「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第7章 第3次世界大戦前夜?

第7話 対馬を封鎖せよ!

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 あらゆる手段で情報封鎖が進む対馬だった。

 そんな中、AXISは苦し紛れに、予定よりかなり早く、本国から核兵器搭載の戦術爆撃機を発進させてしまったのだ。
 
 軍事衛星からの報を受けて、いち早く反応するシーラスの機動部隊。

 近隣の女真帝国は古い防空装備しかないため、その援助で直ちに第1級の準備がなされた。
 
 空母から空対空装備の戦闘機を次々発艦させる空母機動部隊。

 対馬沿岸で待機している各国の機動部隊は、完全に臨戦態勢となったのだ。
 
 千歳シーラスワンのオペレーションルームでは、モニターもアジア全域に切り替わり、敵AXIS・核兵器搭載の重爆撃機部隊の追尾を始めていた。
 
 画面に表示される敵爆撃機部隊と各機動部隊の迎撃航空部隊のライン。

 その時、更に緊急のサイレンが千歳シーラスワンに鳴り響く。


(( バババ、キョワーン!バババ、キュワーン ))


 あろう事に中立を保っていたはずのロシア、ブラジル、ドイツの戦術核弾頭ミサイルサイロが、スタンバイ稼働を始めた。

 稼働スピードにはかなり時間差はあったが、やはり名目中立国であったのが解った瞬間でもあった。

 それを受けて、ヨーロッパ全域にも厳厳戒態勢がひかれたのだ。
 
 ロシアと国境が隣接しているポーランドやウクライナの中央ヨーロッパ諸国では、国境付近の緊急配備に急いだ。

 ポーランドに隣接するベラルーシでも、ロシアに呼応して中距離核の準備が始まった。

 中央ヨーロッパ内のシラス同盟国軍およびNATO軍基地も迎撃ミサイルの緊急配備を急いだ。

 アメリカ本土、英国本土も港湾の封鎖、空港、駅の封鎖が始まった。
 
 全世界中が騒然となった。
 
 衛星空間でも対ミサイル防衛準備となった。

 各国はSNSで配信される冷やかしや、便乗ニセ情報などが出る前に地上波、ローカル回線全ての放送を止めて政府声明を出し始めた。

 各国政府によるシビリアンコントロールが始まってしまったのだった。


 第3次世界大戦前夜の様相となる地球。

 
 千歳シーラスワンのオペレーションルームの巨大なメインモニター。
 
 その地球全域を占めす大型モニターには新たな表示ラインとアイコンが表示された。

 同盟国の大陸弾道戦術熱核ミサイルを積んだ原子力潜水艦のアイコンだ。

それが無数に表示されたのであった。

 地球上の全海原を「青」で同盟国の原子力潜水艦を示すアイコンが現れたのだった。

 それも無尽蔵に現れた。目を見張るオペレータールームの事務武官たち。

 突然、青いアイコンが一斉に大陸弾道戦略核ミサイル発射準備完了を示す「赤」に切り変わった。


(( おぉぉ~! ))
 
(( うわぁぁ~! ))

 
 感嘆の声、声にならないうめき声が広がるウーラノスCDCのオペレータールーム。

 日本政府が危惧していた世界大戦へ突入する一歩手前に、情勢が変わりつつあったのだった。

 日本政府より限定的反抗作戦のGOが出た時は、両腕をあげてガッツポーズをした各国の情報事務武官たちだったが、今は重たい空気となり、押し潰されそうになっている。
 
 そんな緊急事態が発生した、千歳第1宙域打撃群作戦本部・シーラスアサルトの極東北部指令本部、通称:千歳シーラスワンのウーラノスCDCだった。
 
 しかし、一連の敵や名目中立のチャイニーズ寄りの各国の動きも、御舩達シーラスの幹部が予想していた動きでもあったのだ。
 だが、それは厳しくて不可能に近い選択しかなかったのだ。
 
 残る手段は対馬に上陸した敵全勢力の完全無力化、完全殲滅。
 
 選択しは、それしか残っていないのだ。
 それしか、名目中立国とAXISの矛を収める手段はなかった。
 実行部隊は椎葉きよしの乗る、タンデムモービルのただ1機のみなのだ。
 会議室では、更に厳しい表情をする御舩たち、オリジナル・ペンタゴンの実行部隊だった。

          ◇        ◇


 対馬を覆っていた低い雲に晴れ間が出来て、その奥の暗闇に綺麗な星空が広がっている。

 その下で、右手首を金属の鎖に縛られたまま、片手に焼酎の瓶を持って地べたに座っているAXIS、HARMOR小隊長のパイロットがいた。
 
 この小隊長はつい先程まで、きよしや少女たちに拘束され、尋問を受けたのだ。

 敵の捕虜のハズだが、足元に焼き鳥の缶詰やシーチキンの缶詰のゴミが散らばっている。その小隊長が見上げる先には、グレーと黄色の塗装を施されたHARMORがあった。
 
 そのHARMORはジャンプの為のしゃがみ姿勢を始めた。

 背中のランドセル下のバーニア噴出孔が真っ赤になり、オレンジ色の細長い噴射を始めた。


( キゥィィィ~ン、ゴオオ~! )


「あ~あ。やってしまった。すっかり全部喋ってしまったわい。民間人を標的にしたつまんない侵攻は、もう!うんざり。グビッグビッ!あ~旨いっ。しっかし、やっぱり日本の女の子、可愛いかったなぁ~ヒック。懐かしか~っ!ヒック。」
 
