「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第4章 鹵獲、敵の機動モービル。

第7話 戦闘開始!

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 敵HARMOR「壊撃ー3型P-1」の4機小隊が警戒しながら最後尾で歩行していた。

 そのHARMORのAIが、敵パイロットたちにアナウンスした。

( 第4急襲打撃部隊、第1小隊隊長、李大尉が後方に着陸いたします。 )

 部隊の最後尾の4機は後衛を務めながら移動していたのだ。
 後衛を務めるのは既に旧型となった突撃人型装甲機「壊撃-3型P-1」だった。
 
 その後方上空、オレンジ色のバーニアを吹かしながら、最近、第4急襲打撃部隊へ12機、3小隊に配属したばかりのロシアOEM、中華帝国連邦製の新型HARMOR、突撃人型装甲機「壊撃-3型P-2改」が着陸しようとしていた。
 NATOやシーラスが最近の調査で分かったばかりの機体だった。
 その新型HARMORを敵から鹵獲ろかくし操縦する椎葉清少尉。

「おい?李上尉がお出ましだって。副中隊長殿のお出ましだ。朴ぅ。肩前面に派手な竹林の虎ってマーク。何処に宣伝してんだか。」
 
「あ~、自分の小隊に遅れて。はははっ。いい気なもんよ北の上尉様は。」
 
「怖いのは将軍様だけなんだろう。アイツら南を完全にバカにしてるし。んっ?そういや金?第4急襲の竹林に虎のマークって、第4小隊はさっき残骸見たような気がする。ちがうか?金?対HARMOR(地対地型モービルミサイル)でぶち抜かれた3機あったよな。なぁにが新型ってお前、笑ってたじゃないか。金?最新型は北ばかりに配備が早いって、文句言ってたよな。」
 
「シッ!朴っ!うるさい!あの~小隊長、韓小隊長っ?たしか北の李上尉は格式に異常にうるさい人ですよね~。韓少尉?北朝鮮陸軍の格式高~い副中隊長ですよね。ふふっ。」
 
「あ~面倒臭い。……ったく。金、お前。元日本人はうるさいわ。お前はまだ韓国人じゃない。金、お前達兄弟はホントに細かい。うるさい。」
 
「失礼いたしました、小隊長。」
 
「謝る位なら、俺に気を使え、気を!お前は上司じゃないだろ。いつも、いつも。」
 
 左側、映された後方追尾モニターに映し出されるオレンジ色のバーニアの炎の李上尉機。
 モニターを見て、あからさまに嫌な顔をする大韓民国陸軍出身の韓少尉だった。
 
 パイロットスーツのシワを両手で伸ばして、襟を正した。
 ヘッドギアの中に入れたゴミを出してから、ヘッドギアを面倒そうに被った。
 そして、やっと自分の小隊に指示を与えた。
 
「ゴホン、ゴホンっ。それでは……。ゴホン。え~小隊~っ!止まれっ!道空け~敬礼っ!」
 
 4機のHARMORは歩行を停止し、通路を作る様に左右2機づつに分かれた。そして、右アームをゆっくり上げて敬礼をして止まった。
 その敬礼をしながら整列する奥の暗闇に、バーニアを吹かしながら丁寧に着陸するろかく獲した李上尉モービルを操るきよし。
 バーニアの噴射で、地面に巻きあがる地煙。

(( ズバーッ!スババババーッ! ))
 
「へ~!どうやってあんな着陸するんだ?ドスンって李上尉は着陸しないんだ。」
 
「お上品なのさ。北の上尉様は。膝を曲げるのが嫌なのさ。」
 
「やかましいー!って、上尉。大変失礼いたしました。我々は……。」
 
( 歓迎ありがとう、韓少尉。しかしな少尉、まだ着陸していなんだ。 )
 
「えっ?何て、言いましたか?」
 
 きよしの日本語を同時通訳して通信するエイモス。
 バーニアを吹かしたままのきよしモービル。
 エンドエフェクタ(人の足に当たる部分)が少し地面から浮かんでいる。

( ズババババーッゴゴーッ! )

「ん?何っ?何だ?」
 
 いきなり4人のモニターから消える李HARMORの「壊撃-3型P-2」。
 
 左右を振り向いて探す4機。
 そして、地面がいきなり明るくなった。
 きよしモービルがバーニアを巧みに操って横倒しになり、地面を浮かんでいる。
 巻き上がり続ける地煙。

( ズババババーッゴゴーッ! )
 
「上尉?どうされたんですか?」
 
 右アーム、右脚部のエンドエフェクタで地面を押さえて、バーニアを吹かすきよし。

( ドババババーッゴゴーッ!キィーン! )

 そして、最大出力の時、地面から手足を離した。4機の足元に横倒しのまま、きよしHARMORが突っ込んだ。

(( ゴゴゴゴゴーッ! ))

 腕を合わせてガードし、脚部も胸の前にクロスして一気に突入した。

( ゴゴゴー!ガシャ!ガシャ!ガシャ!ガシャ! )

 15メートルの巨体4つが、ボーリングのピンの様に、脚部を上にあげて吹き飛んだ!
 頭部や肩から地面に激突する敵HARMOR。
 
( シューン、ドガンッ!)

「うぎゃー!」 
 
( シュードガッ!ドガッドガンッ! )

「ぐわっ!」「ぎっ!」「うがっ!」「ぎゃー!」
 
 頭部からの落下と激突を全く想定していないHARMORの構造。
 中のコクピットも天井に向かって潰れ、崩壊した。
 
 一瞬で片が付いたのだ。
 
 モービルの体を縦に戻し、バーニアを停止するきよし。

( ゴゴー……キィーン、ゴン。プシュ……。)

 噴射孔が真っ赤になったままだった。
 
「エイモス、この敵の機体、今後も、この戦術は有効か?」
 
( バーニアの構造体に熱による溶解と膨張、そして冷却によるひび割れなど発生し、良くて後2回の使用が限度だと思われます。安定した浮遊攻撃は20秒が限界です。この機体のバーニアシステムはオーバーヒートします。我がポーランド・JUKA製と違い製造精度も鍛造が低く、先の豊砲台基地周辺の戦いの36式甲型の様に、10分も持ちません。 )
 
「……そうか。」
 
( そして、少尉。脚部のアクティブ・アーマーも大破しました。次のスーサイドアタックの際は脚部のアクティブ・アーマーは使用不能です。アッセンブリー全体の交換が必要です。次、同事象が起きた場合、脚部本体が破損すると思われます。 )
 
 ボリボリと頭を掻くきよし。
 
「そうか。脚部アクティブ・アーマーをパージ。」
 
( アクティブ・アーマーをパージします。 )

( バシン!バシンッ!……ドンッ!ガランッ。 )

 HARMORの両足の太もも、脛や足関節部を覆っていた防御アーマーが、弾かれて地面に落ちた。
 この時代のHARMORの脚部の運動性能は低いため、椎葉きよしはバーニアをフル活用して運動性能を上げていた。それに伴い強烈な上下左右からの急激なGに対応できるのも、きよしだけであった。
 
( 少尉、布村タンデムモービルが到着します。通信致しますか? )
 
「イヤ、着陸して静かになってから頼む。」
 
( 了解。あと25秒でランディングします。 )
 
 布村タンデムモービルの中で、どんな事が起きているか想像がつくきよしだった。
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