMORのデータを報告したのだ。

 岸田は、何もない空中を指先で様々なウインドーを開いて情報を取得しているのか、人差し指や親指を忙しく動かしている。

 港側から見ると、港は背の低いビルに囲まれているがテントから身を乗り出して、そのビルの背後の暗い空を見上げる田中。
 
 目を細めると、遠くの低い雲の中からオレンジ色のバーニアの光がゆっくり降りてきた。
 雲を下から照らすバーニアの炎。

 タイムラグを置いて噴射音が聞こえて来た。

 
( キィーン、ドドドドドー! )

 
 バーニアの炎が肉眼でも見えた。
 
「成る程、急襲攻撃か……。」
 
 ニッコリする田中。
 VRを付けた岸田が急いで田中に報告した。
 
「あっ!敵にロックオンされています。索敵電波は市街地の部隊です。あぁ敵、対空ミサイル発射。長官!」
 
「んっ!フレアーは?」
 
「あっ!あっ。依然、そのまま降下中。フレアー認めらず。フレアー発射していません。」 

 
( シュシュー!シュシュー! )

 
 敵HARMORの発射したミサイル音がワンテンポ、遅れて聞こえる。
 
「まだ椎葉少尉機、以前降下中。あっフレアー発射。フレアー発射。遅いっ。」
 
 背後の暗闇の中の左右に広がるフレアーを肉眼で確認する指揮官たち。

 大きなオレンジの噴射炎の周りに花火の様に、チカチカと光るミサイルの爆発光。
 
「敵、ミサイル着弾。ミサイル着弾。HARMORに当たっていません。」

 
( パラパラパラッ!パラパラパラッ! )

 
 打ち上げ花火の様なフレアーの発射音。すぐにミサイルの炸裂音が聞こえてくる。

 煙に反射するミサイルの炸裂の光。
 その真ん中をオレンジの噴射炎が、何事も無く真っすぐ降りるていた。
 そして建物の影で見えなくなった。


( ドン、ドン、ドバンーッ!ドンドン!ドバンッドババッー! )


 引き続き遅れてミサイルの着弾音が聞こえてくる。
 
「衛星戦術、ミクロ映像にしてくれ。」
 
 外からきよしの放った40ミリカノン砲の発射音が遅れて聞こえて来た。
 
( ゴンッゴンッゴンッゴンッ! )
( ゴンッゴンッゴンッ、ゴンッ! )

 きよしたちの着陸した地点の衛星軌道からのアップ画像を、テーブルモニターではなく、立てたモニターに表示した。
 
 衛星軌道からの映像。

 地煙がゆっくり動いて地面の様子がだんだん解る様になる。

 倒れている4機の敵、HARMOR。その一台の背中にきよし・布村タンデムモービルが乗っているのだろうか、地煙で難解な映像だった。

 目を細めてモニターの周りの集まる指揮官たち。
 
「長官、これー倒れてる敵のHARMORの背中にぃ、少尉の機体が乗ってるんでしょうか?」
 
「恐らくな!んっ?」
 
 衛星戦術画像の隅に、よくある黄色に黒のマークと(放射線注意)の文字の警報が点滅した。
 
「どうゆう事だ?」
 
「長官、シーラスに照会中。……ハイ。えっ。えっ。了解しました。」
 
 士官がシーラスに事象の照会中に、画面では倒れた敵HARMORから大量の放電が始まった。
 時折、大きな放電の稲光が画面を真っ白にする。

 低い雲の下を放電の光が稲光の様に広がる。
 
「長官、敵HARMORの核融合電池の臨界が始まったらしいんです。核融合電池の臨界って。」
 
「敵は核融合電池に、ウランなど放射性物質を使っているとの情報はあったが、本当だったとは……。ヘリウム3の重水素の核融合ではなく放射性物質と使った、ロシア製コピーのただの小型の原子炉か……、あっいかん!いかん!」
 
 大慌てで田中長官がテント内に大声を上げた。
 
「全ての電気機器、電子機器の電源オフ!早くしろー!電源オフッ!早くー。手順通りっ!手の空いている者は外へ!漁船、車全ての緊急停止。拡声器っ何でもよい!放送や、手信号でもよい。核爆発が起きます。全ての電源を消してくださいと!周知手順通りに。」
 
 全ての指揮官が大声で(電源オフー!)と叫びながらテントの外に走り始めた。

 テント内でOAの電源を急いで落とす隊員たち。

 シーラス製品以外のテント内の全ての電源が消えた。

 実は、万が一の核攻撃の可能性を考えて、全ての兵士、隊員まで既に手順を周知済みだった。
 
 ほぼ真っ暗になる厳原湾全域。
 たった1分も経たずに全ての明かりが消えた。
 
 対EMS強化型仕様のシーラスからお土産のOA機器類、小型HEV、シーラス派遣の呂号潜水艦や自衛隊潜水艦などは、そのまま明かりを灯していた。

 テントはシーラスのモニター類や特殊発電機のおかげで光が付いているが一般家電は全てオフにしたままだった。
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