「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

文字の大きさ
上 下
18 / 96
第4章 鹵獲、敵の機動モービル。

第2話 接近!敵の機動モービル。

しおりを挟む
 椎葉きよし少尉によって、爆破された対馬北部の敵、AXISの南北朝鮮軍の兵站場。
 
 至る所で炎が上がっていた。
 その炎に映し出される、布村の姿があった。泣きながら倒れる敵兵を蹴り続けていた。
 
「ちくしょー!この○チガイどもめ!このーこの!この!」
 
 その布村の両肩が突然、誰かにブロックされた。
 見上げるとパンダ隊長だった。
 
「もう、無駄な事止めよう。これからが本番だ。行くよ。」
 
 泣き顔の目で、しばらくきよしを見つめてから、コクっとうなずく布村。
 グッタリと脱力して、お尻を地べたに付けた。
 
「ゴメン、パンダ隊長。でもなんか、納得いかない。納得いかないよ~。うっ。う、うっ。」
 
 声を殺して、泣く布村愛子。
 
「納得いく現実なんてないさ。ましてや、戦争なんて。さぁ、愛ちゃん。行こうか。」
 
 愛子が、コクっとうなずいてからゆっくり立ち上がると、ダラーっと手の平をモービルの脚部に着いた。
 
 直ぐ反応するHARMOR。

( パスコード承認いたしました。 )
 
 突然、日本語でしゃべり始めるモービル。
 
「あー。え、え。ビックリ。」
 
 少し驚いた愛子。
 その大きなモービルがしゃがみ込み始め、パイロット搭乗姿勢をとった。
 
( ギーン、カラカラカラカラッ、ドシンッ。 )

 分厚いコクピットシールドの上下が開く。

( バイン!バイン!ブシューガタン。プシューゥガタン。ガガガガ、ガタン。 )

 コクピット内の明かりがモービル正面の地面の芝を照らす。
 その光で周りの地面がボヤっと明るくなった。
 モービルの正面に立って、ヘッドギアの正面シールドを開け、口を開けたままじかに見上げる布村だった。
 そこへ結衣など4人が、ドタバタと駆け足でやってきた。
 
( ぎゃー、愛ィ~! )
 
( おーい、愛ィ~! )
 
 布村の周りへ順番に駆けつけて、集まる少女たち。
 4人の中でトップクラスの記憶力、理解力のあるスーパージーナスの寺田麗子が、愛子の前で、両膝に腕をついて息を弾ませる。
 
「ぐあ~!しんどぉ~。ハァハァ、結構距離あるよ~っ、愛ィ~。ハァハァ。文系の私には罰ゲームみたい。ハァハァ。」
 
 4人の中では驚異的な予知能力や運動能力でスーパーガールと呼ばれる佐藤結衣が全力で走って来た。
 彼女だけは、逆にスッキリした表情だった。
 
「ハァハァ、どうして良いか解らないから、ハハッ。こっちに来ちゃった。ハァハァハァ。アハハハッ。」
 
 超人的な視力と聴覚で、先程の佐藤結衣の狙撃をカバーしていた、ソナーレディの鈴木絵里も、愛子の前で両手両足を伸ばして地面に転がった。ドテッ。
 
「ハァハァ、ヒャー走った。もう、愛ぃー。私、目が疲れてボンボンして、耳鳴りもするしぃ。キッツー!」
 
 最後は、お嬢様走りで、フラフラになって走って来た背の高いグラマラスな少女だった。
 
「キャー!みんな走るの早っ。キャー着いたぁーっ!」
 
 鈴木絵里の横に飛び込んで寝転ぶ、中村・スーザン・幸子だった。
 
「キャーもう、私、陸上ではウンチー(運動音痴)なのにぃ。みんな、置いてけボリにして、みんな全力で走ってめっちゃ早いしぃ。ハァ、ハァ。オエー。ゲホッゲホッ。ハァ、ハァ。愛ぃー、こ、このスーツ。わたし、ドン臭いからさっき、転んだ時、ハァ、ハァ、顔面からいったけど、肘とか膝、アゴを地面にぶつけたけどぉ。何にも感じなかった。こういう物なの?はぁ、はぁ、だったらこのスーツ凄いわ。ケガしないし、ねぇ、結衣。愛子。うわぁー、疲れたぁ、キャーッ。」
 
