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第7章 第3次世界大戦前夜?
第3話 静寂の訳は。
しおりを挟むニコニコ見ている御舩と、ジェシカダディーの目が合う。
旧友の様に手を上げる2人。
それを横目で見るきよしの父の椎葉繁。
2人の目線を追った。
佐藤誠も2人を見てニコニコしている。
なにげに佐藤誠も、ジェシカダディーも、オリジナル・ペンタゴンの人間と、瞬間に解ったのだ。
横で妻の京子がぼやいた。
「なるほどなぁ、ふん、ふん。」
と、チラッと繁を見た。
京子も知らなかったらしい。
横のオリエッタもうなずきながら、ビールを口につけて繁を見た。
結局、この宴会は、宴会の場を設けたのは御舩少将であるが、地球の古い地下組織のAN-T GATE 。
--ーー ネイジェア星域皇国の異星人の窓口、オリジナル・ペンタゴンの初顔合わせの意味でもあったのだった。
( AN-T GATE : 地球星系・ネイジェア星域協約/銀河条約執行機構の地球側執行機関のオリジナル・ペンタゴン)
それが椎葉夫妻、オリエッタに理解出来た。
この出会いがあった第1雅ホテルの大宴会場なのだ。
--と、言う事はこの第1雅ホテルのオーナー会長の「布村眞一」もオリジナル・ペンタゴンの一員となるのだ。
その妻の恵子ママ、布村愛子の母。
椎葉きよしが幼い頃、父の清春や奈美と、農業が暇になる農閑期になると、大家族で何度かここに来たのは、そういう事かと理解出来た椎葉繁だった。
京子と付き合い始めた時、隠密プロジェクトで手助けしてもらい、いい味を出した布村愛子の母、恵子ママ。
独身時代の名前は、戎(えびす)恵子。
和歌山育ちの京子と麗子の姉妹の幼馴染の、(えびちゃん)だ。
そんな事をぼんやり考えている椎葉繁だった。
その、たまたま。
一瞬のひと時。
宴会場が静かになった。
本当にたまたまである。
シィーンと、静まり返る宴会場。
グラスを置く音、お茶碗を置く音。
ホテルスタッフが運ぶ瓶のぶつかる音や、畳をサッサッサッと歩く音だけになった。
オディアやミーシャが転がってパタパタと足で畳を叩く音。
その時、ジェシカの声が宴会場にポツンと広がる。
「きよちゃん、去年のツシマ。悲しかったね。でも、生きて帰ってきてホント。良かった……。」
ーーーーー( 一瞬、箸が止まるきよし。 )
チラッとジェシカを見ると、少し涙目のジェシカだった。
ジェシカは上品に、きよしに運ばれた北海シマエビのお吸い物の蓋を開けた。
そして、自分のお吸い物の蓋を開けて、上品にすすり始める。
ーーーーー( ふと、目線に気が付くきよし。 )
正面の奥の列の佐藤結衣から始まって、寺田麗子、中村・スーザン・幸子、布村愛子、鈴木絵里の5人が、きよしを見ていた。
少女たちの目が、潤んでいる。
全員を見てから……やんわりとうなづき、お吸い物をすするきよしだった。
ーーーーー( きよしと5人の少女しか解らない特別の感情。 )
激戦地、対馬。
対馬に残して来た悲しくて、苦しかった感情。
悔しくて、悔しくて……。
やり切れない、その瞬間の感情。
そして、激しい怒りの感情。
少女たち5人と、もう1人。
一緒にきよしと銃撃戦で戦った吉田美紀がいた。
吉田美紀は、大きな民家で、きよしと布村愛子と共に3人で、大勢の村民のご遺体や敵兵士の遺骸を丁寧に供養した。
ーーーーー( 最後は黄金に光り輝く夕焼けの下で、3人は手を合わせたのだ。 )
その中の1人の吉田美紀。
美紀もその対馬での「感情」が理解できる1人なのだ。
その美紀も今日は夫婦で参加している。
きよしに助けられた美紀の旦那、自衛隊の吉田1陸士は、旧豊砲台工事現場で助けられた自衛隊同僚と作業員を代表しての出席だったのだ。
吉田は、きよしが助けた工事現場の人の、各家族からのお礼の手紙を届けにきたのだ。
その吉田夫婦も感慨深く、そんなきよしを見つめていた。
ふと、ダンナの吉田が美紀の横顔を見る。
我ながら美しい妻の横顔を見てうっとりする吉田。
美紀が気が付いて、旦那のあぐらをかいた足に、優しく手を置いてニッコリした。
ーーーーーこの過激にして優しい夫婦も今夜、子を授かる。
それもこの宴会からの20数年後の将来、我が天の川銀河を揺るがす「一大事件」が起きるのだ。
その中心人物は、未来の大皇帝、現ジグムント・サイオン皇太子、後のサイオン皇帝陛下だった。
その皇帝陛下と共に闘う妻となる吉田夫妻の長女、吉田沙保里。
将来の「サイオン皇后陛下」をこの吉田夫婦は授かるのだった。
……そんな静かになった温泉ホテルの大宴会場、料理が粛々と運ばれていく。
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