「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第7章 第3次世界大戦前夜?

第1話 カーボーイ叔父さん、乱入!

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 宴もたけなわになり、食事もどんどん進む定山渓ホテルの宴会場。
 
 宴会場を見渡すジェシカ。
 
 各々が席を立って話したり、ビールと返杯のコップを持ってお酌する人たちで盛り上がっている。

 オディアとマーシャと、新しく友達になった御舩の長女のキャッシーの3人が、女将からもらったお土産の玩具で仲良く遊んでいる。

 御舩の妻、ウクライナ美人の優しいアナスタシアがその3人娘の相手をしていた。
 
 正面奥の列では5人の少女がヴィクトリアとゾフィアにビールのお酌をしながら楽し気に話をしていた。

 コクピットから救助してもらったお礼をしている様だった。

 ヴィクトリアやゾフィアも日本の防衛大時代は、良く栗山の椎葉道場に2人で合宿稽古に来ていたので、きよしを弟のように可愛がっていた。その当時の話でもしているのだろうか、ゾフィアとヴィクトリアも5人の少女とともにきよしを見て何やら楽しそうに話をしている。

 ジェシカが何気にきよしを見ると、ニコニコしながら何も気にもかけずにゆっくり懐石料理を食べている。
 
「きよちゃん、私、すんごく幸せ。うふっ。」
 
 なまめかしい横目で、チラッときよしを見る。
 ジェシカは仲間とみんなで楽しく会食が出来、憧れの日本のホテルの温泉に泊まる事が出来た。

 何より大好きなきよしと一緒にいる事が、一番うれしかった。

 そして、たまらなく幸せだったのだ。
 ジェシカの目を見るきよし。
 
「本物の和食って美味しいっしょ。」

「あら。」
 
 また、ズレた回答をするお子ちゃまきよし。
 わかっていて言うのか、全くムードもわからず言うのか、一瞬、ズッコケるジェシカだった。
 
「もう、きよちゃんったら。うふふ。」
 
 これがお子ちゃまきよしのきよしたる所以と諦めて、逆に余計可愛くなるのだった。

 そんなジェシカのラブラブ仕草を見逃さない少女が1人いた。

 それは、布村愛子だった。
 
「うぬぬっ。ふたりで幸せな顔をしおってからにぃ。いつか、いつかぁ。おのれ~。」
 
 ヴィクトリアたちに集まる少女集団の中から大きな佐藤結衣の肩を透かして、目を細めてニラむ布村。

 そこは余裕のジェシカ。
 愛子の目線を感じ。
 
「ムフフ~ン。ニコッ!」
 
 ニコッと、幸せ笑顔で布村に返した。
 
「うわっ!やられたっ!」
 
 一発で、撃破される妄想少女だった。
 あぐらを組んで涙ぐむ布村。
 
 そんな時、また襖がスーっと開いて、三つ指を付く女将の恵子ママ。
 
「また、お客様が到着いたしました。どうぞこちらです。」
 
 浴衣姿にカーボーイハットの大柄な金髪白人の中年男性が立っていた。

 ちぐはぐなファッションの白人男性と金髪の中年女性が宴会場に入って来たのだ。

 カーボーイ叔父さんの後ろからは、浴衣姿の金髪の若い美人が連なって来た。

 
( あっ! )
 

 と、動きが止まるジェシカ・スミス。
 
 口に入れかけたアスパラ焼きが落ちる。


( ポトッ。 )


「はい?あらら、ジェシーお口から、えっ?」
 
 ジェシカの顔を見てから正面に立つ、カーボーイ叔父さんを見るきよし。

 突然叫ぶカーボーイ叔父さん。
 
「こんばんは~皆さん。ジェシカの父のマイケルで~す!はじめまして~!発音は、舞子は~ンのマイコ~で~す。マイコ~!ハハハハッ!」

 あっけにとられながら拍手する宴会場の人々。


(( パチパチパチ! ))