 仰向けになって、息を弾ませながら両手を上げて目をつむる中村・スーザン・幸子だった。
 そんな鈴木絵里と、中村・スーザン・幸子が横になってる地面へ、しゃがみ込む寺田麗子と佐藤結衣。
 
 その4人を見るきよしと、そのきよしを見上げる全身グレーのタイツ姿(アンダー・アーマー・スーツ)の4人の少女たち。
 愛子が腕を組んで、面倒くさそうにきよしに聞いた。またちっちゃな右足を、パタパタさせる布村愛子。
 
「パンダ親方~。ちょっとぉ親方~?どうしますぅ~。」
 
 腕を組みんだ肘で、きよしをつつく布村。
 その時、急に後ろから物凄い爆音と、オレンジ色の物凄い炎の柱が近づいて来た。

(( ズドバババババ~ッ! ))

 轟音に驚いて、耳をふさぎながら、慌てて鹵獲ろかくHARMORの足元に隠れる5人の少女。
 HARMORの脚部から順番にひょっこり顔を出してのぞき見をした。
 
 目を細めて見る5人だった。
 
 きよしが腕を組みながら落ち着いて歩いて来た。
 きよしは、きよしで、敵を凝視した。
 敵HARMORが、100メートル後方の国道に着地したのだ。

( ドバババババ~ッドシンッ!キイィィ~ン……シューッ、シュ。 )

 着地してからゆっくり立ち上がる敵のHARMOR。

( ガガガッ、ガラガラガラガラ。 )
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち
SF
  脈々と続く宇宙の無数の文明。その中でより高度に発展した高高度文明があった。その文明の流通、移動を支え光速を超えて遥か彼方の銀河や銀河内を瞬時に移動できるジャンプ技術。それを可能にしたジャンプ血清。  その血清は生体(人間)へのダメージをコントロールする血清、ワクチンなのだ。そのジャンプ血清をめぐり遥か大昔、大銀河戦争が起こり多くの高高度文明が滅びた。  その生き残りの文明が新たに見つけた地、ネイジェア星域。私達、天の川銀河の反対の宙域だった。そこで再び高高度文明が栄えたが、再びジャンプ血清供給に陰りが。天の川銀河レベルで再び紛争が勃発しかけていた。  そして紛争の火種は地球へ。  その地球では強大な軍事組織、中華帝国連邦、通称「AXIS」とそれに対抗する為、日本を中心とした加盟国軍組織「シーラス」が対峙していたのだ。  近未来の地球と太古から続くネイジェア星域皇国との交流、天然ジャンプ血清保持者の椎葉清らが居る日本と、高高度文明異星人(シーラス皇国)の末裔、マズル家のポーランド家族を描いたSF大河小説「メジャー・インフラトン」の前章譚、7部作。  第1部「太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!」。  ジャンプ血清は保持者の傷ついた体を異例のスピードで回復させた。また血清のオリジナル保持者(ゼロ・スターター)は、独自の能力を飛躍的に引き上げる事が出来たのだ。  第2次大戦時、無敵兵士と言われた舩坂弘氏をモデルに御舩大(ミフネヒロシ)の無敵ふりと、近代世界のジャンプ血清保持者、椎葉きよし(通称:お子ちゃまきよし)の現在と過去。  ジャンプ血清の力、そして人類の未来をかけた壮大な戦いが、いま、始まる――。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  本格的な戦闘シーンもあり、面白い場面も増えます。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

Another Japan Online(アナザージャパンオンライン) ~もう一つの日本~

むねじゅ
SF
この物語は、20XX年 AI技術が発達し、失業率90%を超えた時代の日本が舞台である。 日本政府は、この緊急事態を脱する提案を行う。 「もし生活に困窮している方がいるならば、暮らしに何も不自由が無い仮想現実の世界で生活しましょう」と… 働かなくて良いと言う甘い誘いに国民達は、次々に仮想現実の世界へ行く事を受け入れるのであった。 主人公は、真面目に働いていたブラック会社を解雇されてしまう。 更に追い打ちをかけるようにある出来事が起こる。 それをきっかけに「仮想現実の世界」に行く事を決意するのであった。

「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. ) 

あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。  この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。  パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!  ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。  彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。  是非、ご覧あれ。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお
SF
姉と言うのは年上ときまったものですが、友子の場合はちょっと……かなり違います。

「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)

あおっち
SF
 港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。  遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。  その第1次上陸先が苫小牧市だった。  これは、現実なのだ!  その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。  それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。  同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。  台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。  新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。  目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。  昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。  そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。  SF大河小説の前章譚、第4部作。  是非ご覧ください。 ※加筆や修正が予告なしにあります。

改造空母機動艦隊

蒼 飛雲
歴史・時代
 兵棋演習の結果、洋上航空戦における空母の大量損耗は避け得ないと悟った帝国海軍は高価な正規空母の新造をあきらめ、旧式戦艦や特務艦を改造することで数を揃える方向に舵を切る。  そして、昭和一六年一二月。  日本の前途に暗雲が立ち込める中、祖国防衛のために改造空母艦隊は出撃する。  「瑞鳳」「祥鳳」「龍鳳」が、さらに「千歳」「千代田」「瑞穂」がその数を頼みに太平洋艦隊を迎え撃つ。

旧式戦艦はつせ

古井論理
歴史・時代
真珠湾攻撃を行う前に機動艦隊が発見されてしまい、結果的に太平洋戦争を回避した日本であったが軍備は軍縮条約によって制限され、日本国に国名を変更し民主政治を取り入れたあとも締め付けが厳しい日々が続いている世界。東南アジアの元列強植民地が独立した大国・マカスネシア連邦と同盟を結んだ日本だが、果たして復権の日は来るのであろうか。ロマンと知略のIF戦記。

イリス=オリヴィエ戦記・外伝 ~アラン・フルーリーは兵士になった~(完結)

熊吉(モノカキグマ)
歴史・時代
 アラン・フルーリーは兵士になった。  軍服を着たいと思ったことなどなかったが、それが、彼の暮らす国、イリス=オリヴィエ連合王国での[義務]なのだから、仕方がない。  マグナ・テラ大陸の南側に突き出た半島部と、そこに連なる島々を国土として有する王国は、[連邦]と[帝国]という二大勢力に挟まれた永世中立国だった。  王国に暮らす人々には、誰かに押しつけたい思想も、誇示したい権威もない。  ただ、自分たちのありのままの姿で、平穏に暮らせればそれでよかった。  だから中立という立場を選び、連邦と帝国が度々、[大陸戦争]と呼ばれる大戦を引き起こしても、関わろうとはしなかった。  だが、一口に[中立]と言っても、それを維持することは簡単ではない。  連邦、あるいは帝国から、「我々に味方しないのであれば、お前も攻撃するぞ! 」と脅迫された時に、その恫喝を跳ねのけるだけの力が無ければならない。  だから、王国は国民皆兵を国是とし、徴兵制を施行している。  そこに暮らす人々はそれを、仕方のないことだと受け入れていた。  国力で圧倒的に勝る二大勢力に挟まれたこの国が中立を保ち、争いに巻き込まれないようにして平和を維持するためには、背伸びをしてでも干渉を拒否できるだけの備えを持たなければならなかったからだ。  アランは故郷での暮らしが好きだった。  牧歌的で、自然豊かな農村での暮らし。  家族と、愉快で愛らしい牧場の動物たち。  そこでの日々が性に合っていた。  軍隊生活は堅苦しくて、教官役の軍曹はしょっちゅう怒鳴り散らすし、早く元の生活に戻りたくて仕方がなかった。  だが、これも義務で、故郷の平穏を守るためなのだからと、受け入れた。  幸い、新しく配属になった分隊は悪くなかった。  そこの軍曹はおおらかな性格であまり怒鳴らなかったし、仲間たちもいい奴らだ。  この調子なら、後一年残っている兵役も無事に終えられるに違いない。  誕歴3698年、5月22日。  アランは、家に帰ったら母親が焼いてくれることになっているターキーの味わいを楽しみにしながら、兵役が終わる日を待ちわびていた。  これから王国と自身が直面することになる運命など、なにも知らないままに……。   ※本作の本編、「イリス=オリヴィエ戦記」は、カクヨム、小説家になろうにて掲載中です。長編であるためこちらに転載する予定は今のところありません。

処理中です...