 左手で紙コップの焼酎をグッグっと飲み干し、また同じ左手で紙コップを地べたに置いて、紙パックの博多焼酎のプラスチックキャップを外してから焼酎を継ぎ足した。
 
 ニッコリ笑顔になる敵国、南北朝鮮軍、AXISの小隊長。
 
「かぁ~!ん~ハハハッ。こんな旨い博多の焼酎で晩酌してもらって。それが戦場でなんてな。アハハハッ、あ~日本に帰りたい!もううんざり。地元の博多に帰りたいっ!近所のスナックでだらだらカラオケしたいなぁ。ママたち元気かなぁ……。いや、河岸けし変えて、新宿の立ち飲みで焼き鳥ぅ食べてからキャバクラでもええわな。いやいやこの際っ、ギロッポンのガールズバーでも~、客引きにダマされて歌舞伎町のガールズバーでもええわい!アハハハッ。軍なんかスッキリ辞めて、日本全国を回る営業したいなぁ……。」
 
 新しい焼き肉の缶詰を、鎖でつながれた、右手で押さえて器用に開けて、爪楊枝で差して口に入れた。

 モグモグモグっと、満足そうに発射準備をするモービルを見ながら食べる隊長パイロットだった。

 また焼酎を紙コップで一気にグビグビッと飲み干した。
 
「かぁー!うめっ。染みるぅ。うめっ。んーうめっ。」
 
 再び焼酎を紙コップに並々注ぐ隊長パイロット。
 
「ん~!福岡の屋台で飲んだ後、とんこつ食べたいっ!中洲に行きたい!あ~大阪鶴橋の焼き肉食べたいっ!海鮮キムチで、焼いたサガリ巻いてな!あ~、もぅちくしょうー!2日酔いで阪急そばも食べたいっ!あはははっ。沖縄だったら泡盛飲んだ後、むっちゃ柔らかいステーキ食べたい!あはははっー!あははっ、あ~ぁ……。そんなの無理かっ!あははっ。もぅ無理、無理、む~り。あははっ。」
 
 尋問をポヤポヤポヤと思い出してきた。
 ニッコリするHARMORパイロットだった。

( はい~隊長さん、ア~ン。「モグモグ。あ、うめっ!焼き缶うめー!」でっしょう。パチパチパチ!ハイ、隊長さん次も焼酎しかないけどぉ、いいの?「うわ~めっちゃ可愛い、名前なんての?」絵里よ。絵里でいいわぁ、うふふ。「キャー、おじさん死にそう。ストレートでお願い。」キャーかっこいい!じゃーストレートで。はい!「グビグビグビっ!プッハー!」キャー叔父様素敵ーっ! )

 殴る蹴るの尋問ではなく、5人の少女から、お色気晩酌をしてもらいながら日本が懐かしくなり余計な事も、つい、ベラベラと喋った小隊長だった。

 おかげで通信中継地点や、暗号コードなど、反抗作戦に大いに役立ったのだ。
 
 海中で待機していたシーラス潜の伊-450潜のハッキング部隊から、海中に潜伏している潜水母艦・連邦移動本部のデータを無事、ペロッと全てのデータをハッキング出来たのだった。
 いよいよ、きよし布村タンデムモービルが離陸する。

 バーニアから爆発音と共にオレンジ色の火の玉の様な噴射をする。


( シュキィィーン……ドンッ!ドバババババーッ! )


 ドババーッ!と上昇するモービル。
 
 焼酎の瓶と紙コップを持て、(がんばれ~!死ぬなよ~!)と思わず応援した敵パイロットだった。

 ブワ~ッと地煙がパイロットを覆った。
 埃が入らないように、無意識に紙コップの口を手の平で押さえるパイロット。

 頭から全身埃まみれになった。
 
「うえぇ。ゴホゴホゴホッ!うぇぇ、ゴホゴホッ。オエー!ゴホゴホッ!」
 
 目の前に、つながれていたハズの鎖がジャラジャラと飛んだ。

 鎖の先を手で引き寄せるて見ると、何も繋がっていなかった。
 
「なにぃ、どういう事っ?え、え?」
 
 右腕を上げると、鎖が落ちた。
 
( ボタッ、ジャラ。 )

 きよしたちは、捕虜をつないでいなかったのだ。

 置手紙が鎖の下にあった。
 
「あれ?え、なんだ、手紙か?えっなんか書いてある。どれどれ。」
 
 スマハンドの明かりをつける隊長。
 
( 元日本人の隊長さん、ありがとうございました。核バクハツがあるかもしれませんので、コンクリートの建物に避難してね!パンダ隊長が言ってました。このテントの中でガマンしてください。戦争が終わりましたら皆で焼き肉行きましょう。ね!……パンダ・ガールズ一同。 )

 丸々した、可愛い女の子文字で綴った手紙だった。

 泣き出しそうになる隊長。
 
「あーっ!なんでぇ?なんでよ!敵の俺によ!また、焼き肉行こうなんて。ありがと。ほんまに、ありがとう……。もう、惚れてまうだろっ!あはははっ!」
 
 感動するHARMORパイロット隊長だった。
 夜空にバーニアの光がまだ見えているが、爆音が段々遠ざかっていく。

 コップの埃を、綺麗に胸のタオルで丁寧に拭き直して、また一杯。
 
「グビ、グビ、グビ。ッカァ~!がんばれ~!彼女たち~!あははっ……あ。敵にがんばれ~だってぇ。あははぁ~。ん~さぁて……、日本に亡命でもするかぁ。あははっ。」
 
 パイロットは涙を流したまま、空に乾杯してから飲み始めた。

 ニコニコといつまでも夜空を見ていた。

( ゴオオオオ~……。 )

 きよしと少女たちの乗ったバードワンの爆音が、いつまでも夜空に響いていた。
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