「うわぁ~。」
 
 拍手の中、思いっきり引くジェシカ。
 マイケルの後ろに立っていた金髪の中年女性と金髪の娘も嫌な顔をした。

 そんな家族の雰囲気も、宴会場の雰囲気も全く関係ないカーボーイ叔父さん。

 いきなり、愛想よく右目をつむり、ジェシカに指を差してから手を振った。

「ハーイ!ジェシーッ!ヒュ~ッ、イエーイッ!」
 
 とびぬけてハイテンションだった。
 
「オーマイガァ……オーマイガッシュ。私のパパよ。後、母と妹……。」
 
「えっ!テキサスのジェシーの家族!」
 
 一緒に立ち上がろうとするきよしとジェシカだったが、ジェシカパパはいきなりカーボーイハットを片手で取り、禿げ頭で挨拶をしてから、またカーボーイハットを被って叫んだ。
 
( シゲル~!どこ?シゲルッ~! )
 
「ブッ!」
 
 いきなり、知らない白人に名前を呼ばれてお猪口のお酒を噴き出す椎葉繁。

 お猪口をもったままキョトンとした。

 そして、額にシワを寄せて、左右を見ながらゆっくり手を上げた。
 
( キョウコサーン!どこ?キョウコサ~ン! )
 
「ブッ!」
 
 京子もお茶を噴き出した。
 麗子の手にお茶がかかった。
 おしぼりで、掛かったお茶をふきながら、
 
「ええ!何、何~っ!もう、姉ちゃんきったな~!」

( シイバサ~ン!シイバサ~ン! )
 
 京子と麗子の肩の間から顔を出してキョトンとするオリエッタ。

 3人は顔を見合わせる。
 京子がゆっくり手を上げた。
 
「おー!お2人さ~ん!シイバサ~ン!」
 
 繁も、京子も立ち上がった。
 繁の所へツカツカと歩いて行くカーボーイハットで浴衣姿のジェシカダディ。
 
「初めまして、ジェシカの事、いつもアリガトウゴザイマースッ。」
 
 2人に日本式のお辞儀をするカーボーイ。
 
「ジェシカの父の、マイケル・ルイ・ドレイフェス・ゴールド・スミスです。本当にいつもアリガトウゴザイマス。」
 
 目を見合わせて驚く繁と京子。
 繁は、腕を伸ばして握手した。

 ガシャガシャと大きく手を振って握手するマイケル。
 
「いやー初めまして、椎葉きよしの父の繁です。こちらは妻の京子です。」
 
「きよしの母の京子です。よろしくお願いします。」
 
 繁の肩を触ったり、京子に握手しながらせわしなく話し続けるジェシカダディー。
 しかし、普通に日本語を話ししていた。
 
「ジェシカから頼まれた製品、スープとか肉を持ってきて、ついでに家族で来てしまいました。ビジネスパートナーのまこと・佐藤から今日の日を聞いて、突然お邪魔しました。」
 
「佐藤社長?あ~そうだったんですか。」
 
 佐藤結衣の父親を振り向いて見るジェシカダディ。

 佐藤結衣の父、佐藤誠は世界商社、㈱佐藤商事の5代目のオーナー社長だった。

 現在は、兵糧を日本国軍やシーラスにも卸していて、御舩ヒロシとも懇意だったのだ。
 
 今日、シゲルは宴会場に来る前、御舩から佐藤の事を聞いていたが、まさかジェシカの家族がテキサスから来るとは思っていなかったのだ。
 
 繁と目があう佐藤誠。
 立ち上がり繁に挨拶した。

 返礼する繁と京子。

 ジェシカダディーの後ろからジェシカの母のレイチェルも来て、挨拶を交わし椎葉夫妻と握手した。

 その後ろから突然、それは来た。

(( うわー! ))

 きよしの断末魔のような悲鳴。

 昨年の対馬戦役に続く第2弾の悲鳴だった。

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